DMVの運行計画
阿佐海岸鉄道は海部-甲浦間8.5キロを結ぶ第三セクター。過疎地帯のため利用者は少なく、年間たったの約5万人、1日当たりにすると140人ほどしかいません。このままではとても鉄道の維持ができません。そこで線路と道路の両方を走ることができるDMVという乗り物を導入することで、地域の活性化につなげるという試みが行われることになりました。DMVの営業運転は世界初。3両のDMVを導入して、2021年春に運転を開始します。そしてこのほど、このDMVの運行計画が明らかになりました。
DMVは阿波海南文化村(町立海南病院)-阿波海南-海部-甲浦-海の駅東洋町-道の駅宍喰温泉(リビエラししくい)間を走ります。このうち阿波海南-甲浦間は鉄道(阿波海南-海部間(1.5キロ)はJR四国の牟岐線を編入します。DMVは構造上、片運転台で逆向きに走ることができないため、駅前にスペースがある阿波海南まで延長することにしたのです)、阿波海南文化村-阿波海南間(約1キロ)と甲浦-道の駅宍喰温泉間(約5キロ)はバスとして走ります。休日は1往復だけですが、海の駅東洋町から室戸方面に向かいます。モードインターチェンジは阿波海南の海部寄りと甲浦の高架上に設けられます。DMVは阿波海南の駅前に停まり(駅のホームには徳島方面からの列車のみが停まります)、甲浦は駅を過ぎたところに坂路を設け、そこを降りていきます。降りたところにDMVの停留所を設けます。海部と宍喰はホームを移設するなどの方法で、高さをDMVに合わせます。
それでは、ダイヤはどうなるのでしょうか? 現在は途中の宍喰で乗り換えになるものを含めて1日16往復ありますが、減ることになります。平日は1日10往復、休日は1日13.5往復(うち室戸発着が1往復)です。ただ特徴があります。日中でも1時間半程度の間隔で走っていますが、18時台で店じまいしてしまいます。現行のダイヤでは最終は20時台なので、かなり繰り上がります。もともと阿佐海岸鉄道は県境をまたぐため通学需要は少なく、日中の9~15時の利用者が多かったのです。DMVのダイヤもそれを反映したものとなっていて、日中はそこそこ走るようになっています。夏場などの繁忙期には、9~17時ごろに臨時便を走らせることも考えています。運転士は平日2人、休日3人で対応することができます。
運賃はどうなるのでしょうか? わかりやすくするために100円単位で、初乗り運賃は200円です。阿波海南-甲浦間は500円(現行450円)、阿波海南文化村-とろむ間は2400円(現行2100円)と一部の区間を除いて値上がりすることになりました。観光客向けに少々高めとなっていますが、地元の人向けに回数券などの設定も考えています。JR四国などとのフリーパスの適用も考えています。
さて、DMVの導入によって、利用者は増えるのでしょうか? 徳島県の需要予測では約4割増え、運行後5年間の平均で7.5万人になるとしています。2019年度の利用者数は約5.3万人、このうち定期券利用者は1440人に過ぎません。この既存客はDMVの利用によっても増えず、むしろ人口減少の理由で若干減りますが、(1)阿波海南-海部間が編入されることによって増える利用者9000人、(2)バス区間での利用者5500人が増えます。そして、(3)DMVを目的にやってくる鉄道ファン8500人が期待されています。我々は期待されているのです。それによりDMV運行後8年間の収支は年間約1400万円改善します。ただ、依然として赤字で、年間約5400万円になります。さすがにDMVで黒字になることはないようです。もっとも、阿佐海岸鉄道としては赤字でも、経済波及効果はあります。年間2.1億円にもなり、赤字を埋めることはできます。すでにこのような効果は発生していて、徳島県によれば、鉄道ファンが工事状況を見学に訪れたり、引退する現行車両の乗車に訪れたりなどの動きがあります。公共交通機関の改善を図ると言うよりは、ある意味14億円かけて、遊園地のアトラクションをつくっていると考えたほうが適切な表現と言えます。面白いものなら、少々値段が高くなっても許されます。
(参考:タビリスホームページ https://tabiris.com/archives/dmv202008/)
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