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地方自治体の同意がなければ廃止できず&合意すれば値上げ?

 JR西日本は利用者の少ない路線を対象に、地元自治体と協議を行おうとしているのは、昨日の記事に書いたとおりです。

 これら協議を行おうとしている路線は、大半がバスでも十分対応できそうな、需要の極めて少ない路線です。本来ならJR西日本が廃止の意思を見せたら、地元自治体の同意を得られなくても廃止することができるのですが、JR西日本はその前に誠意を見せ、地元の現状に見合った公共交通機関をつくろうと考えているのです。

 しかし、国交省の幹部が、この動きに水をかけています。鉄道を廃止するためには地元自治体の同意が必要だというのです。JR西日本が完全民営化するときに出された大臣指針によれば、廃止や見直しをするときには関係自治体等に十分な説明が必要だそうです。JR西日本が地元自治体と協議を行おうとしているのはその現れでしょうが、上原鉄道局長によれば、さらに知事や市長など地元自治体の同意まで必要だというのです。拡大解釈です。地元自治体にとっては「廃止反対」と言うだけで、JRに負担を押しつけることができます。たとえ利用者の極めて少ない路線でも、地元自治体は何ら努力をする必要はありません。国交省は国交省で、赤字ローカル線を維持させられるJRを助けることはありません。JRに負担を押しつけるだけです。社会的に必要性の乏しい赤字ローカル線なので、国が負担する必要はありませんが、地方自治体には負担させないといけません。

 分割民営化時点で多くの赤字ローカル線が廃止され、新幹線や大都市の路線で残った赤字ローカル線を維持する体制ができあがりました。分割民営化して数年の段階で廃止にするのなら、JRの努力が足りないと批判することもできましたが、分割民営化から35年が過ぎました。これだけの期間、ほとんどの路線を廃止せずに維持できたのですから、JRは十分に役目を果たしたと言えるでしょう。特急や貨物が走るとか、朝夕のラッシュ時にバスだけで対応することができないといった事情があるならともかく、そうでない限りは第三セクターというかたちで地元自治体が負担するか、あるいはバス転換を容認するかどちらかを選択しないといけないでしょう。

 ただ、国交省もアメらしいものは用意しています。地元自治体が同意すれば、国への届出だけで運賃の値上げができるというのです。地元自治体が同意するかはともかくとして、現在JRが見直しを考えている路線は、その程度では解決できないものでしょう。あまり意味がないと思われます。国も地方自治体も鉄道を維持する(維持させる)ことだけを考えていますが、そもそもどんな路線でも鉄道を維持することが本当に望ましいことなのかから疑う必要があります。本当に必要な路線なら国や地方自治体が金銭を負担してでも強化に努め、そうでない路線は適切な交通モードに変更することもやむを得ないでしょう。
(参考:中国新聞ホームページ https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/172547、時事ドットコム https://www.jiji.com/jc/article?k=2022060300938&g=eco)

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鉄道」カテゴリの記事

Comments

国交省や自治体は地方に無駄な道路を作りすぎたのではないかと思います。

幹線道路だけではなく、枝葉末節に立派ではありますが車通りの少ない道路もあります。規格は立派ですが沿線自治体住民が使いにくい道路もあります。

新しく作った道路の維持費は税金で、鉄道の維持費はJR(民間)でではJRもやりづらいでしょう。

いちばんいけなかったのは国交省だと思います。

分割民営化の時の約束を守るためにも道路と鉄道のバランスを考えてインフラ整備をすべきだったのにそれをしなかった責任は大きいと思います。(例:パークアンドライドなどは本来国交省・自治体が支援・援助・主導すべき事でした。)

鉄道のサービス低下(速度低下、本数減)から人口減になった地域もあります。それは鉄道会社だけの責任ではなく、国交省・自治体の責任でもあると思います。

国・自治体はなぜ沿線住民や利用者がここまで減った(減らざるを得なかった)のかを分析したうえで対策を取ってほしいです。

Posted by: リリィ | 2022.06.10 06:23 AM

 リリィさん、こんばんは。

* 国交省や自治体は地方に無駄な道路を

 簡単に言うとその通りです。生活道路はともかく、高速道路(しかも、国がつくったので無料)はつくり過ぎです。ローカル線と高速道路が勝負すれば、鉄道が負けるのは当たり前です。

 車、鉄道、航空機にはそれぞれ得意と不得意があります。それぞれの長所を活かすようにしないといけないのですが、国交省はぞれが全然できていません。

Posted by: たべちゃん | 2022.06.10 09:43 PM

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