フリーゲージトレインには信号トラブルもあった
長崎新幹線で導入する予定でしたが、運行を行うJR九州が否定的な見解を示しているフリーゲージトレイン。フリーゲージトレインがうまくいかなかった理由として、車軸の摩耗の問題やコストの問題が挙げられていますが、ほかにも原因があったのです。
それは信号のトラブル。鉄道で安全を確保するためには、列車がどこを走っているかを知っておく必要があります。鉄道ではそれを2本のレールで行っています。2本のレールの間には、人体に影響しない程度の微弱な電流が流れています。列車が走ると、車輪や車軸で2本のレールがつながり、電気回路が構成されます。これによって列車の位置を検知することができるのです。これによって列車同士の衝突を防ぎますし、踏切で警報機が鳴ったり、遮断機が下りたりするのも、この原理を使っています。
しかし、フリーゲージトレインではこの検知がうまくいかない事例が発生したのです。普通の鉄道車両だと車輪と車軸がつながっていますが、フリーゲージトレインの場合は車軸の間を車輪が動く構造となっています。標準軌でも狭軌でも走ることができるようにするためですが、これがために普通の鉄道車両に比べて電気が伝わりにくいのです。
このトラブルは2008年から2009年にかけて日豊線で行われた試験で発生していました。これを解決するため、鉄道・運輸機構は電圧を高めて電気を伝わりやすくするようにしました。しかしこれには逆の問題も発生します。電圧を高めすぎると、雨の日に列車が走っていないのに列車が走っていると勘違いして、踏切の遮断機が下りることがあるのです。線路にたまった雨水がレールの電気を通してしまうのです。結局、レールを磨いたらこのようなトラブルが解消しました。レールの上のさびや汚れは電気を通しにくくするのです。現実には、フリーゲージトレインは1日に何回も走るので、特段の対策はしなくてもいいようです。
とは言っても、極めて確率が低いとはいえ、列車が衝突したり、遮断機が下りないというトラブルが起きていいわけではありません。事故の元です。少なくとも現状では、フリーゲージトレインの実用化はまだ早いのでしょう。
(参考:東洋経済オンライン http://toyokeizai.net/articles/-/182392)
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Comments
長崎新幹線にGCTは間に合いませんがそもそもの話、GCTは初めから新幹線、それも時速300kmで使おうとするから問題がでるんじゃないかと。タルゴも初めは広軌の在来線の高速化のために開発されてから、フランスへ直通するTEE「カタランタルゴ」で軌間変換を実用化して、と何十年も段階を踏んで現在では標準軌の高速新線と広軌の在来線を高速で直通運転出来るようになったわけです。ただでさえ日本のGCTはスペインのそれより条件が格段に厳しいのですから、例えば(大手私鉄の協力も必要だが)京都~吉野や河原町~関空、福島~山形~秋田などの私鉄や在来線の異軌間直通特急で営業運転をして技術を積み重ねてから、まずは上越、北陸などの最高速度の比較的低い路線で在来線特急と直通運転(いなほ等)をやってから最高速度の高い山陽や東北との直通運転と段階を踏む必要があるでしょう。確かに途方もない時間が必要ですが、本気で開発を目指すならそれは覚悟すべきでしょう。
日本型GCTが実用化されれば、実現可能性は低いですが、将来ロシアの鉄道が北海道まで延伸した場合に使用することも出来ますし、タルゴを導入出来ない狭軌を採用している東南アジアやアフリカ諸国にも輸出出来ます。功を焦らずにじっくり開発を続けて実用化までいって欲しいものです。
Posted by: kp1774 | 2017.08.20 02:43 PM
kp1774さん、おはようございます。
* 功を焦らずにじっくり開発を続けて実用化までいって欲しいものです。
今はまだ実用化には至っていません。もし長崎新幹線以外に導入を考えているところがあったとしても、まだまだ研究が必要です。結局はコストがかかって割に合わない危険性もありますが。
Posted by: たべちゃん | 2017.08.21 05:09 AM