« 大井川鐵道、SLの客車を休憩所として貸し出し | Main | 10月16日からSL「大樹ふたら」の定期運行を開始 »

通学定期の割引分を公が負担するのも一案

 たくさん鉄道やバスを利用する人のために、定期券というものがあります。定期券には誰でも使える通勤定期と、通学に使うための通学定期があります。通勤定期の割引率も結構高いですが(ただし休日などを考えると、120日ぐらいは使えません。そのことを考慮して割引率を設定しないといけません)、通学定期の割引率はさらに高いです。交通事業者によっては、週1回ぐらい乗れば元が取れてしまいます。

 2018年度のデータによれば、全国に地方鉄道が95社ありますが、そのうち半数以上の53社で、通学定期の利用者は全体の1/3を超えています。しかし、通学定期収入の運輸収入全体に占める割合は13%に留まっています。利用者数の割には収入がよくないのです。ところで、この定期券の割引はだれが負担しているのでしょうか? まず、そのひとつは交通事業者です。通勤定期は当然ですが、通学定期も交通事業者が負担しています。通学定期が安いのは、家計の教育費用の負担を軽減し、教育の機会均等を保証するためだと言われています。公共の要素が強いにも関わらず、国などの負担がなく、交通事業者が負担しています。負担するのは交通事業者だけではありません。その交通機関を利用するほかの利用者も運賃が上乗せされるかたちで負担しているのです。この負担を免れるには、車などほかの交通手段にしないといけません。

 そこで、通学定期の割引額を国が教育予算の一環として負担することを主張する人もいます。これまでは大都市圏など黒字路線の利益でカバーできていたのですが、新型コロナウイルスの影響でJR(東日本、東海、西日本)や大手私鉄でも巨額の赤字に苦しんでいます。地方では人口減少も加わり、6月に発表された地域公共交通総合研究所の実態調査によれば、何らかの補助や支援がないと2021年度中に経営が困難となる交通事業者が46%にもなります。鉄軌道だと58%にもなります。交通事業者は多くが民間企業ですが、公共の要素が強いです。民間企業として経営が成り立たないことでも、公共のためになるのなら、補助をすることは当たり前です。車を使っている人にも負担させることができます。

 余談になりますが、地方鉄道やバスに比べて、JRの割引率は高いです。そのため、需要が極めて少なく、第三セクターでも経営ができないレベルの鉄道でも、JRでの維持を求める声が強くなってしまいます。ローカル輸送は、JRの得意とするところではありません。小回りの利く地方私鉄あたりの出番です。このあたりの是正も併せて求められるでしょう。
(参考:朝日新聞9月2日朝刊 中部14版)

| |

« 大井川鐵道、SLの客車を休憩所として貸し出し | Main | 10月16日からSL「大樹ふたら」の定期運行を開始 »

鉄道」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 大井川鐵道、SLの客車を休憩所として貸し出し | Main | 10月16日からSL「大樹ふたら」の定期運行を開始 »