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ローカル鉄道に必要なのは地道な取り組み

 ひたちなか海浜鉄道の前身は、茨城交通湊線。廃線の危機にありましたが、2008年4月に引き継ぐかたちで誕生しました。

 誕生した2008年度には、リーマン・ショックに見舞われましたが、それでも輸送実績は前年度を上回りました。東日本大震災直後の2011年度は復旧に時間がかかったため利用者は減りましたが、2012年度から2019年度まではほぼ伸び続けています。ひたちなか海浜鉄道発足直前の2007年度の輸送人員は72万人でしたが、2019年度は約1.5倍の106万人。どうしてこんなに利用者は増えたのでしょうか?

 別に観光列車をつくって客を集めたわけではありません。車両自体は中古がほとんどでそれ目当ての鉄道ファンもいるでしょうが、ほとんどが平成になってからの車両で、むちゃくちゃ古いわけではありません。ちなみに、ひたちなか海浜鉄道が観光列車を走らせないのは、稼働率が低いのに検査費用がかかるからです。6年に一度ある全般検査が2000万円、その間の中間検査が1000万円なので、平均すると1年で500万円かかります。

 それではどうやっているのかと言えば、地元の客をこまめに集めているのです。始発を早め、最終を遅くし、行き違いのできる駅を増やしました。勝田-那珂湊間では朝夕の通勤、通学時間帯に40分間隔で運行していましたが、20分間隔にしました。駅も増やしました。2014年の高田の鉄橋、そして2021年の美乃浜学園です。学生については年間通学定期券も発行しています。120日分の運賃で1年間乗ることができるため安いのですが、それでもひたちなか海浜鉄道にとっては大きな収入です。ちなみに、美乃浜学園については、ひたちなか市は学校までの距離が所定の範囲を超える場合は鉄道での通学を求めています。その場合の定期券代はひたちなか市が負担します。

 そして、ひたちなか海浜鉄道には大きな話があります。2024年の春に延伸するのです。現在の終点の阿字ヶ浦から2駅、3.1キロ延ばして、国営ひたち海浜公園まで延ばすのです。国営ひたち海浜公園は年間来場者が200万人を超える人気の公園。8月の「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」では1日に6万人が訪れ、バスでの輸送ではとても間に合いません。この国営ひたちなか海浜公園の来場者の1割が使うだけでも2億円の増収になり、売上が今の倍になります。国営ひたち海浜公園の西側には大型ショッピングモールもあり、その買い物客も見込まれます。なお、延伸によって必要となる車両も増えます。現在8両が稼働していますが、中古で4両を調達して、12両にする予定です。

 延伸区間は高架がほとんどです。高架にすると事業費はかかりますが、原則として踏切をつくることが認められないからです。これについては吉田ひたちなか海浜鉄道社長は不満に思っていましたが、規則を変えるには時間がかかり、また高架にすることによって踏切事故がなくなるので、高架にすることにしました。

 事業費は78億円ですが、国が1/3、茨城県とひたちなか市が1/6ずつ、ひたちなか海浜鉄道が1/3を負担します。ひたちなか海浜鉄道の負担分は、ひたちなか市の債務保証を得た上で金融機関から借り入れるか、ひたちなか市から借り入れる予定です。しかし、国には延伸事業に対して負担する根拠がないようです。何らかの根拠を見つけてお金を引っ張ってこないと、せっかく1月に得た事業許可が活かされないことになってしまいます(工事の施工認可の申請は事業認可から1年以内にしないといけないようです)。

 ただ、どの鉄道でも明るい未来があるわけではありません。どうやっても鉄道での運営が無理なところもあります。そういうところは鉄道から撤退して適切な交通手段に置き換え、それなりに需要があるところには地元の人に使ってもらう取り組みをしていかないといけません。
(参考:「鉄道ジャーナル」2021年7月号 鉄道ジャーナル社

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