「貨物新幹線」構想
整備新幹線が開業しても、並行在来線は残さないといけません。それなりに貨物列車の需要があるからです。しなの鉄道、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道のように主要都市近郊の通勤、通学輸送が見込めるところならよいのですが、それほど旅客需要のないところだと、貨物のために鉄路を残すといったほうが実態に合っているところもあります。
ところで、新幹線に貨物を走らせたらどうなるでしょうか? 今の常識では考えられないことを考えている人もいます。 そういう話が出たきっかけは、北海道新幹線の開業。北海道新幹線は青函トンネル内などを在来線と共用しています。82キロにもわたる共用している区間では新幹線もスピードを在来線並みに抑えられ、時速140キロしか出せません。そこで、青函トンネルの前後に在来線から新幹線にコンテナを積み替える設備を設け、共用区間での速度制限を解消させます。青函トンネル等も本来の時速260キロで走ることができます。ネックは在来線から新幹線への積み替えに時間がかかることですが、世界の主要港では一気にコンテナを積み替える設備があり(日本でも名古屋の飛島ふ頭にあります)、これを応用すればよいのです。
ただ、北海道新幹線は新函館北斗止まりです。青森で積み替えた荷物は、函館でまた在来線に戻さないといけません。ところが、北海道新幹線が札幌まで伸びればどうでしょう? 函館で積み替えずに札幌まで運ぶという発想が出てきます(新幹線の線路を札幌貨物ターミナル付近まで伸ばすことが前提ですが)。現在、青森-札幌間を在来線コンテナ特急では7時間半で結びますが、新幹線コンテナ特急だとたったの2時間半で結ばれます。東京、大阪-札幌間でも5時間の短縮です。また、最終的には地元の判断となりますが、旅客需要がほとんどない並行在来線を無理に維持する必要がなくなります。明治時代など古い時代の脆弱なインフラに頼る必要もあります。
もっとこれを派手にすることもできます。東北新幹線でパンクするのは上越新幹線、北陸新幹線と共用している大宮までですから、大宮の北に新幹線の貨物駅を設けます。その貨物駅までトラックで運び、そこから新幹線で運べばいいのです。圧倒的な時間の短縮になります。西のほうでも山陽、九州新幹線に応用できますし、東京-大阪間でも東海道新幹線は無理でも、北陸新幹線経由なら走らせることができます。北陸新幹線は新大阪で山陽新幹線と接続しますので、東京と山陽方面の直通もできます。
もちろん、このアイデアはまだ粗っぽく、課題も見つかるでしょう。ただ、うまくいけば物流の革命にもつながります。検討する価値はあるかもしれません。
(参考:「鉄道ジャーナル」2017年8月号 鉄道ジャーナル社)
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