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国交相、JR西日本に対して芸備線の廃止に慎重な判断を求める

 赤羽国交相は17日、大雨によって被災した三原市を訪れ、記者団の取材に答えました。その取材の中で赤羽国交相は、芸備線について安易な廃線をしないことをJR西日本に求めました。芸備線が地域住民の生活の足となっていることに加えて、地方創生の効果で将来的に利用者数が増える可能性があるというのです。

 このblogの読者なら赤羽国交相の発言はピンボケであることがわかります。問題となっている区間はあまりにも利用者が少ないのです。2桁の輸送密度ではとても地域住民の生活の足と言えないですし、すでに並行して走る高速道路が輸送の主役で、バスでも十分すぎるほどです。地元自治体はJR西日本に鉄道の維持を求めるのではなく、自らの負担で使いやすいコミュニティバスをつくることを考えないといけません。

 なお、赤羽国交相は全国の赤字路線について、「鉄道会社に全て任せて良いのか」(この部分は参考にした新聞記事からの引用)とも述べています。ただ、これも限界があります。芸備線で言えば、三次-狩留家間あたりが対象となる話です。この区間の2019年度の輸送密度は713人ですが、豪雨の前の2017年度は1410人いました。豪雨による運休が解消したのは2019年10月のことで、2019年度の数字には豪雨の影響が現れています。ですからもう少し数字は良くなるでしょうが、三次からは広島方面に高速バスが頻発しています。芸備線も高速化を行い、227系みたいな転換クロスの車両が走るようにならないと、「狩留家以遠は廃止になっても仕方がない」と判断されてしまうようになるかもしれません。山間部の話にならない区間はあきらめ、こういう亜幹線クラスに手を入れておかないといずれ危なくなることでしょう。

(追記)
 湯崎広島県知事は、地方ローカル線の廃線手続きの見直しを求めています。もっと国や地方の関与を強めることを求めています。

 これは全く見当外れです。芸備線東部みたいに極端に需要が少ない路線や並行して無料の高速道路が走っている区間については、むしろ地元への説明なしに廃線しても差し支えはないでしょう。嫌なら地方自治体がお金を出して第三セクターにすればいいのです。
(参考:朝日新聞ホームページ https://www.asahi.com/articles/ASP7K729DP7KPITB00N.html、JR西日本ホームページ https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/data/pdf/data2018_08.pdf、https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/data/pdf/data2020_08.pdf、Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/185128acbbe7ad6f728d5e5c6ac6cdba729ede1c)

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Comments

国交相の発言は鉄道会社に圧力をかけているとしか思えません。鉄道会社は苦しいからこそ沿線自治体に協議を発案したのだと思います。

国交相の仕事は圧力をかける事ではなく、鉄道会社へお金を出して協力するか、実態を調べて地域交通の新しい形を国と自治体、JR西日本で作り上げる行動を起こす事であると思います。そうしないと地方は人が減る一方です。

道路(無料自動車専用道)ばかりに国費を投入するのではなく、車を持たなくても生活ができる(鉄道でなくても良い)バランスの取れた交通網への投資がこれからの地方には必要だと思います。

Posted by: あかり | 2021.07.24 08:54 PM

 あかりさん、おはようございます。

* 国交相の仕事は圧力をかける事ではなく、鉄道会社へお金を

 需要が極めて少なく、鉄道としての使命をすでに終えたところならともかく(残念ながら芸備線の一部区間はここに該当します)、それなりに使われているところは国としても積極的な投資が必要です。

* 道路(無料自動車専用道)ばかりに国費を

 すでに国道があるのですから、国のお金で高速道路をつくる必要はありません。

 地元自治体がお金を出してつくるのは否定できませんが、その場合は鉄道の廃止に反対する権利はありません。

Posted by: たべちゃん | 2021.07.25 07:18 AM

自治体が公共交通を生かした地域づくりをしてこなかった結果だと私は思います。

駅前には人がおらず、駅から離れたロードサイドに店が集中し、そこが栄えてしまっている自治体が多数見受けられます。

日々の生活の中に芸備線を取り入れるのがしたくてもできなくなっていると思います。

都市部同様、地方にも様々な住民がいます。
公共交通の利便を重視する住民もいます。

しかし交通の不便さから地方を離れざるを得ない人もいるのが事実です。
過度な車社会が地方を疲弊させていることに気づく必要があります。

国交相の仕事はこういった発言ではなく、これからの地方における公共交通の在り方を総務省や自治体を交え真剣に話し合うことだと思います。

Posted by: ゆめ | 2021.08.01 02:54 PM

 ゆめさん、こんにちは。

* 駅前には人がおらず、駅から離れたロードサイドに

 日本の土地規制のありかたにもつながってきますが、駅前の商店街の新陳代謝が進まず、規制の緩い郊外に新しい産業が興ります。そこは公共交通機関が使いづらいです。

* 過度な車社会が地方を疲弊させていることに

 すでに公共交通機関がその使命を終えたところはともかく、適切なてこ入れをすれば使えるところはまだまだあります。そういうところに公的資金を投入して、地方でも公共交通機関が使えるようにしていかないといけないです。

Posted by: たべちゃん | 2021.08.01 05:35 PM

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