「舞鶴ルート」に否定的な声が強いが、無下にもできない福井の事情
北陸新幹線敦賀以西のルート決定についての続報です。4日には与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームの検討委員会が行われ、北陸経済連合会、関西経済連合会が意見を述べました。
北陸経済連合会の久和会長は、2016年中にルートを決定し、2030年ごろまでの大阪までのフル規格整備を求めています。そのうえで、「小浜-京都ルート」については、開業時期は(距離が短いため、建設費の安い)「米原ルート」と同じ程度にすることと、名古屋方面へのアクセスのために敦賀-名古屋間の特急の存続を要望しています。確かに需要は関西方面よりははるかに少ないとはいえ、名古屋方面へのアクセスが大幅に悪化しないような配慮は求められるでしょう。「米原ルート」については、将来的な東海道新幹線への直接乗り入れの確認と、当面の策としての東海道新幹線への乗換利便性の確保を求めています。しかし、リニアが新大阪までの全線開業しない限り、東海道新幹線に乗り入れる余地はありません。たとえ条件がうまく整い2030年ぐらいに米原まで開業したとしても、米原で不便な乗換を強いられる状態が15年は続くことになります。しかも、リニアが開業したら東海道新幹線に乗り入れるという保証も今のところはありません。大体、「米原ルート」はJR東海もJR西日本も拒否していて、現実性の乏しい案です。京都府を串刺しにする「舞鶴ルート」については、建設費が増大すること及び時間短縮効果などの面から否定的な見解を示しています。
関西経済連合会の辻リニア・北陸新幹線担当委員長は、東海道新幹線と一部区間が重複し、乗り換えの必要性がある「米原ルート」について否定的な考えを出しています。北陸新幹線が東海道新幹線の代替機能を果たすという観点から、新大阪まで別線となる「小浜-京都ルート」を支持しています。「舞鶴ルート」については、個人的な意見とは断りつつ、否定的な考えを示しています。
さて、北陸、関西の経済団体から否定的な考えが出されている「舞鶴ルート」。運行主体のJR西日本も利便性と速さの観点から否定的な考えがすでに出されています。確かに「小浜-京都ルート」だと小浜-京都間は約70キロですが、「舞鶴ルート」だと在来線の距離から計算すると、約137キロにもなります。距離がある分建設費は高くなり、時間短縮効果が薄れます。「舞鶴ルート」だと福井県の通る距離が長くなり、その分福井県の負担が増えます。
このように福井県にとって「舞鶴ルート」は良い案ではないのですが、表立って「舞鶴ルート」をけなすようなことはしていません。京都府内の問題としています。というのも、あまり「舞鶴ルート」を叩きすぎると、若狭を通ることが実現しなくなる危険性があるからです。当面の重要課題は、「米原ルート」をつぶすことで、その点では京都府と考えかたが一致しています。
京都府北部の鉄道の改善は北陸新幹線でやるものではなく、ほかの方法で考えないといけません。北陸新幹線の評価を貶める「舞鶴ルート」をごり押しするのではなく、山陰線の次の段階の高速化を京都府の事業として行うなど(ある程度は国の補助も見込めるでしょう)、自らで妥協点を見出す必要があるでしょう。
(参考:福井新聞ホームページ http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/super_expless/88842.html、http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/super_expless/88892.html、http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/super_expless/88771.html)
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Comments
舞鶴や米原ルートはダメでしょうが、小浜-京都ルートも、最大の問題は、新大阪-京都間を本当に別線で作るのかということです。
事業者であるJRは、自らは建設費を負担するわけではないから、好き勝手なことを言っているが、この区間の建設費は1兆円程度となる。
恐らく、敦賀-新大阪全線で、2兆円近い費用になる。
3ルートで最も高額な旧若狭ルートでも、1兆円(恐らく実際はもっとかかる)程度だったから、それを大幅に上回る工費になる。
2030年までに全線別ルートというのは、あくまで希望的観測であり、現在のペースでは、京都までが2030年代後半、新大阪までは2045年頃でしょう。
つまり、リニア全線開業と時期的に大差なし、下手すれば、リニア開業後になります。
JR会社間の相互調整が面倒くさいというだけの理由で、1兆円もの費用を掛けるのが妥当か、JRや鉄ヲタの視点でなく、国民や納税者の視点からすればいささか疑問でしょう。
新国立のキールアーチのように、激しい批判に晒されるおそれもあります。
事業者の主張も考慮する必要はあるが、言いなりになる必要はない。
当然、国民や納税者の視点もあります。
別線建設が予算上できない場合、永久に京都止りになるが、それでも東海との相互乗入を西は拒否続けるのか突きつけるのもいいでしょう。
また、仮に別ルートにしても、小浜・京都ルートでは京都市街地を縦断するうえ、ルート自体も相当遠回りになる。
建設費を削減する為には、前にも書いたように、亀岡ルートを修正し、西京都駅を嵯峨嵐山付近にする案も考えられる。
一気に新大阪まで開業させるのが無理でも、リレー特急を大阪-京都-西京都間に運転させることも可能です。
Posted by: かにうさぎ | 2016.02.06 10:09 PM
かにうさぎさん、おはようございます。
* 2030年までに全線別ルートというのは、
はっきり言って2030年に新大阪までの全線開業ができるわけがなく、それなりの時間がかかるものと思われます。
* JR会社間の相互調整が面倒くさいというだけの理由で、
これを言い出したら、(JR西日本への損失補てんは当然として)誰がJR東海に北陸新幹線の乗り入れを命令するのか、ということになります。東海道新幹線を買い上げてリニアの建設財源をひねり出すなどの力技ができるなど、このあたりが楽に解決できていれば、とっくに「米原ルート」でまとまっています。
名古屋の会社であるJR東海に、東海道新幹線という身の丈に合わないものを与えたのが間違いといえばそれまでですが。
* 建設費を削減する為には、前にも書いたように、
「京都駅を通らなければならない」というのが条件となっています。京都市内ではありません。
確かに「小浜-京都ルート」はお金がかかりますが、東西を結ぶ主要ルートになる以上、目先の安さにとらわれて、中途半端なものはつくれません。「米原ルート」の二の舞です。
Posted by: たべちゃん | 2016.02.07 06:46 AM