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暫定2車線と会計検査院

 高速道路は4車線以上でつくるのが原則ですが、地方の需要の少ないところでは暫定的に2車線でつくられるところがあります。将来4車線にすることを前提につくられているので中央分離帯がなく、やわらかい樹脂のポールや縁石で上下線を区切っています。全国の高速道路や自動車専用道路のうち暫定2車線は20路線225区間2423.8キロあり、7割に当たる1752キロは中央分離帯がない対面通行です。この暫定2車線の割合を諸外国と比較すると、アメリカは2.3%、ドイツは1.1%、フランスは0.2%、韓国は4.5%と、約1/4にもなる日本の高さが際立ちます。

 しかし暫定2車線は中央分離帯がないため、車が対向車線にはみ出す事故がしばしば起きています。会計検査院が2005年から2014年までの10年間を調べたところ、車が対向車線にはみ出す事故は2208件発生し、人身事故になったのは677件。119人が死亡し、1281人が負傷しています。相手が対向車線からはみ出してきたことで死んだ人も28人います。同時期に中央分離帯がある区間で起きた人身事故は7件で、100キロ当たりの事故発生率でみると対面通行の区間がそうでない区間の約30倍にもなりました。車の走行台数、走行距離を加味した値では、暫定2車線高速道路の死亡事故率(件数を億台キロで割ったもの)は一般道路の半分ですが、4車線以上の高速道路のほぼ倍になりました。対面通行で車が対向車線にはみ出す事故による経済的損失を試算すると約314億円にもなりました。内訳は人的損失や物的損失(車両や構造物の修理)が約58億円、被害者の肉体的な痛みや苦しみが約256億円です。このほか、暫定2車線では最高速度が70キロに制限されます。4車線なら80キロか100キロなので、本来のスピードが出せないことによる経済的損失は1年間に約175億円とされています。

 高速道路をつくったからにはすべて4車線にしたほうがいいかもしれません。ところが残念ながら、それに足る需要がないのが事実です。4車線化のめどが立っていない暫定2車線区間は2264.2キロであり、そのうち17路線132区間1316.9キロは供用開始から10年を経過しています。4車線化の目安である、1日当たりの交通量が1万台以上ある区間は8路線20区間161.2キロに過ぎませんでした。将来4車線にする見込みのあるところはともかく、そうでないところはコンクリートの壁で中央分離帯にするという方法があります。暫定2車線を4車線にするには1キロ当たり12~36億円かかりますが、中央分離帯をつくる場合は1キロ当たり1.4~2.5億円で済むそうです。ただし、この場合、路肩の狭いトンネル区間では緊急車両が通行できなくなりますので、こういうところは最高速度を一般道並みの60キロに抑えるという方法もあります。もちろん、需要が少ないところに回収できないお金を投じて4車線にすることは許されません。次の選挙のことを考えるとやりたいところでしょうが。お金は税金か東名、名神などの黒字路線の利益です。高速道路会社は中央分離帯をつくると4車線化のときに支障になることを懸念し、地元自治体は4車線化を期待しているところが多いですが(国交省自体も高速道路計画が4車線を前提にしていることから、中央分離帯設置による2車線固定化には消極的です)、先ほども述べた通り4車線化できるところは少ないのが現実です。そもそも、暫定2車線のところは通行料金で償還できるか疑わしいところが多く、正直言って(県の道路公社ではなく、一応民間の)高速道路会社が高速道路をつくるべきだったのか、というところがあります。すでにあるところでも建設費や維持費の一部を地元負担にさせてもよいぐらいです。JRが第三セクター鉄道になるように。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20151024k0000m040148000c.html、http://mainichi.jp/select/news/20151024k0000m040149000c.html、中日新聞ホームページ http://www.chunichi.co.jp/s/article/2015102301001966.html、乗りものニュース http://trafficnews.jp/post/45232/、日経ケンプラッツ(会員登録要) http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/111000133/、日本経済新聞ホームページ http://www.nikkei.com/article/DGXKZO94008970U5A111C1EA1000/)

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