以前にも話があった通り、JR西日本から、利用者が少ない区間(2019年度の輸送密度が2000人未満)についての収支(共通費の類は含みません。利用者の少ない区間を廃止しても大きく減らないからでしょうか?)が開示されました。
どこも利用者の少ない区間なので、赤字であることには変わりないのですが、やはり目を引くのは、芸備線東城-備後落合間の営業係数。2017年から2019年までの3年間の平均で、25416です。100円の収入を得るのに、25416円もかかるのです。国鉄末期の赤字ローカル線でも3000か4000なので、ここの状況の悪さは断トツです。
もっとも、こんなに営業係数が悪い芸備線東城-備後落合間でも、赤字額はたったの2.6億円です。あまりにも利用者が少なすぎるので、赤字額としては大きくならないのです。赤字額だけで見れば、今回開示された区間の中で一番大きいのは、山陰線出雲市-益田間で、約34.5億円の赤字です。
ここで誤解してはいけないのは、赤字だからいけないという訳ではありません。山陰線出雲市-益田間と芸備線東城-備後落合間なら、特急が何本も通る山陰線のほうが重要でしょうし、今回開示された路線のほかに大赤字路線がある可能性は十分にあります。鉄道が必要かどうか判断するのに一番重要な数字は輸送密度です。政治家や地元自治体が口だけでJRに負担を押しつけるのとは違って、ひとりひとりの足で必要かどうかを投票しているのです。誰も乗らないところは、口でどれだけ言っても重要ではないのです。廃止にして差し支えないのです。廃止されたくなかったら、地元自治体が赤字をかぶれば良いのです。
分割民営化から35年が経ちました。その間、道路は税金で整備され、高速道路までつくられています。これに対して鉄道は自助努力が強く求められ、大都市圏や新幹線の黒字でローカル線の赤字を穴埋めしてきました。当然ながら積極的な投資をすることはできません。その結果、分割民営化当時、それなりに利用者がいた路線でも35年経った現在では激減しています。今回開示の対象となったところでも、1987年の輸送密度は4000人を超えていたところがあります。山陰線の城崎温泉-浜坂-鳥取間、関西線の亀山-加茂間、紀勢線の新宮-白浜間です。反対に500人未満は芸備線東城-備後落合間と木次線出雲横田-備後落合間だけです。分割民営化当時は鉄道として残すのが妥当な判断だったでしょうが、今となってはバスで十分なところがたくさんあります。中にはバスでも過剰で、ジャンボタクシーで賄えそうなところもあります。現に、木次線の保守運休のときは、ジャンボタクシーで十分対応できていました。
(追記)
「鉄道は環境に優しい」とよく言われますが、1両当たり50人も乗らない状態では、バスなどほかの交通機関のほうが環境に優しいようです。
(参考:JR西日本ホームページ https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_local.pdf、https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_sankou.pdf)
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