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地方鉄道の利用者数増加には通勤定期の増加が効果的、との調査結果

 3月末の三江線のように、ローカル鉄道の廃止は毎年のように行われていますし、JR北海道では利用者の少ない路線の存廃が問題となっています。そんな中、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、このたび、ローカル鉄道の健全経営に向けた行政支援のありかたについての調査を行い、その報告を公表しました。

 まず、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、全国の「地域鉄道」(国交省の定義、中小民鉄や第三セクターを指します)96社に対してアンケートを行い、そのうち39社から回答を得ました。ただし、路線ごとに異なる行政支援を受けている鉄道会社が1社あり、そこは2路線扱いとして、合計40路線から回答を得たとしています。

 この40路線でみたところ、ここ3年の年間利用者数について、やや減少もしくは減少したところが59%ありましたが、約2割は増加もしくはやや増加、横ばいも約2割います。そして、少子化の影響で通学定期の利用者が増加したところは8%しかありませんが(横ばいが36%、減少が56%)、意外なことに通勤定期の利用者が増加したところは33%もあります(横ばいが33%、減少が35%)。定期外も増加が21%となっています(横ばいが36%、減少が44%)。

 ここ3年の利用者数が増加もしくはやや増加した8路線について詳しく見ていくと、8路線とも通勤定期の利用者が増えていました(通学定期の利用者が増えていたのは1路線にすぎませんでした)。定期外も5路線で増えていました。これに対してここ3年の利用者数がやや減少もしくは減少した23路線について詳しく見ていくと、通勤定期の利用者が増えたのは4路線、定期外は2路線に過ぎませんでした。どうやら通勤定期や定期外の利用者が増えている路線は、全体の利用者数も増える傾向にあるようです。その増えた8路線にどういう施策が効果的であったかと問えば(2つまで回答可)、3路線がパークアンドライド、2路線が新駅整備、年間定期券が効果的であったと回答しました。

 さらに、「地域鉄道」の中から8路線を抽出して、鉄道事業者と沿線自治体の双方にヒアリングを行いました。原則として支援がない遠州鉄道から、公有民営の若桜鉄道、伊賀鉄道まで様々です。そこから得た話を挙げていきましょう。まず、(1)病院・学校の移転や商店街の衰退など、鉄道会社だけで対応できない原因で利用者が減っているのです。大手私鉄なら、沿線の住宅開発や拠点駅の商業機能強化ができますが、ローカル鉄道にはそういうことができません。(2)利用者数を増加させるには、観光客を引っ張るよりも通勤定期の利用者を増やすのが効果的なのです。通勤客は目立ちませんが、観光とは違って手間はかからず(定期券を発行するだけ)、平日はほぼ使ってくれます。1人使ってくれるだけで、600人分の効果があるのです。600人を呼ぶイベントを行うのは難しいです。よくローカル鉄道でJRの特急に接続させることを重視することがありますが、それよりも20分か30分のパターンダイヤのほうが有効なのです。それを実現するには、沿線自治体などの支援で交換設備を増強することがいるのかもしれません。ところが、(3)鉄道会社は補助をもらう立場がゆえに、お金がかかる大きな設備投資を沿線自治体に対して言い出しにくいのです。鉄道会社としては逆に沿線自治体から設備状況の提案をしてもらいたいのです。(4)ローカル鉄道で「残って残そう」という運動がありますが、それは効果がありません。結果として利用者が増えていないのです。また、ローカル鉄道の存続を求める声は強いのですが、そういう人たちが鉄道を利用しているわけではないのです。便利で、通勤にも使える鉄道(つまり、お金を払ってでも使う価値がある)でないといけないのです。目立たなくても、スーツを着た人が乗っている鉄道は強いのです。(5)鉄道の存続を図るために上下分離を行うことがあります。下のインフラの部分を沿線自治体等が担うため、鉄道会社が存続しやすくなりますが、上下分離は単なる費用の付け替えで、それをしたからと言って経営改善がなされるわけではありません。逆に地元住民が上下分離をすれば鉄道の廃止はない、と安心してしまうリスクもあります。上下分離するのは利用者が減ったからで、それを解決しない限り、根本的な解決にはなりません。これが理解されにくいようです。
(参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ http://www.murc.jp/thinktank/rc/politics/politics_detail/seiken_180418.pdf、国交省ホームぺージ http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000002.html)

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