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貴重な存在となった、北の夜行列車に乗る(4)

 石巻の宿は人がいないからなのかかなり冷えていて、暖房をつけっぱなしにしなければならないほど寒かった。チェックアウトし、駅に向かう。

 夜明け前の石巻から乗った列車は、「直通快速」仙台行き。仙台と石巻を結ぶ仙石線は、東日本大震災のために今なお一部区間が不通(代行バスあり)となっている。それを補うために運行されている列車だ。石巻を朝に出て、夕方に戻る1往復を毎日、それに加えて平日は仙台を朝に出て、夕方に戻る1往復もある。本当はこの列車、2013年9月に乗る予定だったが、急遽運休してしまい、今回改めて計画に組み込んだのである。今回乗った石巻6:28発は、キハ110の3両編成。ボックスシートが埋まり、ロングシートにも座っている人がちらほら。乗車した日は29日で、仕事が休みになっているところもあるだろう。先週までなら、もっと乗っていたと思われる。

 「直通快速」はノンストップ、分岐駅の小牛田にすら停まらない。1時間余り、同じ客を乗せて走り続ける。ローカル線の石巻線でもできる限り速く走ろうとしている様子が伺える。分岐駅の小牛田は、駅の東のホームのないところを通る。そのまましばらく待って、東北線の線路に入った。ところでこの直通快速、永久に走り続ける訳ではない。仙石線が復旧すると、当初の使命を果たし、この「直通快速」は廃止される。代わりに新しくできるのが、仙石東北ライン。東北線で松島の手前まで走り、そこから新設された渡り線(すでに敷設されていた)を通って仙石線高城町の手前へ、そのまま仙石線石巻まで行くのだ。仙石線復旧と同時に仙石東北ラインは誕生し、仙台−石巻間を53分ほどで結ぶ。車両もハイブリッドの専用のものが使われる。直通快速は東北線に入ってからも快走を続け、仙台に定刻に到着した。

 ちょっと歩いて仙石線あおば通まで行き、仙台までのひと駅乗った後、再び南に向かう。次に乗ったのは仙台8:13発の浜吉田行き、E721系の4両編成だ。E721系はセミクロスシートの電車、ロングシートの701系から改められている。やはり、客車や急行型電車から一気にロングシートになったのは過激だったのだろう。E721系は低いホームに対応するため、床が低く設計されている。これまで地方の電車にはどうしてもステップが必要だったが、それが廃されている。バリアフリーの観点からは望ましいことだ。常磐線は浜吉田まで復旧しているが、代行バスは亘理で接続する。亘理はもともと中線のある駅だったが、当面は中線を使うことがないため(全線復旧しない限り、貨物列車は走らない)、ホームの幅を広げて駅舎手前の線路をひとつ埋めている。代行バスは駅前から発車。JRバス東北の観光バスタイプが使われる。亘理発車時点での乗客は8人しかいないが、これは時間帯が悪いため。反対の亘理行きは仙台に向かうのにいい時間のようで、ほぼ座席が埋まっている。代行バスは常磐線よりも山側を走る、国道6号線を通る。途中、駅に対応したところに設置されているバス停に停まるが、駅前に停まるのは駒ケ嶺駅だけで、ほかは全く違ったところだ。山下は仮設の役場前に停まる。余裕時間を持たせているためか、終点の相馬に5分早着。

 このまま常磐線を南に向かいたいところだが、3つ先の原ノ町からは公共交通機関は利用できない。原ノ町行きが出るのは30分以上後で、ダイヤの都合からここ相馬で山側に回る。福島と相馬、そして首都圏などにつながる重要な公共交通機関、福島交通の福島駅東口行きの急行バスは、相馬営業所から発車する。駅から歩いて2分ほど、古い建物が営業所だ。営業所でバスの切符を買う。バスがやってきた。送迎の車で送ってもらった人などが集まり、相馬営業所から15人ほどが乗車し、10:30に発車。この急行バスは相馬市内は乗車専用、霊山(伊達市)と福島市内は降車専用。相馬市内最後の停留所、山上学校前で2人乗ったほかは、途中での乗降なし。相馬と福島の間には高速道路がないので、ひたすら国道を走る。片側1車線で追い越しができない、典型的な田舎の国道だ。終点の福島駅東口には5分ほど早着した。

 いわきへの高速バスに乗り継ぐ。相馬からのバスが到着した福島駅東口にはバスの営業所があり、そこでいわきまでの切符を買う。それなりの距離を走る高速バスだが、意外なことに予約制ではない。バスの発車時刻は12:42なので、駅弁を買いに福島駅に入るが、なかなか見当たらない。新幹線乗り場でしか売っていないようで、どこのデパートでも売っているようなものにする。朝に仙台で買ったほうがよかったか? バス乗り場に戻る。長い列ができているが、それは仙台行き。いわき行き(正確には上荒川行き)には15人ほどが乗る。福島競馬場前始発のこのバスは、福島駅東口を出た後も福島県庁前などに寄り、福島西インターから高速道路を走る。途中、高速道路上で二本松と小野に停まるが、どちらも乗降はなし。東北道、磐越道、常磐道と通り、いわき中央インターで高速道路を出てからはぽつぽつと降りる人が出てくる。いわき駅には4分ほど早く着いた。

 いわきからは再びJRに戻る。いわき15:05発の水戸行きは、E501系の10両編成、ロングシートである。もともとは東京での通勤輸送に特化する目的でつくられたが、E531系の投入で働き場を失い、トイレ設置などの転用改造を受けて常磐線水戸以北や水戸線で使われるようになった。とは言っても10両編成は長すぎる。持て余しているというのが正直なところなのかもしれない。終点の水戸まで乗り通し、水戸で後続の上野行き(水戸17:06発)に乗る。上野まで行くので、E531系が使われる。グリーン車もついているが、乗ったのは普通車のボックスシート。

 29日は年内最後の平日ダイヤ適用日。平日しかない、新しいサービスを体験しておこう。「スワローあかぎ」の「スワローサービス」、自由席がない代わりに事前に切符を買えば、少し安く特急券(「スワローあかぎ料金券」)を買うことができる。乗る列車が決まっていれば座席を指定することができるし、予定が流動的なら未指定のまま乗車することもできる。常磐線で上野に着いたのが19:17、上野19:30発の「スワローあかぎ7号」に乗るにはいい時間だ。座席を指定してもらおうと思い駅構内を歩いたが、そのような機械はなく、「スワローあかぎ料金券」のまま「スワローあかぎ」に乗る。座席の指定を受けなくてもいいのだ(座席の指定を受けた人がいたら、譲らないといけない)。地平ホームから発車する、「スワローあかぎ」に乗る。しかし、車内はガラガラだ。赤羽や大宮など途中から乗ってくる人も少ない。年末で通勤客が少ないせいもあるだろうが、「スワローあかぎ」化に伴い実質的に値上げされ、しかも「スワローあかぎ」独自の切符の買いかたが難しいのだ。「スワローあかぎ」は乗車前に「スワローあかぎ料金券」を買えば通常の指定席料金より260円安いのだが、企画切符の扱いのために発券が難しい。水戸の「みどりの窓口」で買ったところ、若い駅員は悪戦苦闘して、周りの駅員に聞きながら、ようやく発券することができた。特殊な切符なので、高崎線沿線のように慣れていないとすぐにはできないのだろう。3月のダイヤ改正で「ひたち」などと同様の料金制度になったのはそのためなのかもしれない。(続く)

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