南阿蘇鉄道、復旧の見通し立たず
熊本地震では立野と高森の間を走っている南阿蘇鉄道(全長17.7キロ、旧国鉄高森線を引き継いで1986年に第三セクターとして開業)も大きな被害を受けました。一部区間で線路が曲がって土砂で埋まったり、橋脚やトンネルに亀裂が入ったりしています。立野-長陽間の被害が特に大きいようです。阿蘇下田城ふれあい温泉駅の駅舎の屋根の瓦も落ちています。先のほうの中松-高森間(約7キロ)の被害は小さく、車両は10両すべてが無事だったので、この区間だけなら3週間から1か月程度で復旧できますが(人気のトロッコ列車も運行できます)、全線復旧の見通しは立っていません。少なくとも30億円、最短でも1年以上かかる見通しとなっています。当面の足として、高森町と南阿蘇村は9日から肥後大津-高森間など4区間に無料の通学用臨時バスの運行を予定しています。夏休みになる7月下旬までの臨時措置です。秋以降は運賃を無料のまま継続するかということ、及び迂回路は冬場に霧や路面の凍結が頻繁に発生するため安定して運行できないことからまだ決まっていません。
南阿蘇鉄道の2015年度の売上高は約1.12億円、復旧費用は数十年分の収入に当たる巨額です。これまでわずかの経常赤字(2015年度は345万円)で済んでいましたが、とても単独で復旧できるものではありません。南阿蘇鉄道はそこで、東日本大震災で大きな被害を受けたものの国や岩手県の支援で復活した三陸鉄道を前例に、国の財政支援を受けることができるように要請することも検討しています。復旧への義援金の受け入れも行っています。すでに約600万円が集まっています。ほかの第三セクター鉄道が復旧を手助けするという動きもあります。由利高原鉄道、ひたちなか海浜鉄道、いすみ鉄道、若桜鉄道の4社は「復興祈念切符」なるものを発売しています。南阿蘇鉄道の乗車券とほか4社の入場券の合わせて5枚をセットして、1000円。そのうち700円分が南阿蘇鉄道への義援金に充てられます。ひたちなか海浜鉄道では3日までに約500セットを販売しました。
もともと前身の国鉄高森線は熊本と延岡を結ぶ路線の一部として建設されました。熊本側と延岡側だけができ、県境に当たる区間は完成しなかったのですが、延岡側を引き継いだ高千穂鉄道は2005年の台風で大きな被害を受け、そのまま廃線になってしまいました。輸送密度500人程度の行き止まり路線を国のお金を使って復旧させるべきか否かは微妙なところですが、地元が通学の足や観光資源として支えるのなら熊本県が中心となって復旧させるのを反対することはできません。
(追記)
銚子電鉄も、6月21日から1000部限定で「南阿蘇鉄道復興支援切符」を発売します。南阿蘇鉄道高森駅と立野駅の記念入場券、銚子電鉄銚子-本銚子間の乗車券がセットになって、1000円。このうち500円が南阿蘇鉄道への支援金になります。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/articles/20160506/k00/00e/040/158000c、産経WEST http://www.sankei.com/west/news/160507/wst1605070045-n1.html、日本経済新聞ホームページ http://www.nikkei.com/article/DGXMZO01949450U6A500C1I00000/、タビリスホームページ http://tabiris.com/archives/minamiaso/、銚子電鉄ホームページ http://www.choshi-dentetsu.jp/detail/event/48)
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Comments
こんばんは。
南阿蘇をこよなく愛し帰省時にはいつもウロウロしている私ですが、南阿蘇鉄道については廃線止む無しだと思います。活断層でトンネル全体が歪んでしまったとか。復旧するにもどう復旧すれば良いのか分からない状態です。
R57、JR豊肥本線、R325(阿蘇大橋)に加え県道28号線(俵山バイパス)までやられて熊本県には南阿蘇鉄道を支援する余裕は微塵もないでしょう。残念ながら高千穂鉄道と同じ道を歩みますね。
その代わり、豊肥本線は阿蘇外輪山をトンネルで抜け立野を通らない新線付け替えで宮地まで電化するということも考えられます。
Posted by: Kinoppi | 2016.05.11 09:56 PM
Kinoppiさん、おはようございます。
* R57、JR豊肥本線、R325(阿蘇大橋)に加え
鉄道の需要があまりない状況では、優先度が低くなるのはやむを得ないです。
* その代わり、豊肥本線は阿蘇外輪山を
そういう構想はあるのでしょうか?
Posted by: たべちゃん | 2016.05.12 06:12 AM