北陸新幹線に乗る(9)
今回、黒部峡谷鉄道に乗ったのは、非公開の鉄道に乗るというツアーがあったため。黒部峡谷鉄道の終点は欅平だが、線路は先まで伸びている。その先の区間に乗るツアーが企画されたので、参加することにしたのだ。欅平から専用線(途中、吉村昭の「高熱隧道」で有名になった高熱地帯を通る)などに乗って黒部ダムに行くツアーは以前から関西電力が企画しているが、人気がありなかなか当たるのは難しいようである。ところが、北陸新幹線開業に伴い企画された今回のツアーは、専用線に乗るのは短い区間だが(竪坑エレベータに乗っておしまい)、インターネットで申し込むだけでよい、お手軽版。しかも、黒部峡谷鉄道の往復乗車券込みで5000円と結構安い。黒部峡谷鉄道を往復するだけで3420円かかるのだから。非公開の鉄道に乗ることができるので、申し込むことにした。
受付は黒部峡谷鉄道宇奈月駅の2階で行う。身分証明書を見せて(氏名等は郵便で事前に知らせている)、欅平までの乗車券引換券や行程表などを受け取る。開催日(5月29日から11月30日までの金、土、日、月)は1日4回開催されるが、朝から数えて3回目となるこのコースは、40人ほどの参加のようだ。登山道を歩くところもあるので、荷物は最小限にしなければならない。駅のロッカーに荷物を入れて、トロッコ列車に乗る。列車は号車指定なので、決められた車両に座る。後ろに山ガールが2人いたが、彼女たちはモデルのようで(彼女たちは若手で、男性のマネージャーらしき人から指導を受けていた)、今回のツアー中、同行のカメラマンの被写体となっていた。10:03発で宇奈月を出発する。
滑川出身の室井滋の案内放送でトロッコは進む。険しい谷間を縫うように走り、1時間20分ほどで欅平に到着。ここからがツアーならではのところだ。欅平の改札は進行方向と反対の後ろにあるが、そのまま残るように指示される。ヘルメットを受け取り、違う列車に乗る。客車は窓のついた高級版だが、凸型の機関車は80年ほど前につくられたものらしい。これに乗って、時刻表にはない欅平の先のトンネルに入っていった。
トンネルの中を列車はゆっくりと進む。1回スイッチバックを行い、5分ほどの乗車でおしまい。次は竪坑エレベータで垂直移動だ。普通の鉄道だとあまりにも急勾配になりすぎ、列車が走ることができない。そこで出てきたのが一気に200メートル上る、竪坑エレベータだ。エレベータの中まで線路があり、貨物は積み替えすることなく、そのまま上の線路、上部軌道に直通することができる。戦前につくられたものだが、今でも現役だ。人数の都合から、2回に分けて乗車。後の組になる。竪坑エレベータを降りると、後ろにまわって、すぐのところに展望台への出口がある。まずここから黒部の山々を見る。関西電力関係者などしか見ることのできなかった景色だ。またトンネルの中に戻り、軌道に沿って歩く。しばらくして急坂を上ると、登山道の入口だ。ちょっとした広場があり、ここで出発時間を告げられてしばらくの間は自由行動。とは言っても、行くことができるのは登山道を歩いた先にある展望台ぐらい。展望台に行く人はリュックサックも下ろして手ぶらで行くことを勧められたので、荷物を下ろして行く。登山道を歩く。このツアーのために整備されたようで、真新しい。10分ほど歩くと、目指す展望台。360度、どこを見回しても山だ。関西電力関係者や登山家でなくても見ることができるようになったのだ。
竪坑エレベータ乗り場に戻る。途中、上部軌道用の機関車と客車を見る。機関車は高熱地帯を通ることができるようにバッテリー駆動となっていて、客車はロングシートになっている。ここから竪坑エレベータに乗って下に降りるのだが、前を見ると軌道が伸びている。これが黒部ダム方面に行く上部軌道だ。いつかこちらにも乗ってみたいものだ。竪坑エレベータを下りた後は、行きと同じように暗闇の中をスイッチバックして、欅平に戻る。アンケートを書き、ヘルメットを返して解散だ。帰りの列車は指定されているが、駅で変更してもよい。
お昼を過ぎているので、まず駅の2階の食堂で昼食を取る。その後は発車時間まで付近の散策。名剣温泉には行ったことがあるので、行ったことのない猿飛峡にする。駅から階段を降りると、早速温泉旅館。ここでお昼にしたほうが面白かったかもしれない。猿飛峡には歩いて20分ほどで到着。遊歩道はここで行き止まりとなっていて、再び同じ道をたどる。指定された欅平15:19発の改札が始まったので、改札口に行く。指定された車両に乗って、出発だ。帰りも抑えぎみだが室井滋のアナウンスがある。この欅平15:19発は鐘釣にも停まる。トロッコ列車は号車指定なので鐘釣から乗る客がいるかと思ったが、鐘釣からの客は違う車両を指定されているようで、私のいる車両に乗り込んでくることはなかった。
宇奈月に到着。今晩は夜行バスに乗って帰るので、どこかで温泉に入っておきたい。そこで選んだのが、宇奈月駅前のホテル。夕方からでも日帰り入浴ができるのである。きれいと言えるようなホテルではなく、温泉も浴槽がひとつだけの平凡なものだが、7階の浴室からは富山地方鉄道宇奈月温泉駅と黒部峡谷鉄道宇奈月駅がよく見える。この展望は売りだ。
宇奈月温泉17:54発の電鉄富山行きで宇奈月温泉を後にする。宇奈月温泉を出たときはガラガラであったが、東三日市からは帰宅する高校生がたくさん乗ってくる。高校のあるところで増え、その後だんだん減っていくという繰り返しだ。上市や富山市内では増えなかったが、それは帰宅時間からは遅いということだろう。電鉄富山には19:37着。
富山駅でお土産を買い、夕食を食べたが、夜行バス(「北陸ドリーム名古屋号」)の発車が23:59なので、まだ時間がある。待合室みたいなところもない。そこで思いついたのが、まだ有効な「全線2日フリー乗車券」を使うこと。電鉄富山21:48発の南富山経由岩峅寺行きに乗る。富山市内では乗る客もいるが、基本的には降りる一方。岩峅寺に着いたが、電鉄富山行きは寺田経由しかないので、それに乗る。岩峅寺から電鉄富山まで、客は私しかいなかった。
富山地方鉄道で岩峅寺まで行ったことで、それなりに時間をつぶすことができた。最後に乗るのは、名古屋までの夜行バス、「北陸ドリーム名古屋号」。金沢始発なので、バスは直前にしか来ない。富山駅前で4、5人乗り、全部で20人余りになった。富山駅前が北陸側の最終停留所だ。ところが動き出したと思ったら、北陸道に入ったばかりの呉羽パーキングエリアで開放休憩。富山からだと早いが、金沢からだと休憩に適当な時間になるのだろう。その後は東海北陸道に入り、深夜2時台のひるがの高原サービスエリアでも開放休憩。こんな深夜に開放休憩を行うとは思わなかった。それなのに明け方の関サービスエリアでは開放休憩はなし。ひるがの高原と関を逆にしたほうがよさそうだ。終点の名古屋駅には定刻(6:00)より5分ほど早く着いた。
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