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JR北海道の維持困難路線は13線区

 11月18日のことですが、これまで11月に公表予定とされていた、JR北海道が単独では維持することが困難な線区についての発表がありました。

 JR北海道単独で維持することが困難な線区は13線区、1237キロ。この前に挙げたのと同じですが、この13線区は3つに分かれます。(1)輸送密度が200人未満の線区、(2)輸送密度が200人以上2000人未満の線区、(3)すでに「持続可能な交通体系のあり方」等について話し合いを始めている線区です。

 (1)は利用者が極めて少なく、1列車当たりの平均乗車人員が10人前後で、営業係数が1000を大きく超えているところです。運行を続けるならば、老朽した土木構造物の更新も必要になってきます(運営に係る赤字とは別に、老朽土木構造物の維持更新費用として今後20年間で58億円程度かかります。なお、この数字には台風災害の復旧費用は含まれていません)。鉄道よりもほかの交通手段が適しているとJR北海道が認識しているところで、第三セクターでさえも運営は無理だと判断しているのでしょう。バスしかありえないのです。札沼線北海道医療大学-新十津川間、根室線富良野-新得間、留萌線深川-留萌間が該当します。

 (2)は特急が走っていたり、観光路線になっていたりしていますが、利用者は少なく、線区の営業係数が300から1000程度になっています。国鉄時代なら原則廃止対象になっていたところです。JR北海道単独では老朽土木構造物の更新を含めて、「安全な鉄道サービス」を持続的に維持するための費用を確保することができないのです。こちらについてはすぐに鉄道を廃止することはありませんが、鉄道を維持するために、(ア)設備の見直しやスリム化、利用者の少ない駅の廃止や列車の見直しにより経費の節減を図る (イ)JR北海道全体あるいは線区ごとの値上げにより利用者に適正な負担をしてもらう (ウ)上下分離方式の導入 などについて地元と協議します。そのうえで鉄道を維持するべきかどうか検討するというのです。宗谷線名寄-稚内間、根室線釧路-根室間、根室線滝川-富良野間(貨物運行あり、臨時が上下4本)、室蘭線沼ノ端-岩見沢間(貨物運行あり、沼ノ端-追分間上下6本、追分-岩見沢間上りのみ2本)、釧網線東釧路-網走間、日高線苫小牧-鵡川間、石北線新旭川-網走間(新旭川-北見間は貨物運行あり、臨時が上下6本)、富良野線富良野-旭川間が該当します。これらの線区はすべて福知山線事故を受けた安全対策である新型ATSの整備がなされておらず(鉄道として運行を続けるならば整備が必要のようです)、一部にある貨物列車が走る区間ではそうでない線区に比べて必要となる設備が増えます。

 (3)はすでに協議会等において話し合いを行っていて、今後も継続して「持続可能な交通体系のあり方」等について地元と話し合いを行いたいとJR北海道が考えているところです。石勝線新夕張-夕張間と日高線鵡川-様似間が該当します。これまで日高線の輸送密度は全線をひとまとめとして発表されてきましたが、今回は鵡川を境として分けられています。2014年度(12月まで)の輸送密度は苫小牧-鵡川間が589人、鵡川-様似間が186人です。鵡川以西はともかく、鵡川以東は輸送密度が200人未満で、(1)に相当する区間です。140億円程度の巨額をかけて復旧することが無理なのは明白です。

 残る線区がJR北海道単独で維持可能な線区となります。11線区、1151キロしかありません。大量、高速輸送の観点から鉄道でなければ輸送を行うことができない札幌圏と比較的輸送密度が高い線区、北海道新幹線(新青森-札幌間)が該当します。新しい北海道新幹線を除いては老朽化した土木構造物が多いので、設備の維持更新には費用がかかることはほかの路線と同じです。また、北海道高速鉄道開発株式会社が線路の改良を行ったところのうち宗谷線旭川-名寄間、根室線帯広-釧路間については、JR北海道単独では「安全な鉄道サービス」を持続的に維持するための費用を確保することができないため、北海道高速鉄道開発株式会社との関連で検討するとのことです。意味が分からない文章ですが、要は何らかの地元負担が求められるのかもしれません。なお、北海道新幹線開業により経営分離される函館線函館-長万部-小樽間も、経営分離までの間、JR北海道が運営を行います。

 はっきり言ってJR北海道の経営状況が厳しいのはみなさんも御存じのとおりです。単独では維持することが困難な線区をJR北海道の路線として維持するためには、地元自治体が負担しないといけません。早速それをけん制する声もありますが、地元自治体が非協力的ならば、廃止になっても仕方がありません。もしくは宗谷線、石北線、根室線釧路以東のように都市間輸送機能が多少でもあるところについては特急(快速)だけの運転にして駅数も絞るという方法でコストを下げてもよいかもしれません。
(参考:JR北海道ホームページ http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-3.pdf、http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-4.pdf、朝日新聞11月19日朝刊 中部14版)

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Comments

 国鉄民営化の失敗をを地方自治体(特に市町村)に負わせるのは酷な話でしょう。運用益で赤字を補填する仕組みを変える必要があります。
 仮に市町村が負担する場合には半分以上を地方交付税で負担し、自治体が負担する分にも半分以上の交付税措置が必要ではないでしょうか(これだと自治体の負担は4分の1になります)

Posted by: しゃんたい | 2016.11.20 12:27 AM

 しゃんたいさん、おはようございます。

* 国鉄民営化の失敗をを地方自治体

 そもそも需要が減っていることが問題なのです。これだけ少なければ鉄道として維持できないのは明白です。

 特急が走る路線なら国のお金を出して特急を維持することもできますが、そういうものもないのに国のお金を出す必要性はありません。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.20 07:42 AM

こんにちは。

JR北海道の問題については、話をわけて考える必要があると思っています。一つは過疎長大路線をどうするか。旭川ー稚内、旭川ー網走、釧路ー根室、北海道新幹線分離後の貨物路線、木古内ー長万部が該当します。ここは、どちらかといえば北海道の貨物輸送や道北、道東の開発、地域振興をどうするかという問題で、TPPや防衛、ロシアとの関係(エネルギーや領土問題)まで関連してくる話です。JR北海道や自治体どうこういうよりは、国策として考えられるべき問題だと思います。

もう一つは、主に道央圏に隣接する(旧産炭地や積出港関連で整備された)過疎路線をどうするかで、札沼線北部区間や留萌線、根室線滝川ー富良野などが該当します。ここに関しては、バスでも十分な輸送量しかないところがほとんどですから、バス転換を基本に、自治体が負担するのであれば第三セクター化というところだと思います。

Posted by: 2tak | 2016.11.20 01:40 PM

 2takさん、こんにちは。

* JR北海道の問題については、話をわけて考える必要があると思っています。

 札沼線北海道医療大学以北のような純粋なローカル線なら廃止か地元100%負担の第三セクターの二択で片付けられますが、宗谷線名寄以北のように需要が少ないが幹線機能のあるところは頭が痛いです。特急や貨物に絞っての話ですが、国の補助も必要となるでしょう。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.20 03:17 PM

まず,北海道高速鉄道開発のかかわる区間はそれなりに需要もあり維持する必要があると思います.
200人未満のところは廃止はやむをえないと思います.
2000人未満の区間に関しては,石北線,富良野線は1000人は越えていてそこそこ需要がある上に,石北線には特急が走っているため,この2路線は維持しなければならないでしょう.
200人以上1000人未満の区間に関しては特急が走る宗谷線以外は廃止はやむをえないと思います.宗谷線は需要的にはバスでいいレベルしかないかもしれませんが,都市間輸送もそれなりにはあり,バスでは特急列車のような高速輸送ができないので,上下分離でも残すべきだと思います.ただし,名寄ー稚内間は駅を特急停車駅の名寄,美深,音威子府,天塩中川,幌延,豊富,南稚内,稚内に絞る必要はあると思います.その上で石北線のように特急のみの運行とするしかないと思います.ただ,その場合は今のように特急3往復でいいわけではなく,数本ある普通列車がなくなる分,特急は5往復程度は必要になるでしょう.200人以上1000人未満の区間は宗谷線以外はバス転換はやむをえないと思います.
以上のことを考えると,1000人以上の区間と宗谷線以外は,はっきり言って鉄道として維持する必要性は極めて低いと思います.

Posted by: 84axgd86dm70 | 2016.11.22 10:26 AM

 84axgd86dm70さん、こんばんは。

* ただし,名寄ー稚内間は駅を特急停車駅の

 宗谷線のように輸送密度は低いが幹線的機能があり、廃止するに忍びない路線は、特急のみの運行にするなどの抜本的な合理化策が求められます。

Posted by: たべちゃん | 2016.11.22 10:22 PM

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Tracked on 2016.11.23 06:30 PM

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