八ッ場ダムによって付け替えられる、吾妻線を見る
ここも前の旅行記の続きです。9月15日の朝、「サンライズ瀬戸」に乗って東京に着いたところから始まります。「サンライズ瀬戸」は東海道線に並行して走る貨物線を一部通って、東京駅に着きました。
上野で高崎線に乗り換える。階段を降りたところがちょうどボックスシートのあるあたりでラッキー。かつての115系の時代とは違い、クロスシートは申し訳程度しかないのだ。お金を出せば快適なグリーン車に乗ることができるが。次に乗る高崎線の列車(上野7:33発)は2時間近く乗るので、ロングシートよりクロスシートのほうがよい。
乗客の乗り降りを見ながら高崎に到着。まずお昼の駅弁(「だるま弁当」)を買い、次の列車を待つ。次の列車はなんとSL、「SLみなかみ」だ。先に客車が、そして後からSL、D51 498が連結される。SLの連結されるあたりには親子連れなどギャラリーが多い。後ろの客車に乗り込む。指定された席は一番後ろの1号車、SLから一番遠い車両なのは残念だ。ただ、客車は青色の12系、ボックスシートが並ぶ国鉄時代からの車両だ。SLの場合、客車も観光客を意識した特別な車両が使われることが多いが、そうではない12系を使うというのは逆に好感が持てる。旧型客車もいいが、ごく日常の列車のような感じがする。とは言え、こういう客車列車は貴重なもの。SLでなくてもよい。機会を見つけて乗っておきたいものである。「SLみなかみ」は出発した。機関車の連結される場面ではあれほど賑わっていたのだが、1号車は拍子抜けするぐらい空いている。ひとりで楽々とボックスシートを占領することができるぐらいだ。12系ならではのエンジン音がするが、遠くからSLならではの音もする。窓が開くので、少し開けてみる。煙の匂いがした。
「SLみなかみ」は渋川で30分ほど停まる。これからの急勾配に備えて整備をするようだ。水上に行くのが目的ではなく、吾妻線に行きたかったので、ここで降りる。吾妻線の列車はすぐにやってくる。上野からの特急、「草津31号」が追い上げていて、5分待てばいいだけだ。「草津31号」は駅舎の前の1番線から発車、左にカーブし、上越線から離れる。上野と北関東とを結ぶ「草津」などの特急は長い間、近距離用の185系により運行されていた。国鉄末期の車両で485系あたりと比べると新しいと思っていたが、分割民営化から25年以上が経ち、185系も置き換えの対象となっていた。ついに今年3月のダイヤ改正で一部を除き置き換えられたのだ。新しい車両は651系、常磐線の「スーパーひたち」などで活躍していたが、657系の投入によって余剰となっていたのだ。北関東方面への転用に際し、交流区間には入ることができないように改造されている。「草津31号」は7両編成だが、観光地への特急であるためか、自由席はたったの2両、後ろのほうにある。ローカル線をゆっくりと進む。
岩島を過ぎると、真新しい線路が左に分かれる。あれが10月1日から使用を開始する、付け替え後の線路だ。八ッ場ダムの建設に伴い吾妻線の一部区間が水没するので、付け替えられるのだ。こちらは間もなく使われなくなる渓谷沿いの線路を走る。短いトンネルが繰り返されるが、その中で注目されるのは樽沢トンネル、日本で一番短いトンネルだ。その長さはたったの7.2メートル。列車1両の長さより短い。ちょうど鉄道に並行して国道が走っていて、写真を撮ろうとする人が多い。彼らの目当ては、樽沢トンネルを列車が通過しているところだ。列車よりもトンネルのほうが短いという、トンネルの短さが強調されるシーンだ。やがて「草津31号」は川原湯温泉に着いた。私もここで降りる。
川原湯温泉の駅はダム湖に沈むことになっていて、現在の駅が使われるのは9月24日まで(9月25日から30日までは代行バスによる運行)。しかし、駅の移転を惜しむ人が多く、賑わっている。もともとは駅の近くに温泉街があったがほとんど移転し、残っているのは駐在所と郵便局ぐらい。温泉はすでに上のほうに移転していて、昼を食べることも温泉に入ることもできない。駅には観光案内の人が立っていて、駅のあたりには何もないことを伝えている。そう、駅のまわりには何もないのだ。温泉街だったところを散歩してみる。かつてはそれなりに賑わっていただろうが、旅館もすでになくなっていて、あるのは土台ぐらいだ。共同浴場の跡もあった。棄てられた光景だ。温泉街の入口だったところには、そびえ立つような高さの橋がある。あの高さまで水が満たされ、今いるところはダム湖のはるか底になってしまうのだ。次の普通列車(川原湯温泉12:08発)で長野原草津口に行く。岩島で分かれた真新しい線路は、長野原草津口の直前で合流した。今回の旅は長野原草津口で折り返す。折り返しの列車が出るまでの間、いい土産があれば買ったり、おいしそうな店があれば入ってもいいかと思っていたが、駅を出た瞬間、その考えが消えた。駅前に店がまったくないのだ。連休なのに、駅の売店も閉まっている。長野原草津口は草津温泉への玄関口だから乗り換え客相手の店があると思っていたが。仕方ないので、再び駅に戻り、折り返しの列車に乗る。長野原草津口まで乗ってきた115系がそのまま長野原草津口13:05発の高崎行きとして折り返すのだ。再び樽沢トンネルを通り、帰りの車内で「だるま弁当」を食べる。
高崎から名古屋に戻るのだが、東京経由で行くのは面白くない。乗継割引もある長野経由で帰ることにする。昼を買ったのと同じ売店で夕食用の駅弁を買う。「峠の釜めし」だ。新幹線のホームに行く。乗る列車は「あさま527号」(高崎15:03発)、安中榛名以外の各駅に停まる。長野新幹線は来年の北陸新幹線開業に備えて、E7系の投入が進められ、すでにE7系のほうが多数派となっているが、この「あさま527号」は古いE2系で運行される。これから何度か乗る機会のあるE7系とは違い、E2系に乗る機会はそうない。考えようによってはむしろいいのかもしれない。「あさま527号」は軽井沢への急勾配を登る。当然ながら在来線時代のような補機はない。それでも新幹線のパワーで坂を登り、高原の軽井沢へ。車内はだんだん空いていく。3連休最終日の午後のこと、駅で列車を待つ人の列がある東京方面とは対照的だ。
最終ランナーは長野16:00発の「しなの20号」、指定された席に座る。車内アナウンスでは指定席は満席とのことだが、ガラガラだ。しかし、この状況は松本で大きく変わる。一気に乗ってきて、ほとんどの席が埋まる。名古屋との結びつきがあるのは松本までだということがよく分かる。松本を過ぎると、スピードも上がり、特急らしい走りも見せる。中央西線はところどころに単線区間があるが、単線になっても快走を続ける。南木曽を過ぎると、あたりは急に暗くなった。そして中津川を過ぎると、日常の生活に近づいてくる。「峠の釜めし」を食べながら、今回の旅を振り返った。
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