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中国地方のローカル線の現状を見る(5)

 六日市から先は1日2往復半(日祝運休)の路線バスがあるが、広島と益田を結ぶ高速バス(1日6往復)も利用できる(ただ普通の路線バスよりも停まるバス停は少ない)。路線バスは夕方までないので、高速バスを使う。一般的に高速バスは予約が要ることが多いが、ここの高速バスは昔、一般道を走っていたという経緯から予約不要。路線バスみたいに短区間の利用もできる。ちょうど六日市のバス停(六日市駅)は、高速バスの停留所と同じところにあった。町の施設が待合室として開放されているので、そこで待つ。少し遅れて高速バスがやってきた。何人か降りて私が乗り、12人ほどで高速バスは発車。途中のバス停で乗るのもいるが、降りるほうが明らかに多く、だんだんガラガラになっていく。青原駅で下車。ダイヤから8分ほど遅れている。駅というバス停なのに駅が見えないので運転士に聞くと、結構大きい川の向こうが駅とのこと。すぐ目の前ではない。駅という言葉にひかれて青原駅で乗り換えることにしたのだが、これなら手前の日原診療所前で降りて、歩いて日原からJRに乗ったほうがよかったのかもしれない。歩く距離は長くなるが、JRでひと駅分を往復する時間が節約できる。川を渡り、14:27発の朱色に塗られた2両編成の普通列車に乗る。実はこの列車、臨時列車。運転日がわからず、当初の計画では乗る予定ではなかったが、8月下旬になって運転されることがわかったため、乗ることにしたのである。この列車があることで、次に紹介する列車に乗ることができるようになったのだ。

 津和野で降りる。次の列車は1時間後、それなのに駅には待っている人がたくさんいる。さらに言えば外国人もたくさん、どこの国にいるのかと言いたくなるほど。次の列車はSLの「やまぐち号」、ここで注目を集めているのがSLではなく客車である。日本語としてはおかしいかもしれないが、JR西日本が新型の旧型客車をつくり、この9月から走らせ始めたのである。改札が始まり、「やまぐち号」に乗る。客車の出来はすばらしい。本当の旧型客車みたい。ボックスシートは昔懐かしい青で、白熱灯(?)が灯っている。内装には木が使われ、細かい調度品も当時の雰囲気だ。車内には路線図があるが、1934年のもの。現在との違いを探そうと思わずじっくり見たくなる。1号車はグリーン車、シートは赤がベースになっている。グリーン車は売り切れていたので外から見ただけだが、下々の者は入ることが許されないような重厚さがある。お金さえ出せば乗ることができる、今どきのグリーン車とは大違いだ。客車は35系という名前になっている。かつて大量につくられた旧型客車の形式名を使っているが、4000番台にすることによって、既存の車両との区別を図っている。とは言うものの、21世紀の今に通用するよう、時代に合わせているところもある。冷房は完備で、コンセントも各テーブルにある。バリアフリー設備もあり、モデルとした車両では荷物室だったスペースを、多目的室とバリアフリートイレにしている。目の飛び出るような金額の豪華寝台列車よりも、「乗りたい」と思わせる列車だ。今年(2017年)の傑作と言ってもいいだろう。

 「やまぐち号」は津和野を後にした。皆の注目を浴びながら。津和野付近だけでなく、沿線のあちこちで手を振る人がいる。「やまぐち号」の3号車には普通席のほか、売店、投炭ゲームと運転シミュレーションゲームがある。このゲームができるのは抽選で、今回は残念ながら外れてしまったが(人がやっているのを見ただけ)、おもしろそうだ。機会があればやってみたい。上りの「やまぐち号」は一部を除いて下り坂で、意外とスピードが出るところもある。ほかに意外に思ったのは、途中の駅でも乗り降りがあること。すぐ降りた客は短区間での体験乗車なのだろうか? 私の座っていたボックスシートにも途中から家族連れが乗り、いつの間にか消えていた。この「やまぐち号」には両端に展望車がある。最後尾のものだけ使えるので、山口を過ぎてから見に行くことにする。かつては上流階級しか入ることが許されなかった展望車だが、ここは一般庶民でも立ち入り可能なのだ。「やまぐち号」は新山口に到着。新山口に改称されて久しいが、どうもなじめない。あまりにも山口は離れているのだ。山口の玄関口であることをはっきりとさせたいのなら、山口小郡というように山口を頭にかぶせたほうがよかったのかもしれない。話を元に戻す。新山口ではSLのみ先に切り離し、客車を置き去りにして車庫に入る。残った客車はどうするかと言えば、後ろのほうからDD51がやってきて、DD51の牽引で車庫に戻るのだ。これは最後まで残っていないと見ることができないのであるが、入れ換えだけというのはもったいない。35系を国鉄型の電気機関車(特急用のEF65やEF66は似合わないだろうが)やディーゼル機関車にも引っ張らせたいものだ。SLの検査期間中のイベントとしていかがであろうか? SLは観光用として今後も動くように整備されるが、電気機関車やディーゼル機関車を今後とも維持するとは限らない。JR東海にはすでに機関車はないし、JR西日本も新型ラッセル車には客車を牽引する機能がある。機関車の代わりになるのだ。

 元々「やまぐち号」に乗る予定はなかったので(最初は浜田から高速バスで広島に向かう予定だった)、今晩(16日)の夜行バス(「カルスト号」)は岩国からの乗車。夜行バスの切符はコンビニで買っていたので、変更が難しいのだ。普通列車で岩国に向かうのだが、「のぞみ」もある程度停まるこの新山口でお土産を買っておく。待合室ではNHKのニュースが流れているので、台風の進路の確認もしておく。新山口19:41発の岩国行きでようやく東に向かう。黄色に塗られた115系の4両編成だが、2扉の転換クロスシートで、117系みたいな座席配置である。227系の投入により、国鉄型車両は置き換えられるが、その中でも117系タイプの車両は比較的早く置き換えられるであろう。国鉄型車両としては比較的新しいものの、ラッシュに難がある2扉の車両だからだ。117系新快速はあこがれの車両だったが、その117系に想いを寄せながら乗ることにする。津和野で売っていた駅弁(「かしわめし弁当」)を食べながら時間を過ごす。乗客は拠点となる駅(防府のような、新幹線の停まらない駅も含まれる)で乗ってきて、その後降りるという感じ。(続く)

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