ローカル線に新しい列車制御システム
JR東日本は、ローカル線向けに、GNSS(全地球航法衛星システム:GPSやみちびきなどの衛星を用いた位置測位システムの総称で、衛星からの情報を用いた列車位置の決定に活用します)や携帯無線通信網を活用した、新しい列車制御システムの開発を進めています。GNSSを用いて列車の位置を把握し、携帯無線通信網を活用して情報伝達を行い、踏切の制御や列車の速度制御を行うという世界初のシステムです。これまでは地上設備によって列車位置を検知し、大量のケーブルで列車や踏切制御情報を伝送していたのですが、その地上設備を簡単にすることができ、列車運行の安全性向上と列車制御システムの大幅なスリム化を同時に実現することができます。踏切に異常があれば、携帯無線通信で列車に情報を伝え、自動でブレーキをかけることになります。これまでのように運転士が特殊信号発光機を見て、手動でブレーキをかけることは要らないのです。ケーブルなど線路沿線の設備が減るので、設備の故障が大幅に減り、輸送の安定性が向上します。台風などの災害の後、確認しなければならない設備が大幅に減るので、運転再開が早くなります。線路沿線の設備が減るので、踏切制御にかかる初期投資やメンテンアンス費用は20%程度減る見込みです。なお、通信異常が発生したときは、踏切の警報を鳴らし、自動的に列車のブレーキがかかります。
この新しい列車制御システムは9月から2021年1月にかけて、八高線高崎-高麗川間で走行試験を行います。2024年度の導入を目指します。列車の速度制御機能については2021年度に試験を行う予定です。
さて、JR東日本の無線を用いた列車制御システムにはATACSがあります。ATACSは自社の専用無線を使うので、災害等による通信輻輳がなく、確実な通信接続が可能です。このATACSは今後、列車本数の多い、都市部等の線区を対象とします。すでに埼京線や仙石線で導入済みです。これに対して今回導入しようとしているシステムは、一般の携帯無線を使うので、災害等による通信輻輳の可能性があります。通信異常があれば列車は止まります。列車本数の少ない、地方のローカル線向きです。JR東日本は小海線にATACSを導入する予定ですが、新しいシステムを導入しようとしているのは、ローカル線に導入するにはATACSが割高だったからでしょうか?
(参考:JR東日本ホームページ https://www.jreast.co.jp/press/2020/20200903_ho02.pdf)
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