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JR九州の豪雨被害と厳しすぎる現状

 JR九州の路線のうち、久大線と肥薩線は令和2年7月豪雨で橋梁が流されるという大きな被害を受けました。

 このうち、久大線については大きな心配をしていません。3年前の豪雨のときでも、1年で橋を架け替えて復旧させました。時間はかかっても、何とかなるでしょう。

 問題は肥薩線。特急が何本かありますが、全て観光用のもので、人吉の人が熊本に向かうことを想定した、ビジネス用のものはありません。ビジネス需要は高速バスや車に完全に負けてしまったのです。かつてはビジネス用の特急もありましたが、2016年3月のダイヤ改正で廃止され(特急用車両はインバウンド需要が伸びている「ゆふ」用に充てられたと言われています)、2017年3月のダイヤ改正で観光特急が走るようになりました。交通の本来の目的である輸送手段の役割を放棄したのです。当然ながら輸送密度も大きく減り(2018年度の八代-人吉間の輸送密度は455人です)、あまりにも需要が少ないことからJR九州に維持させることを押し付けることはできません

 しかも、JR九州御自慢の観光列車も、肥薩線に関しては人気が落ちているようです。かつて嘉例川のブームを巻き起こした「はやとの風」については、休日の乗車率は6割に達していますが、平日は2割台に落ちてしまいました。そのため、2018年3月のダイヤ改正で休日や長期休暇期間中のみの運転となりました。「いさぶろう」、「しんぺい」はさらに悪く、休日でも3~4割、平日は2割を切ります。「いさぶろう」、「しんぺい」はローカル輸送を兼ねているので単純には廃止できませんが(人吉-吉松間で「いさぶろう」、「しんぺい」がなくなると、普通列車1往復しか残りません)、稼ぐために走らせている観光列車としては恥ずかしい数字です。ところで、「いさぶろう」、「しんぺい」に関しては、窓に観光情報が映る試みを行っていましたが、どうなったのでしょうか? ともかく、JR九州には同じような観光列車がたくさんあるので、九州新幹線部分開業時に登場した、古い観光列車である「はやとの風」等は飽きられているのかもしれません。

 それでは新しい部類の「かわせみ やませみ」はどうでしょうか? 参考にした記事によれば木を使って凝った車両になっていますが、別の意味で問題があるというのです。客が普通のリクライニングシートに集中し、テーブルを挟んだボックス席や窓を向いたカウンター席といった特殊な座席は使われていないのです(これらも指定席として発売されています)。水戸岡デザインらしい特殊な座席が、利用者には支持されていないのです。果たして、ほかの日も同じなのかはわかりません。ただ、この観光列車に乗ることが目的の人はともかく、ビジネスや観光地に行くための移動手段として使う人には敬遠されそうな車両なのです。鉄道としての本来の役割を放棄したつけが来ているのかもしれません。
(参考:鉄道ジャーナル」2020年3月号 鉄道ジャーナル社、JR九州ホームページ https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/senkubetsu.html

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Comments

肥薩線をどうするかはJR九州の判断に任せる方がいいと思います。もし維持できない、かつ地元にとってどうしても必要ならば、公的な支援も必要でしょう。

風光明媚な路線は自然災害に逢いやすいものです。
災害が起こった時これらの路線をどうするのか、JR九州、国、地方自治体の対応(継続の有無も含めて)プランを考えておく必要があると思います。

国、地方自治体はこういった場合に備えた法・条例・環境整備もしくは時代に応じたそれらの改正を今後継続して行う必要があると思います。

JRや国・地方自治体のいずれかを悪者にして揉める、時間が長引くのを防ぐためにも必要な事だと思います。

Posted by: 小春 | 2020.07.19 02:47 PM

 小春さん、こんばんは。

* 肥薩線をどうするかはJR九州の判断に

 輸送密度が500人もないのなら、JR九州に鉄路の維持を強制させることはできないでしょう。

* 国、地方自治体はこういった場合に備えた

 ただ、バスで足りる程度の需要しかない路線まで、国が主体となって負担すべきかは疑問です。地方自治体の仕事と言えます。

Posted by: たべちゃん | 2020.07.19 07:22 PM

災害はどこででも起こるという事前提で公共交通を考える時代になったと思います。

輸送密度が低い沿線の自治体はJRと常に経営面における協議の場を持っておいた方が良いかもしれません。

経営をJR任せにするのではなく場合によっては適切な支援も必要になると思います。

肥薩線がどんな形で復旧したとしても支援は欠かせないと思います。

Posted by: ゆめ | 2020.07.19 11:15 PM

 ゆめさん、おはようございます。

* 災害はどこででも起こるという事前提で

 今の鉄道のインフラは、かなり脆弱です。災害のリスクを減らそうとするならば、新幹線並みにしないといけません。

* 経営をJR任せにするのではなく

 JRの立場からすれば、ローカル線は撤退するのがベストの、負け犬的な存在です。線路を剥がしてバスにするだけでも、コストの削減が図れます。

* 肥薩線がどんな形で復旧したとしても

 その通りです。

Posted by: たべちゃん | 2020.07.20 06:00 AM

九大線について
前回の豪雨災害の時に1年足らずで復旧させたのは、ビジネス客とかではなく、主に観光列車の「ゆふいんの森号」のために急いで復旧させたと思います。何しろ、そのときの運休中は、ゆふいんの森号を、かなり遠回りになる、博多から小倉と大分を経由し、湯布院行のルートで運行した。(ちなみに、通常のゆふ号は運休のまま)。
そのことから、JR九州は九大線は必要と言うことだろう。

肥薩線も同様で、「いさぶろうしんぺい」「かわせみやませみ」「SL人吉」の観光列車を最重要扱いなら、おそらく復旧させるし、現段階では方針がわからない。

それと、豪華列車「ななつ星in九州」の扱いもきになるところです。(ルートに肥薩線も入っているので)


Posted by: たかちゃん | 2020.07.20 07:51 PM

 たかちゃんさん、おはようございます。

* 前回の豪雨災害の時に1年足らずで

 もちろん観光需要はありますが、全体の利用者もそれなりにいて、2018年度の久大線日田-由布院間は1756人います。しかも、国鉄時代に比べて、そんなに落ち込んでいません。

 なお、「ななつ星in九州」については、別記事で書く予定です。
(参考:JR九州ホームページhttps://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/senkubetsu.html

Posted by: たべちゃん | 2020.07.21 05:35 AM

JRの経営判断がどうなるかは分かりません。
(JRの財産なので自由に決めて良いと思います)

どちらの結果になったとしても地元の自治体は考えてほしいです。もし鉄路を維持するならばプランA(地元継続負担なしでの復旧)だけではなく、プランB(上下分離等何等かの形で発生する復旧)も考えてほしいという事です。

そのうえで現行の法整備に問題があれば国に要望をするのもありだと思います。

日田彦山線は自治体(特に福岡県:JRを悪のように考えて上下分離等手法があるにも関わらず県民的な議論すらしなかった)の動きが遅かったために3年もの長い月日を要し、BRTに決まりました。

JRを悪者にするのではなく、利用者(地元住民、観光客)・JR(経営面)双方に寄り添い議論することが大事になると思います。

以上をふまえて、これからのあるべき姿について真剣に考える議論が生まれる事を願っています。

Posted by: リリィ | 2020.07.23 08:15 AM

 リリィさん、こんばんは。

* もし鉄路を維持するならばプランA

 地元負担なしに鉄路を維持できるのは、それなりの需要がある路線のみです。大半の路線は地元負担がないと、路線が廃止になっても文句を言うことができない存在です。

Posted by: たべちゃん | 2020.07.23 09:34 PM

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