JR西日本、輸送密度2000人以下が見直し対象
JRは利用者の多い大都市圏や新幹線で稼いで、ローカル線を維持していくという経営構造です。
ところがこの経営構造は、新型コロナで需要が落ち込んだ今となっては成立しません。JR西日本の場合、営業利益率は一番良かったときでも十数%です。ということは、全体の売上が1割減れば、黒字路線の利益も消えてしまいます。ローカル線に回すお金がないのです。そして、JR西日本は、新型コロナが収束した後でも、利用者は9割までしか回復しないと考えています。つまり、ローカル線にお金をつぎ込んで維持するというのが不可能になってしまうのです。
そういう事情があって、長谷川JR西日本社長は、輸送密度が2000人以下の区間について、鉄道のサービスを見直す考えを明らかにしました。国鉄時代は輸送密度が4000人未満のところが見直し対象だったですし、JR九州もそのような発言をしたことがあります。大体、JR西日本によれば、輸送密度2000人でも赤字です。2000人で区切っているのは、大量輸送機関である鉄道の特性を活かすことができず、鉄道を残すことのほうが非効率だからです。
それでは、どの路線が見直しの対象になるのでしょうか? 新型コロナウイルスの影響で需要が大きく落ち込む前の、2019年度のデータで見ることにします。10月に訪れた姫新線や芸備線の場合、残るのは両端の姫路-播磨新宮間と狩留家-広島間ぐらいで、間は全て見直し対象です。津山や新見は津山線や伯備線がありますが、三次からは鉄道が消えます。特急がそれなりに走る区間でも、紀勢線新宮-白浜間や山陰線出雲市-益田間は見直し対象です。山陰は城崎温泉-鳥取間と出雲市-小串間で切れ、鳥取-出雲市間は智頭急行と伯備線だけでつながる状態になります。ただ、特急の利用者はそれなりに客単価が高いので、普通列車しか走らない路線よりも必要性は高いでしょうが。鉄道のネットワークの観点から言っても、何とかして残したい区間です。
ともかく、需要の少ない路線は民間会社に押しつけるのではなく、地元自治体がお金を出さないとやっていけません。特急がある程度走る線区は鉄道ネットワーク維持の観点から国が出る余地もありますが、普通列車だけのところではそのような必要性もありません。また、このようにローカル線の経営が成り立たないのは、運賃が適正でないということもあります。3年間赤字出ないと値上げできず、航空機のように需要に応じた運賃にすることができません。はっきり言ってローカル線の運賃が安すぎるのです。地方自治体から補助金がもらえ、車両も都会のお古で許され(JR西日本なら新快速みたいな車両が求められます)、人件費も地場の企業の水準で良い地方私鉄より条件が厳しいにもかかわらず、運賃は激安なのです。どうしても「安かろう、悪かろう」となってしまいます。ある程度需要のある路線は第三セクターに、そうでもないところはバスに転換せざるを得ないというのが正直なところです。
(参考:朝日新聞ホームページ https://www.asahi.com/articles/ASPDX72TBPDRPLFA004.html)
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Comments
地方自治体が鉄道会社に対し、費用を出す事は必要でしょう。
口を出すだけでは問題だと思います。
鉄道会社と自治体が費用面も含めて本気で手を組む必要があります。
また、地方で鉄道が維持できない根本の理由を一人一人が考えるべき時が来ていると思います。
街づくりに問題は無かったのか?
(駅から離れた車でしか行けないロードサイドの店ばかりが栄えていないか)
国の政策に問題は無かったのか?
(安易な無料高速道の建設など)
検証するも良いかと思います。
Posted by: まつり | 2021.12.30 11:16 PM
まつりさん、おはようございます。
* 口を出すだけでは問題だと思います。
その通りです。金を出すから口を出す権利があるのです。
* 街づくりに問題は無かったのか?
* 国の政策に問題は無かったのか?
採算を気にせず高速道路をつくり続け、車でしか行けないところに公共施設をつくっていれば、鉄道が使われなくなるのも当然です。
Posted by: たべちゃん | 2021.12.31 07:41 AM