宮城県にできた2つの鉄道と、福島第一原発付近のバスに乗る(3)
「青春18きっぷ」があるのだからできるだけJRで行きたいところだが、磐越東線の本数が少ない。郡山5:30発のいわき行きがあることはあるが、いわきでの待ち時間が長くなる。お金を払って、本数が多い高速バスにする。1時間ほど遅く出発できるからだ。福島交通、新常磐交通、会津乗合自動車の3社が共同で運行している、いわき、郡山、会津若松を結ぶバスにする。
郡山駅前6:35発のバスに乗る。朝が早いため、郡山始発だ。バス停は前日に郡山で乗り換えた際、調べておいた。しかし、バスに乗ったのは2人のみ。これでは高速料金程度しか収入はない。途中で乗ることもなく、結局客は私を含めて2人でいわき駅に着いた。なお、運転士の話によれば、平日は通勤客で混むとのこと。郡山もいわきもそれなりの規模の都市で、単身赴任をしたくないから、高速バスで遠距離通勤をしているのだろうか?
いわき8:50発の竜田行きは415系の4両編成。ステンレスのロングシート車である。ステンレスの415系は国鉄の車両では新しい部類に入るが、JR東日本のは引退間近である。終点の竜田では信号の都合からか、改札から一番奥の線路に入る。しかし、駅舎との間に線路を埋めるかたちで橋がかかっていて、跨線橋を渡らなくてよい。そもそも跨線橋は使えないようになっている。
竜田-原ノ町間は福島第一原発に近いところを走るため、復旧作業がほとんど行われていないところもある。竜田-原ノ町間ノンストップの代行バス(竜田9:35発)に乗る。駅を出ると、1日2往復だけある、代行バスが停まっていた。駅から出た人の多くは、代行バスに向かった。JR東日本の代行バスだが、実際に走る車両は地元の観光バス会社、浜通り交通のもの。途中トイレ休憩をしなくても済むように、トイレつきの観光バスが使われ、乗務員は運転士と添乗員の合わせて2人体制である。これから向かう区間が特殊な区間であることを示している。客の数はと言うと、2人並びの席を1人で使うことができるぐらいの混み具合であった。
代行バスは主に国道6号線を走る。女性添乗員からは走行中、窓を開けないようにという注意があった。放射線量が高い区間を走るからだ。そのため国道6号線をバイク、自転車、徒歩で通り抜けることはできないこととなっている。代行バスは国道に出た。幹線道路沿いなので郊外型の店が目立つが、どの店も閉まっている。民家も修理や解体すらせず、そのままの状態になっている。津波の被害で何も残っていないところは何度か見たが、この棄てられた光景を見るのは初めてである。いよいよ帰還困難区域に入る。ここは車で通り抜けることだけが認められていて、脇道、店舗、住宅にはすべて柵があって入れないようになっている。国道も駐車禁止ではなく駐停車禁止だ。途中の信号も赤信号が表示されることはなく、信号で停まることもないのだ。一切停まることはなく、ただ通り過ぎることができるだけなのだ。ふと通路を隔てた隣の人を見ると、写真を撮りまくっていた。やがて帰還困難区域を通り抜け、原ノ町に入る。代行バスは車体が大きく小回りが利かない。いったん原ノ町駅を通り過ぎて戻るような格好で駅前のバス停に入った。ダイヤ(10:50着)より10分早いが、休日なので早く着いたようだ。
次の相馬行きは1時間以上後の12:02発。時間があるので昔ながらの喫茶店でお昼にする。ドリアを頼んだ。駅に戻る。仙台方面が復旧するまで離れ小島状態の原ノ町-相馬間は701系が使われているが、駅には415系と651系の4両編成が停まっている。震災前から留置されたままなのだろう。651系のほうは手入れがなされていないのか、荒れている。原ノ町からは701系の2両編成。相馬までという短い区間だが、トイレは使用可能となっている。ワンマンではなく、車掌が乗っている。改札に近い後ろのほうが混んでいるが、座れないほどではない。
相馬で降りると、目の前に代行バスが停まっていた。JR東日本だが、実際に走る車両は東日本急行のもの。ハイデッカーの車両だ。2人並びの席を1人で使うことができるぐらいの混み具合。代行バスからは建設中の常磐線の高架が見える。年内再開予定で、これができたら原ノ町や相馬と仙台は鉄路でつながることになる。このまま亘理で乗り換え、JRで仙台に向かっても良かったが、(JRではないため別料金となっても)仙台に直通する違う交通機関に乗ってみたいと思い、山下で降りる。山元町役場(プレハブの仮庁舎)が代行バスのバス停となっている。私が降りた山下では、逆に代行バスに乗る客が目立った。
山下から乗ったのは、東北アクセスという会社の高速バス。山下のバス停は代行バスと同じ山元町役場だ。東北アクセスは、もともとツアーバスとして運行されていたが、被災者支援に関する補助金の都合から路線バスになったのである。山元インターチェンジから常磐道に入る。この高速バスは原ノ町と仙台を結ぶ比較的短距離の高速バスだが、トイレ休憩がある。常磐道で一番北にある、鳥の海パーキングエリアで休憩があるのだ。常磐道から引き続き仙台東部道路に入り、地下鉄の車庫が見えた、仙台東インターチェンジで降りる。仙台東インターチェンジは仙台市営地下鉄東西線六丁の目駅に近いので、宮城交通みたいに降車扱いしてもよさそうだが、停まることはなく通り過ぎる。そのまま仙台の中心部に向かい、仙台駅東口には定時に到着した。(続く)
| Permalink | 0
「鉄道」カテゴリの記事
「JR東日本」カテゴリの記事
- 秋田港クルーズ列車、廃止か?(2024.09.30)
- 米坂線でイベントをしたが、バスの利用者は増えず(2024.09.29)
- 上越新幹線で自動運転(2024.09.23)
Comments