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「ハローキティ」と紀伊半島のバスに乗る(1)

 9月12日、名古屋9:05発の快速亀山行きに乗る。313系の4両編成。ひとりで転換クロスシート2人分を占領できる、ほどよい乗り具合。

 四日市で降り、三重交通のバスに乗る。四日市9:50発の小山田病院行き。客は2人しか乗っていない。バスは近鉄四日市にも寄る。海側の工業地帯にあるJRの四日市駅より、市の中心部の繁華街にある近鉄四日市駅のほうが明らかに賑わっている。四日市からの客はひとりここで降りたが、メインのターミナルだけに6人が乗ってきた。途中でもひとり乗ってきた。さすがは病院に行くバスなのか? バスは国道1号線から右に曲がり、古くからの住宅街や堤防沿いを走る。大半は車のすれ違いも難しい、細い道だ。すぐ南には片側2車線の立派な道路があり、三重交通の笹川団地へのバスもそこを通るが(しかも日中でも1時間に4本運転されている。私が乗ってきたルートは小山田病院行きなどが1時間に2本の運転)、このバスは時代に逆らって細い道をたどる。西日野で下車。三重交通は「ICOCA」等のICカードが使えないため、現金で払う。

 道路を渡った向かいに近鉄八王子線の西日野駅がある。来年春に近鉄から分離される路線だ。そういうところなので、「PiTaPa」などのICカードは使えない。西日野は無人駅だが、自動券売機が1台あり、切符を買う。近鉄四日市側から列車がやってきた。3両編成で、各車両とも違った色で塗られている。近鉄四日市側からみて順に、クリーム、ピンク、オレンジの一色に塗られている。発車時刻の10:30になり、近鉄四日市行きは出発。ナローゲージなので、よく揺れる。とても貴重となった、吊り掛けの音が響く。内部にも行きたかったので、次の日永で乗り換え。内部線と八王子線の接続も考慮されていて、すぐに内部行きが来た。こちらも3両編成で、各車両とも違った色の一色塗りだ。日永まで乗ったものとは、色の組み合わせが異なる。

 内部で折り返す。内部はホームが1本だけの駅なので、来た列車がそのまま折り返す。これまでは先頭車の1人掛けに乗ってきたが(前向きに固定されている。つまり、一番後ろの車両の座席は後向き)、今回は中間のロングシートに座る。ふと上を見ると扇風機が回っている。冷房がないのだ。四日市に近づくにつれ、車内の座席は埋まっていく。特に近鉄四日市駅の改札に近い先頭車両には、立っている人もいる。高校生がなぜこの時間帯にたくさんいるかはともかく、とても廃止になりそうな鉄道の状況とは思えない。大手私鉄ならではの余裕なのか、内部などでも駅員の姿を見かけた。有人駅は近鉄四日市だけで十分だ。運賃を単純にするために均一運賃にしてもよい。人が乗らないことより、高コスト体質のほうが問題だと思われる。ちなみに、内部線と八王子線を比較すると、明らかに内部線のほうが混んでいる。内部11:05発の列車は、多くの客を乗せ、近鉄四日市に着いた。

 近鉄四日市からは近鉄を乗り継いで(吉野口からはJR)、五条へ。転換クロスシートの名古屋線急行の車内でお昼にしようと思ったが、混んでいて(座席が埋まる程度)、弁当を食べる雰囲気ではない。伊勢中川で乗り換えた後の、大阪線急行の車内で食べる。ロングシートだが、予想通り空いている。のんびりと名古屋駅で買った「特製とり御飯」を食べていたが、気がつけば新青山トンネルを抜け、伊賀盆地を走っている。伊賀神戸や名張では乗ってくるだろうから、それまでには食べておきたい。幸い、伊賀神戸で伊賀鉄道からの接続がなく(そのため伊賀神戸から乗ってくる客は少なかった)、名張到着までには食べ終えたので、事なきを得た。

 近鉄とJRが接続する吉野口でJRの接続が悪く、30分待たされる。ホームの待合室で待つことにするが、駅弁を売る窓口がすでに閉まっている。昼を過ぎてすぐの14時で閉店のようだ。吉野口14:48発の和歌山行きで2駅、五条まで行く。五条でまた時間があるので、この機会に「e5489」で予約した切符を引き換える。予約は自宅のパソコンでできるが、引き換えはJR西日本、JR四国、JR九州のエリアに行かないといけないのだ。ついでにパソコンでは対応できない、複雑な経路の切符を発行してもらう。簡単な地図を添えて頼んだら、10分程度で出来上がった。思ったよりも早かった。あまりに経由が多くて全てを印字できず、後ろのほうは手書きで対応している。

 五条からは未成線を走るバスに乗る。もともと国鉄には五条と新宮を結ぶ路線の計画があり(「五新線」)、五条寄りの一部は路盤も完成したが、結局鉄道は部分的にすら開業しなかった。代わりに路盤を舗装して、国鉄バスとして走らせたのである。その後、JRバスから奈良交通のバスに代わったのだが、専用道の一部トンネルが老朽化しているのが判明したため、9月30日で廃止されるのである。代替措置として並行する国道を走る路線バスが増やされるので、トータルではプラスマイナスゼロである。

 五条駅15:37発の西吉野温泉行きは、かわいらしい小型のバス。しかし、惜別乗車のためか、五条駅発車時点で10人あまりが乗っている。中扉すぐ後ろには、NHKの記者まで乗っている。五新線が廃止されるので取材をしているのだ。車内をあちこち歩きビデオを回し、乗客に廃止の感想を聞いていた。バスはしばらく一般道を走っていたが、県立五條病院を過ぎたところで左斜め上に上がる。私道みたいなところだが、ここから専用道が始まるのだ。

 専用道は鉄道になる予定のところを転用したので、単線サイズ。道も狭く、すれ違いができない。ところどころの停留所で幅が広くなっていて、すれ違いができるようになっている。もっとも、専用道を通るバスは平日5往復、休日はたったの1往復だけなので、専用道ですれ違うことはない(平日でも一般道ですれ違うダイヤ)。ところどころで道路と交差するが、一般道の車のほうが優先のようで、バスは待たされる。道路状況は悪く、ところどころ徐行しながら走る。専用道を用意しなければならないほど需要があるならともかく、そうでなければわざわざ専用道を維持する必要はない。専用道を維持するのもお金がかかるのだ。専用道の終点である専用道城戸で大半は降りたが、私はもうひとつ先で降り、歩いて専用道城戸まで戻る。ちなみにNHKの記者は専用道城戸のひとつ手前で降りた。

 専用道城戸には駅舎もあった。鉄建公団がつくったローカル線でよく見られるような駅舎だ。鉄道が来たらこれが使われたのだろう。中には待合室があるが、鍵がかかって使えない。空き缶がゴミ箱にあったので、閉鎖されたわけではないが。脇に売店もあるが、そちらも閉まっていた。西吉野温泉で折り返したバスがやってきた。行きに乗ってきた人が再び乗る。行きは途中で乗り降りがほとんどなかったバスだが、帰りは衣笠で高校生が数人乗るなど本来の動きがあり、小さいバスに似合わず混んでいた。

 今晩の宿は松阪。五条からJRと近鉄を乗り継いで行く。五条17:14発の列車は117系だった。夕食は五条で「柿の葉すし本舗たなか」の柿の葉寿司を買ったが、今回のは鯖のほかにさんまが入った季節限定のバージョン。ラッシュの通勤客が降りたころを見計らって、ロングシートの大阪線快速急行の車内で食べた。(続く)
(参考:「鉄道ジャーナル」2014年3月号、鉄道ジャーナル社)

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