並行在来線の運賃水準が実は妥当なものかもしれない
「新幹線と在来線、どちらが安いか?」と聞かれたら、「在来線」と答えるのが常識でしょう。在来線は運賃だけでいいのに対して、新幹線に乗るには特急料金がいるからです。しかし、その常識が通用しない区間があります。
それは、並行在来線が絡む区間。飯山-上越妙高間など。新幹線は長いトンネルで一直線に結び、距離が短いのに対して、在来線は運賃の高い並行在来線などが複数絡むので、どうしても高くなるのです。新幹線は隣駅なので、特急料金が比較的安いのも有利に働いています。
こういう特殊な事例はともかくとして、長い距離でも新幹線のほうが安いというところもあります。それは盛岡-新青森間。180キロもあるのに新幹線のほうが安いのです。新幹線は運賃が3080円、特急料金は特定特急料金(空席を利用)が2640円の合計5720円。これに対して在来線はIGRいわて銀河鉄道が2420円、青い森鉄道が3170円、JR東日本が190円の合計5780円と、新幹線のほうが60円安いのです。当然ながら新幹線のほうが圧倒的に速いです。盛岡-青森間ならば在来線はJR東日本分がいらなくなるので在来線のほうが安くなりますが、圧倒的な所要時間の差を考えると、在来線で移動するのは「青春18きっぷ」等を使う鉄道ファンぐらいです(安さを求めるなら、3400円の高速バスを使います)。運賃は別に安くなくてもいいのです。
なぜ在来線はこんなにも高いのでしょうか? 別に並行在来線の第三セクターがぼろ儲けしているわけではありません。第三セクターになることで運賃が上がり、諸経費は下げることができます。人件費もJR東日本ならば超一流企業としての給料を払わないといけませんが、第三セクターならそこまではいりません。県などからの補助金ももらえます。おまけに、貨物列車の線路使用料も期待できます。これだけの条件が揃って、何とかなる状態なのです。
逆に言えば、JRの運賃が安すぎ、大都市圏でない限り、特急料金がないとやっていけないのです。公益性が十分にあるにもかかわらず民間企業であるJRを補助金なしで経営しようと思ったら、特急料金を足したぐらいの水準が妥当な水準なのかもしれません。今は国でもなく、地元の県や市町村でもなく、大都市圏の人の払った運賃で維持しているのが現実です。特急や貨物列車が走る幹線だけでなく、バスで十分なぐらいにしか乗っていないローカル線でも。大都市圏以外は運賃を思いっきり上げて、航空機やバスなどとの競争のある区間には割引切符で対応したほうがJRにとっても利用者にとってもいいのかもしれません。
(参考:東洋経済ONLINE https://toyokeizai.net/articles/-/353240)
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