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ハイブリッド鉄道車両の免許

 みなさん、あけましておめでとうございます。2021年もよろしくお願いします。

 鉄道車両を動かすにも、免許が必要です。電車なら電車の免許、ディーゼルカーならディーゼルカーの免許が必要です。ただ最近は電車かディーゼルカーかよくわからない車両が出ています(JR東日本によれば、観光用の車両を除いて液体式気動車はキハE130系が最後となるようです)。JR東日本を中心に、それらの新しい車両の免許についてみていきたいと思います。

 新潟や秋田で走っているGV-E400系は、JR東日本では電気式気動車としています。従来からある液体式気動車は、エンジンでつくった動力を液体式変速機を通って機械的な仕組みで車輪に伝えていました。ところが電気式気動車はエンジンで発電機を動かし、発生した電力をコンバータやインバータで制御して台車のモーターに送って走らせます。発電機で電気をつくった後は、電車のシステムで動くのです。国鉄時代にも電気式のディーゼル機関車はつくられましたが、パワーがないのに重たく、普及しませんでした。DD51やキハ58のように、液体式が主流となったのです。その後、半導体の技術開発が進んで、電気式気動車がつくられるようになったのです。なぜ後述するハイブリッド車両の技術があるのに電気式気動車を採用したのかと言えば、蓄電池を搭載すると高いからです。JR東日本によると、ハイブリッド車両の値段は普通のディーゼルカーに比べて1.5倍ほどします。さらに蓄電池はある程度使ったら消耗し、交換する必要があります。おまけに、今のところランニングコストは、液体式気動車も電気式気動車もハイブリッド車両もあまり変わりありません。そこで、エンジンは今まで通り積むことにして、そこから先を電車と同じシステムにすることにしたのです。実はディーゼルカーの生産量は驚くほど少ないのです。日本鉄道車輌工業会によれば、2019年度の国内生産実績は106両ですが、これでもかなり多い部類。2011年度は8両しかつくられませんでした。これでは将来にわたって生産を維持することは難しいです。そこで車や船でも使うエンジンはともかく、それ以外はできるだけ電車の技術を使う方向に進んでいるのです。

 男鹿線で走っているEV-E801系は、ディーゼルカーではありません。時刻表でもわかるとおり、電車となっています。電化区間ではパンタグラフで集電し、電気を貯めます(終点の駅にも充電用の架線が張られており、そこでも充電します)。非電化区間ではその貯めた電気を使って走るのです。烏山線のEV-E301系も同じ仕組みですが、EV-E801系はJR九州の蓄電池電車、BEC819系をベースにしています。同じ蓄電池電車でも直流と交流とでは搭載機器等が異なり、一から設計し直さないといけません。それなら、すでに使われているJR九州の技術をベースにしたほうがコストが下がるのです。

 鉄道車両としては世界初となる、ディーゼルエンジンと蓄電池の両方で走るハイブリッド車両、キハE200形は、2007年7月に小海線で運転を開始しました。そのときは「キハ」と名乗っていましたが、その後に生まれた観光用車両は、HB-E300系となっています。東北、新潟、長野と走る場所は違いますが、観光用の列車に使われることは同じです。観光用車両でないものもできました。仙石東北ラインに使われる、HB-E210系です。交流の東北線と直流の仙石線を直通するためにつくられた車両ですが、交直流電車にしなかったのは、東北線と仙石線をつなぐ連絡線が地形の都合上短く、連絡線にデッドセクションを設けた場合、連絡線で列車を停めることができないからです。信号の都合で列車を停めてしまえば(2018年8月までは踏切制御の都合上、連絡線で一旦停止しなければなりませんでした)、そこから再び動かせるのが難しいのです。

 「四季島」に使われるE001系は電化区間(青函トンネル以南)では電車として走り、非電化区間はエンジンで発電した電力で走ります。非電化区間では電気式気動車ということになりますが、EDC方式としています。他社に話を移すとさらにややこしく、JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」はハイブリッド式のディーゼルカー、87系です。JR北海道のH100形は電気式気動車、JR九州のYC1系はハイブリッド車です。JR東海のHC85系はハイブリッド車ですが、車両の形式番号はモハなどと、電車と一緒になっています。バラバラな形式名の付けかたですが、国交省によれば、車両の形式についての規定は特になく、車両を区別できれば良いとのことです。ですから、新しくつくる電車にC62と命名しても法令上は特に問題はないとのことです。

 さて、話が長くなりました。肝心の運転士の免許についてですが、電車とディーゼルカーではっきりとした区別はないようです。運転のほか故障に対応するための知識を持つことが免許を持つための要件です。ですから厳密に言えば、電気式気動車あたりは電車とディーゼルカーの両方の免許が必要と言えますが、現実的ではありません。そこでキハE200系が登場したときに整理され、通達で対応することになりました。つまり、事業者が必要な知識を教育することで、電車の免許でもエンジンを備えた車両の運転ができるようになり、ディーゼルカーの免許でもモーターを備えた車両の運転ができるようになりました。こうなると電車とディーゼルカーで免許を分ける意味がなくなり、将来的には統合されるかもしれません。
(参考:「鉄道ジャーナル」2020年10月号 鉄道ジャーナル社

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