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長崎新幹線、スーパー特急に戻すには10年&1400億円かかる?

 昨日の記事で予告した、長崎新幹線の完成形についての話です。

 長崎新幹線の完成形には5つが考えられます。(1)武雄温泉-長崎間のみをつくって、後は放置する対面乗り換え(「リレー方式」) (2)新幹線部分が狭軌になるスーパー特急 (3)標準軌と狭軌を直通するフリーゲージトレイン (4-1)ミニ新幹線(単線並列、標準軌と狭軌の線路が1つずつ) (4-2)ミニ新幹線(三線軌、青函トンネルみたいな感じです) (5)フル規格新幹線 の5つです。国交省は長崎新幹線新鳥栖-武雄温泉間において、この5つの方法で整備した場合の所要時間や建設費などについての試算をまとめました。以前の復習を兼ねて紹介していきます。

 (1)は2022年秋に暫定開業したときの姿です。暫定開業の姿のままで放置するので、新たにかかる費用はありません。所要時間は博多-佐賀間が約35分(今の在来線と変わりません)、博多-長崎間が約1時間20分です。お金はかかりませんが、武雄温泉での乗り換えが永久に続き、利用者の利便性は損なわれます。(2)は新幹線区間(約67キロ)を狭軌でつくり直します。レールを敷き直すだけで約10年の年月と約1400億円の費用がかかります。所要時間は博多-佐賀間が約35分、博多-長崎間が約1時間21分です。国交省の見解では新車両の開発も必要としていますが、JR西日本等の683系の技術がある程度は使えるはずです。北陸新幹線開業前の「はくたか」で時速160キロを出していたのですから。(3)は新鳥栖-武雄温泉間の約50キロのみを狭軌の在来線を使い、後は新幹線を走ります。在来線をそのまま使うので、追加でかかる建設費はありません。所要時間は博多-佐賀間が約33分、博多-長崎間が約1時間20分です。ただ、肝心の車両の開発は断念しています。(4-1)は新鳥栖-武雄温泉間の約50キロをミニ新幹線にします。約10年の年月と約1800億円の費用がかかります。所要時間は博多-佐賀間が約33分、博多-長崎間が約1時間19分です。(4-2)は三線軌のパターンで、約14年の年月と約2700億円の費用がかかります。所要時間は博多-佐賀間が約30分、博多-長崎間が約1時間13分です。(4-1)、(4-2)いずれのパターンとも、後述するフル規格新幹線に比べて安い費用でできますが、時間短縮効果は限定的なものになります。また、工事期間中、在来線利用者の利便性は低下します。(5)は新鳥栖-武雄温泉間約51キロにおいて、フル規格新幹線をつくるものです。約12年の年月と約6200億円の費用がかかります。所要時間は博多-佐賀間が約20分、博多-長崎間が約51分です。効果は絶大ですが、建設費がかかり、並行在来線の取り扱いがややこしくなるという問題点があります。

 こう考えると、お金はかかるものの、効果が絶大なフル規格新幹線が望ましいことは明らかです。ただ、佐賀県との話し合いがうまくいかなかったら、いくら効果があるといってもフル規格新幹線はできません。武雄温泉-長崎間ができておしまいということになります。そうなると、永久に乗り換えが続く「リレー方式」より、スーパー特急のほうが直通できるだけ望ましいです。ただ、レールを敷き直すだけでお金がかかるのはもったいないです。長崎新幹線の将来の姿が決まるまで、新幹線の建設を止めておいたほうが良さそうです。
(参考:佐賀新聞ホームページ https://www.saga-s.co.jp/articles/-/590600)

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Comments

西九州ルートは整備新幹線である以上、新線は新幹線としての運用が前提です。スーパー特急方式に戻すのなら狭軌の新幹線車両が新幹線の定義を満たす性能(時速200km以上)を有することが必須となります。これすら満たせない性能の場合、それは事実上在来線でしかないので法的にもさまざまな齟齬が生じます。また決定プロセスの面で言えば、佐賀県がフル規格による早期整備を否定するように、長崎もスーパー特急方式による転換を求めていません。92年基本合意は着工の合意であって開業の合意ではありません。両県の立場は平等なので、長崎県の合意なきスーパー特急方式への転換は佐賀県にフル規格を強要するのと同じことです。

Posted by: 名無し | 2020.11.18 10:19 PM

 名無しさん、おはようございます。

* 西九州ルートは整備新幹線である以上、新線は新幹線としての

 長崎新幹線も全線フル規格新幹線として開業するのが望ましいですが、佐賀県の反対によりそれができないのであれば、次善の策を取らないといけないでしょう。

 長崎県としての立場はともかく(法的にはあくまでも暫定措置としておくしか仕方ありません)、利用者の立場に立って考えたら、永久に「リレー方式」が続くより、スーパー特急として開業させるほうがましです。

Posted by: たべちゃん | 2020.11.19 05:58 AM

国も佐賀県も長崎県ももう一度現状を見てほしいです。

特に佐賀県。言い分は分かります。しかし主張している事は「武雄温泉以南が着工される前」の時代のものです。

武雄温泉~長崎はもう着工されているし、出来上がり寸前なわけです。資金も投入されていますね。

それにFGT頓挫直前まで西九州ルートを国、長崎県と一緒に推進していました。

もう、その頃と今とは西九州ルートの置かれている現状は全く異なります。

あるものを無いかのごとく言うのは止めてほしい。

計画は頓挫しました。国、長崎県、佐賀県は平等に責任を負ってこれからの回収策を真剣に練ってほしいです。互いのかみあわない主張を述べている場合ではないと思います。

一番嫌な目にあうのは利用者なのです。

Posted by: ゆめ | 2020.11.22 07:32 AM

 ゆめさん、おはようございます。

* 一番嫌な目にあうのは利用者なのです。

 国、佐賀県、長崎県ともにこの利用者としての立場を考えていません。武雄温泉-長崎間がフル規格でできつつある現状を考えると、全線フル規格で整備し、佐賀県の負担軽減策は別途考える方向で考えるのがベストです。また、博多-佐賀間は新幹線になってもお得な割引切符をつくっておかないといけないでしょう。

 武雄温泉での乗り換えが永久的なものになっても利用者からの不満は聞こえてこないかもしれません。黙って車や高速バスに乗るか、あるいは長崎に行かなくなるだけです。

Posted by: たべちゃん | 2020.11.22 09:19 AM

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