四日市あすなろう鉄道、2015年度は黒字だった
四日市市内を走るナローゲージ、近鉄内部・八王子線は、慢性的な赤字で廃線の危機にあったため、2015年4月1日に近鉄と四日市市が出資する、四日市あすなろう鉄道に移行されました。四日市市が車両や線路などの鉄道施設を保有する公有民営方式です。
さて、移行から1年が経過しました。どのようになったのでしょうか? 四日市あすなろう鉄道の2015年度決算は黒字となりました。近鉄時代は2.5~3億円の赤字が続いていましたが、5400万円の黒字の見込みです。四日市あすなろう鉄道は四日市市のほか、国や三重県も費用を負担しています。2015年度は約5.65億円を出しました。これがなければ赤字だったといえば身も蓋もないですが、公共性のある鉄道が施設保有にかかる経費まで負担しなければならないというのもおかしい話です。道路は税金で負担されますから、鉄道もそうあってもおかしい話ではないでしょう。地方鉄道も約8割が赤字ですが、それは施設保有にかかる経費まで負担しているからで、その負担がなければ黒字になるのは意外と多いのです。
ただ、喜んでばかりではありません。当初の見込み通りとはいえ、乗客が減っているのです。普通運賃を30円値上げし、定期運賃も3~4割値上げしました。しかも、近鉄から外れたので、近鉄に乗り継げば初乗り運賃は合算されます。近鉄区間を含めた定期の平均値上げ率は、通勤定期で43.0%、通学定期では76.8%でした。近鉄名古屋-内部間の1か月定期でみると、通勤定期では9150円、通学定期では4740円上がっています。四日市あすなろう鉄道は距離の短い鉄道ですので、近鉄で乗り継いでいた人などが四日市あすなろう鉄道に乗らずに直接近鉄等の駅に向かったということも考えられます。2015年度の定期券利用者は通勤定期が10.6万人、通学定期が36.5万人減る見込みです。定期外は10.4万人増え、91.8万人となる見込みですが、これは雨の日だけ利用したことも考えられます。
さて、四日市あすなろう鉄道は新車両の導入を進めています。その新車両のデザインについて投票を行っていましたが、4月14日、四日市あすなろう鉄道から結果の発表がありました。沿線の高校生のアイデアを含む7案から選ばれたのは、四日市工業高校の生徒のデザイン。そのデザインは、白と緑を基調にしたものです。テーマは「きれいな青空に映える緑あふれる四日市」で車両の上部は白、下部は緑、その境目は青の細帯です。連結部付近は「あすなろう」の頭文字、Aに似せたものとなっています。
新しいデザインの車両は、9月末に導入されます。3両編成ですが、1両のみを新たにつくり、残る2両は既存の車両を改造します。残る車両のデザインは2019年度までに切り替わります。2015年度に導入した車両も2019年度の検査時にデザインを変更します。
(追記)
近鉄時代はワンマン運転でも全駅ですべての扉を開けていましたが(利用者の大半は四日市で乗降するため、運賃収受漏れは少ないという判断です)、四日市あすなろう鉄道になってからは、無人駅では一番前の扉で運転士が運賃を収受することになりました。
(参考:レスポンスホームページ http://response.jp/article/2016/04/19/273852.html、中日新聞ホームページ http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20160415/CK2016041502000009.html、http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20160502/CK2016050202000024.html、「鉄道ジャーナル」2016年9月号 鉄道ジャーナル社)
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