和歌山電鐵、4月1日に値上げ
廃線の危機にあった南海電鉄貴志川線の事業を和歌山電鐵が引き継いで間もなく10年になります。この10年間、行政や市民団体の協力、そしてたまの活躍により乗客は20%近く増加しました。もともと年間5億円の赤字(売上3億円、費用8億円)が出ていた鉄道ですが、和歌山電鐵となってからは年間8200万円の補助金で賄うことができるほどになりました。もともとは開業数年後に値上げを行う予定でしたが、経費削減によりそれを見送ることができたのです。
ただ、毎年8200万円の補助金は開業から10年で消えます。今まではこの補助金で赤字をカバーしてきましたが、これがなくなると事業の継続が困難です。そこで和歌山県や沿線の2市(和歌山市、紀の川市)と協議したところ、年間8200万円の補助金はなくなるものの、想定を超えて老朽化が進んでいる設備への投資については今後10年間補助がもらえるようになりました。設備投資のメニューは、道床砕石化や枕木コンクリート化、50Nレール更新、橋梁の補修や全塗装、電路設備のコンクリート柱化、踏切遮断機更新、踏切制御用軌道回路更新、障害物検知装置更新、CTC・連動装置更新、車両の主要機器更新などです。これまでの10年間では年間8200万円の補助を含めて総額12.9億円の支援がありましたが、これからの設備投資は約18.7億円かかり、国が1/3、和歌山県と沿線2市が2/3を負担します。
とは言っても、年間8200万円の補助金はなくなります。少子高齢化や沿線道路の整備、電力料金の増大により、経営努力と自治体の支援だけでは赤字経営からの脱却は難しいと和歌山電鐵は考えています。そこで利用者に対しても値上げというかたちで負担を求めることになりました。年間8200万円の補助金の半分程度を値上げでカバーすることになります。値上げ実施日は4月1日(予定)、平均14.2%の値上げです。消費税率の変更に伴うものを除くと、約20年ぶりの値上げとなります。普通運賃の値上げ率が8.7%であるのに対して、定期運賃の割引を縮小させるため(これまでの割引率が高かったというのが真相のようです)、通勤定期の値上げ率は22.7%、通学定期の値上げ率は20.0%と高くなっています。大人の初乗りは170円から190円に、和歌山-貴志間の運賃は370円から400円になります。この値上げ後の運賃水準は、同等の立地条件にあるほかの中小私鉄15路線(県庁所在地、中核市等の主要都市から郊外に伸びる路線。東北1路線、関東2路線、中部6路線、近畿1路線、中国2路線、四国2路線、九州1路線)に比べると、3キロ未満の短距離はともかく、ある程度距離のある区間では比較的安いということになります。
(参考:和歌山電鐵ホームページ http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/images/unchinkaitei.pdf、http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/president/160118.html、ニュース和歌山ホームページ http://www.nwn.jp/news/16012304_kisigawa/)
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