宮城県にできた2つの鉄道と、福島第一原発付近のバスに乗る(2)
仙台から次に乗ったのは、仙石東北ライン。松島付近につくられた接続線を使って、東北線の仙台と仙石線の石巻を結ぶルートだ。仙石線は元々私鉄の電車で、高速運転には適していない。これに対して東北線は新幹線開業までは特急などが行き交っていた幹線。東北線と仙石線は松島付近で近接して走っていて、両線に接続線を設けることにより、仙台-石巻間の速達化を図るという考えは以前からあったが、東日本大震災が契機となって実現することになったのである。とはいえ、東北線は交流、仙石線は直流。どうやって直通させるのと言えば、ディーゼルカーを走らせるのである。ただし、普通のディーゼルカーではない。ハイブリッドのディーゼルカーだ。HB-E210系といい、基本的に仙石東北ラインで使われる。
仙石東北ラインの石巻行きは東北線のホームから発車する。仙台13:16発だ。HB-E210系の4両編成である。この車両の特徴としては車内にデッドスペースが多く、その分座席が減ってしまうこと、そして列車を走らせるのに必要なエネルギーをどこから賄っているかを表示する画面があることである。大雑把に言えば、駅を出るときはバッテリに蓄えられた電力で走り出し、しばらくするとエンジンも使う。スピードが上がるとエンジンで充電し、減速時にはブレーキも充電に使われる。なお、車両の高さは仙石線を基準としているので、東北線で乗り降りするときは段差があることになる。仙石東北ラインは全列車特別快速か快速だが、この仙台13:16発のように東北線内は各駅に停まるものもある。とは言っても、東北線は仙石線に比べて駅と駅の間隔が開いているので、仙石線の基準で言えば快速みたいなものだ。
塩釜を過ぎると、仙石線が近づく。松島までもう少しのところで速度を落とす。これから2015年5月30日に開業した接続線を渡って仙石線に行くのだ。ポイントを渡り東北線上り線に、さらにポイントを渡り接続線で一時停止、仙石線あおば通行きが通り過ぎて行く。やがて仙石東北ラインの列車も仙石線に入り、高城町に着いた。高城町-陸前小野間は2015年5月30日に運行を再開した区間。しばらくは海岸沿いに走る。海岸が迫るが被害が小さかったのか、小さな防波堤があるのみ。ところが陸前大塚を過ぎると列車は坂を登る。野蒜付近は津波で大きな被害を受けたため、移設されたのだ。途中には野蒜など2駅がある。しかし、駅はできたが2つとも整備中で、何もない。次の陸前小野に行く途中の高架橋でカントに違和感を感じたところがあった。ここが移設前の線路との接続点だろうか?
陸前赤井で石巻13:58発の仙石東北ライン経由の快速とすれ違う。仙石東北ラインの列車は通常4両編成だが、これは2両編成。すでにドア付近には立っている人がいる。私が乗っているこの4両編成も、終着駅の石巻に近づいた今でこそガラガラになったが、仙台を出たときは立っている人もいた。先ほどすれ違った2両編成は、石巻を出たばかりなので、これからも乗ってくる。自分の乗らない列車とはいえ心配だ。陸前赤井と次の蛇田との間には新駅ができる。3月26日に開業する石巻あゆみ野だ。ここも整備中、駅前には何もない。ただ少し離れたところは住宅街となっていて、無人地帯ではない。もっとも、石巻あゆみ野は普通しか停まらないので、駅ができても本数は少ないという問題はある。
石巻で石巻線に乗り換え。女川行きに乗るが、階段の上り下りなしの平面で乗り換えることができる。ありがたい配慮だ。車両は前に来たときと違い、JRになってからのキハ110形。ボックスが埋まっていたので2両編成の最後部に立つことにする。浦宿までは震災後に乗ったことがあるが、浦宿から先は2015年3月21日になってようやく復旧した区間である。石巻線の終点、女川は東日本大震災の津波で大きな被害を受けたところであり、震災から4年経ってようやく復旧することができたのである。浦宿-女川間は線路の移設も行われている。トンネルを抜けると高台に移設された女川はすぐだ。駅前には広場があり、道路を渡ったところには黒で統一された商店街がある。観光客向けの店(観光バスがやってきて、賑わっていた)だけではなく、理髪店のように地元客を相手にした店もある。しかし駅前の一角以外には店はなく、ダンプが行き交っていた。先ほども述べたように、女川は移設された駅。震災前の駅の跡を探そうとしたが見つからなかった。駅員にも尋ねたが「わからない」とのこと。女川は震災後に一度訪れたことがあるが、そのときは浦宿から代行バスに乗った。そのバス停は駅から山のほうに歩いて7〜8分のところ。時間があるので行くことにした。復興用の団地ができあがっていた。再び駅に戻り、時間があるので併設されている温泉に入ろうとも考えたが、今日はホテルに泊まるのでここで風呂に入らなくてもいいことに気づき、足湯だけにする。ただ、温泉の1階売店で夕食用の弁当を買う。女川らしく魚がメインの弁当だった。
さらにしばらく待って女川16:32発の小牛田行きに乗る。石巻からはそのまま石巻線に乗るほか、仙石線、仙石東北ラインで行く方法もある。いずれも仙台に着く時間はほぼ同じ。5分ほどの差だ。しかし、仙台に近づくと弁当は食べづらい。ロングシートの仙石線は当然として、仙台に直接向かう仙石東北ラインにも乗らずに、そのまま石巻線に乗り、ボックスシートの車内で女川で買った弁当を食べる。小牛田からはE721系の普通に乗り換えて、仙台に行く。
仙台で20分ほど待って、19:05発の福島行きに乗る。719系の6両編成だ。空席を見つけて座る。仙台を離れるにつれてどんどん減っていき、30分ほどでボックスシートを1人占めできるほどになった。福島で乗り換えた1日目最後の列車は、福島20:36発の黒磯行き。701系6両編成である。仙台からの列車が来たときにはいなかったが、しばらくすると郡山方面からやって来た。福島の改札から一番離れた最後部に乗ったので、福島発車時点からガラガラ。当然途中で増えることはなく、そのまま郡山に着く。郡山のホテルは東口からすぐのところにある。建物が目立つためわかりやすいが、肝心の東口まで行くのに時間かかるのだ。改札口は西側のみにあり、そこから7〜8分かけて自由通路を歩かないと東口に着かないのだ。(続く)
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