JR貨物が使われないのはなぜか?
国交省の主催で、「今後の鉄道貨物物流のあり方に関する検討会」が開かれています。3月から7回の予定で開催され、鉄道貨物輸送について考えていきます。その検討会のために資料が配付されましたが、これがJR貨物にとって厳しい内容だったようです。
どういう資料なのかと言えば、JR貨物に関係のある官庁や企業からの厳しい意見が書かれた資料なのです。意見を出したのは、防衛省、JR3社(東日本、東海、西日本)、日本通運、ヤマト運輸、日本オイルターミナル、ホクレン、三菱商事、F-LINE(味の素、ハウス食品、カゴメなどでつくる合弁食品物流企業)などです。これらの企業等からは、自然災害に弱いこと、復旧に時間がかかること、振替輸送が十分でないことについての批判が多かったです。
また、ヤマト運輸からは、ちょうどいい時間の便が少ないという意見が出ました。宅配便は日中に集荷し、21時ごろに遠方に向けての輸送を行います。しかし、このあたりの時間帯はほかの宅配便会社も使いたい時間帯で、そのような需要に応える列車が少ないという意見です。また、F-LINEからは、鉄道貨物の使いかた自体がわかりにくいという意見が出ました。ホクレンからは、JR貨物は国鉄時代から5トンコンテナを使っていますが、トラック輸送の大型トレーナーに合わせた規格でないと使いづらいという意見がありました。
ただ、これらの改善は難しいです。JR貨物が走るのは在来線なので、明治時代の古い規格です。旅客輸送は新幹線に移行して便利になりましたが、貨物は古いままなので、災害に弱いです。また、貨物列車が走ることができる線路は限られているので、それなりの幹線でないと貨物列車を走らせることはできません。いくらレールの幅が同じでも、1両のディーゼルカーが走るようなローカル線に貨物列車を走らせることはできないのです。さらに言えば、JR貨物は自前の線路を持たず、基本的にはJR東日本など旅客鉄道会社の線路を借りて走らせています。線路を借りている以上、柔軟なダイヤは組みづらいです。もっとも、JR西日本の場合は、姫路以西なら山陽線は空いているので、積極的に使ってほしいとのようです。新幹線よりも在来線を使ってほしいようです。
こういうことを考えると、現状ではJR貨物は厳しいと言わざるを得ません。本当ならCO2をたくさん出し、しかもドライバーもたくさん使うトラック輸送の比率を減らして、貨物列車のシェアを上げる必要がありますが、政治家の認識不足もあり、なかなか上手くいっていないのが現状です。
(参考:乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/120090、「鉄道ジャーナル」2022年10月号 鉄道ジャーナル社)
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Comments
日本の物流を総括して考えられるのは本来は国交省ではないかと思います。
旅客会社における幹線と物流における幹線は違うところがあります。
また、貨物規格をトラックと共通化させる開発も時代の進歩とともに継続する必要があるでしょう。
鉄道路線メンテナンスが旅客会社任せでは鉄道貨物の本来の力は発揮できないと私は考えます。
本来、国交省が主導し、それなりの資金を投入すべきものとしては災害時の迂回運転の形(別路線で回すかトラックか)がある思います。
山陰線や函館本線で実施されたことがありますが、開通も遅いし、民間に任せすぎだと感じます。
物流は日本を支える大きな柱。国交省は災害、有事に備え鉄道貨物(物流の大動脈)の維持・管理をもっと真剣に考えても良いと思います。
Posted by: ゆめ | 2022.07.17 11:21 PM
ゆめさん、おはようございます。
* 日本の物流を総括して考えられるのは本来は
鉄道だけでなく、トラックや船、航空機を含めて物流全体のあるべき姿をデザインするのは国交省の仕事です。
JR貨物ができることは限られていて、取引先から批判されても対応できることは少ないのが現状なのでしょう。
Posted by: たべちゃん | 2022.07.18 07:12 AM