「ハローキティ」と紀伊半島のバスに乗る(2)
9月13日、夜もまだ明けていない松阪駅から始まる。松阪5:20発の新宮行きに乗る。本当は五条からバスで新宮に直接向かうことができたら良かったが、都合のいい時間にバスがなく、こうして大回りを余儀なくされるのだ。キハ11の2両編成、後ろのステンレスのほうに乗る。キハ11の欠点はトイレのないことだが、ステンレスのにはトイレがついている。2駅走っただけの多気で早速14分停車。前にキハ11を2両連結し(トイレなしの鉄製とトイレありのステンレスが1両ずつ)、車掌も乗る。尾鷲あたりでの通学対応なのだろう。そういうことなら始発の松阪から4両編成の車掌ありで運転すればいいのではないかと思えるが(休日なら全区間2両?)、単純にはいかない話があるのだろう。
4両編成となった列車は山あいを進む。梅ケ谷を過ぎ、トンネルに入り、一気に坂を下る。次の駅、紀伊長島は海沿いの駅、そこまで高度を下げる。ここまでガラガラだったが、部活なのだろうか、高校生が乗ってくる。とは言っても、休日なので、少し増える程度。予想通り、尾鷲で降りる。その後は時折乗降が見られるが、空いていることには変わりはない。
新宮に到着。次に乗るのは「ハローキティ和歌山2号」、9月14日から12月13日の間に開かれる、「和歌山デスティネーションキャンペーン」に合わせて運行される列車だ。9月13日から12月14日の間の休日に、串本−新宮間を1日2往復する。今日は運行初日なので(しかも新宮9:59発の「ハローキティ和歌山2号」は最初の列車)、記念式典が行われる。紀伊田辺行きが出た後の9:30ごろから1番ホームで行われるので、指定券を改札で見せてホームに入る。地元の親子連れがホームにたくさんいる。当然ながらキティちゃんもホームにいる。そのキティちゃんの案内でJR西日本の役員と和歌山県等の来賓が入場し、JR西日本側と和歌山県側からの挨拶がそれぞれあった。
車内に入る。「ハローキティ和歌山」は自己充電型バッテリー車両「Smart BEST」の内外装に手を加えたもの。外も中も南紀各地の観光名所とともにキティちゃんたちがかわいらしく描かれている。座席配置は山側に中扉をつぶして転換クロスシートを並べ(展望を考慮して少し高くなっている。また、シートカバーにはキティちゃんなどが描かれている)、海側は海を向いて腰掛け用の背もたれのない椅子やバーがある。
キティちゃんなどに見送られて、「ハローキティ和歌山2号」は出発。電化区間の串本に向かって走る。座席は全て満席と聞いていたが、ところどころに空席が見られる。私も隣の席を占領できた。客層はホームと違って家族連れで占めているのではなく、家族連れのほかに鉄道ファンやキティちゃんファンが目立つ。
さて、私がこの「ハローキティ和歌山」に乗った目的は、自己充電型バッテリー車両に乗ること。キティちゃんが目当てではない。徳島で公募により運行したという例はあるが、指定券さえ買えば誰でも乗車できるというのはおそらく初めてだ。確かにこの「ハローキティ和歌山」、駅ではエンジンの音がし、列車番号にも「D」がつくことから電車ではなくディーゼルカーなのだが(ところで、この「ハローキティ和歌山」の車両番号は、DGBC2A-1とDGBC2B-1となっているが、どういう意味なのだろうか?)、動き出せば結構静か。この後に乗った105系より静かだ。時間の都合で次の那智で降りる。
しばらく待って那智10:22発の新宮行きに乗る。105系の2両編成、国鉄末期につくられた3扉車なので、103系を改造した4扉車とは違ってそれほど古くはない。色は青地に白帯で、一色ではない。もっとも、105系は近郊型ではなく通勤型なので、一色でも違和感はない。乗客はそこそこ乗っている。紀勢線白浜以南の普通列車には人が乗っていないと聞いていたが、新宮に行くのにいい時間帯なのだろうか? 新宮からは熊野交通のバスに乗る。乗車時間約1時間、片道1540円するので、できれば乗車前に営業所あたりで切符を買いたかったが、そういう施設はなく、降車時に現金で払う。もちろん、ICカードの類は使えない。新宮駅を11:15に出たバスは、新宮市内をぐるっと回った後、本宮大社前に向かう。客は観光客を中心に数人乗っていて、悪くはない。
1時間余り乗って本宮大社前に到着。終点はもう少し先だが、1人を残してみんな降りた。すぐ近くにある世界遺産熊野本宮館でこれから乗るバスの切符を買い、ちょうどお昼なので近くで食べる。めはりずしとうどんのセットだ。その後、バスの発車時刻まで時間があるので、目の前にある熊野本宮大社を参拝する。
昼から乗るバスはこの「和歌山デスティネーションキャンペーン」に合わせて運行される、「高野・熊野アクセスバス」。直通の公共交通機関がない、奥の院前(高野山)と本宮大社前をダイレクトに結ぶバスだ。9月13日から11月3日までの休日(計20日間)に1日2往復する(朝の便は本宮大社前を経由して発心門王子まで運行、またこのほかに貸切専用として高野山駅前から金剛峯寺、季楽里龍神、滝尻、本宮大社前を経て白浜の新湯崎まで行く便もある)。料金体系は1日間あるいは2日間この「高野・熊野アクセスバス」が乗り放題で(とは言っても1日2往復なので、乗ることのできる本数は限られる)、1日間乗り放題が3300円、2日間乗り放題が5600円である。このバスに乗るには、旅行会社を通すか、現地に電話するしかない。旅行会社経由だと旅館とのセットでないと売ってくれないようなので(会社によっては「高野・熊野アクセスバス」単独でも販売するようである)、現地に電話するしかない。乗車場所の世界遺産熊野本宮館に電話したところ、乗車30分ほど前までに来て代金を払えばよい、とのことなので、それに従うことにした。本宮大社前で降りてすぐに買った切符がまさにそれである。
「高野・熊野アクセスバス」は、世界遺産熊野本宮館の前から発車する。13:25発だ。しかし、始発であるにもかかわらず、5分経ってもまだ来ない。発車時刻直前に来たこともあり、心配になって運行会社の日の丸観光バスに電話したが、遅れは把握していないとのこと。そうこうしているうちに、バスがやってきた。先ほども述べた通り朝の便は発心門王子まで行くのだが、その発心門王子に行く道が混み、本宮大社前に戻るのが遅くなったとのこと。運転士、ガイドの男性のほか、私を含めた客3人が乗り、10分ほど遅れて出発。国道311号線で中辺路方面に向かう。
この「高野・熊野アクセスバス」は、途中の滝尻で30分停まる。そこは熊野古道の滝尻王子があったところで、バス停に隣接する熊野古道館スタッフによる説明が受けられる。その後、バスは再び走り出すが、少し国道311号線を戻り、県道198号線に入る。東側には(河内長野と串本を結ぶ)国道371号線があるが、この国道は途中で通行不能区間があるという代物。県道がその役割を果たしていると言えよう。県道198号線は無難に役割を果たし、国道371号線につなぐ。
龍神温泉と季楽里龍神に停まった後(温泉つきホテルである季楽里龍神ではトイレ休憩もあった)、客は3人のままで出発。ここから乗ってくる人がいるという話だったが、どうやら朝の便で高野山に戻ったようだ。バスは高度を上げ、高野龍神スカイラインを走る。和歌山県と奈良県の県境を走るため、尾根を走るのだ。とても見晴らしがよい。やがてバスは坂を降り、予定より10分ほど遅れて、終点の奥の院前に到着した。
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