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JRはローカル線を運営するのに適していない

 JRになって35年経ちました。JRに移行するときに赤字ローカル線が大幅に廃止されましたが、JRになってからは鉄道が廃止されることは少なく、黒字路線の利益で赤字ローカル線を維持してきました。しかし、物事には限度があります。JR東海以外の5社はローカル線の状況を公開し、ローカル線の存廃についての議論を起こしています。はっきり言って、全てとは言いませんが、そのうちの一部路線については、廃止やむなしというのが正直なところです。

 ところがこの動きに異議を唱える人が2人います。ひとりは、鳥塚えちごトキめき鉄道社長。現在、北陸新幹線開業に伴って分離された、えちごトキめき鉄道を経営している鳥塚氏は、かつて第三セクター鉄道のいすみ鉄道の社長でありました。その鳥塚氏が主張するのは、高コスト体質で、やる気を出せば赤字はもっと圧縮できるはずだと言うのです。確かに人件費は第三セクター鉄道よりは高くつきます。しかし、全国有数の鉄道であるJR東日本の従業員が、ローカル線で勤務しているからと言って、給料を大幅に減らすということはできないでしょう。木更津市の人口が13.5万人いますが、久留里線沿線の人以外は、全く関係がありません。車両もローカル私鉄なら中古で許されるものの、JRならレベルの高いものが求められます。JR西日本エリアだと、新快速風の転換クロスシートが求められます。

 輸送密度が85人(2019年度)の久留里-上総亀山間はともかく、1425人の木更津-久留里間は直ちに鉄道を廃止しないといけないほど悲惨な数字ではありません。一番の問題は全国組織のJRがローカル線の久留里線を運営していることなのです。いすみ鉄道のような第三セクター鉄道であれば、コストは地元企業の水準に抑えられますし、今までは内房線などほかの路線と一緒になっていた収入も区分することができます。もし赤字でも、地元自治体が存続させる価値ありと判断すれば、補助金がもらえます。黒字路線の黒字で維持するのが当然だと言われるJRでは、できない話です。

 もうひとりは、斉藤国交相。国交省の有識者検討会では、輸送密度が1000人未満の鉄道について運行見直しの協議を始めることを求めていますが、国交相は輸送密度1000人未満のうち、半分以上は残るという見解を出しています。もちろん、輸送密度1000人未満の鉄道でも、幹線の一部を成すなど、単純に輸送密度だけで考えてはいけない区間があります。ただし、特急や貨物列車がないなど、幹線としての機能がない区間については、第三セクター化やバス転換などを考えないといけないでしょう。国交相の地元である広島県で言えば、芸備線の新見-備後庄原間を無理に維持するのではなく、三次-広島間をいかに使える鉄道にすることのほうがはるかに重要なことです。
(参考:Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/torizukaakira/20220801-00308226、https://news.yahoo.co.jp/articles/e1bbc396bcdc2d81a6750039713b22fc57198f4c)

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Comments

第3セクターの鉄道ではきちんと地元自治体が目の前にある鉄道についてきちんと考えているように思います。

JRの場合は只見線沿線、高速化に資金を出した島根県や鳥取県も地元の鉄道についてきちんと考えていると思います。

ただし、資金面に首を突っ込まず、反対のみを唱える自治体もいます。これは問題なことです。しかし、この背景となっているのが分割民営化時に国交省と当時の政府が出した国民に対する公約(広告)だと思います。

国交省は果たしてこの公約を守るべく活動したのか?

無料高規格道路を地方に作りすぎてそれがJRの経営を圧迫しなかったか?

JRが地方の交通に不向きであることは確かでしょう。国交省がすべきことは3セク転換の推進、設備への補助金導入等いろいろあるはずです。JRのままだと見込みのある区間さえも無くなりそうで心配です。

Posted by: 小春 | 2022.08.14 07:52 PM

 小春さん、こんばんは。

* 第3セクターの鉄道ではきちんと

 第三セクターの場合は自分の懐に影響するので冷静な判断ができますが、JRの場合は人の金で路線を維持させることができるので、どんなに利用者が少ない路線でも鉄道の維持に固執することが多いです。

* 無料高規格道路を地方に作りすぎて

 無料の高速道路がある路線については、地元はJRの存続を求める資格はありません。地元は鉄道ではなく高速道路を選んだのですから。

* 国交省がすべきことは3セク転換の推進、設備への補助金導入等

 鉄道が社会的に必要とされる路線については、国や地方自治体が積極的に競争力強化のための投資をしなければいけません。

Posted by: たべちゃん | 2022.08.15 08:58 PM

第三セクター化による経営分離も一つの手でしょうし、
第三セクター化しないものの運賃体系を分離し、業務委託するのも一つの手だと思っています。
JR路線として扱われるならば時刻表上も優遇されますし。
一旦経営分離してしまうとJRに戻すのが難しくなります。
(愛環しかり、伊勢鉄道しかりです)
その辺り、鉄道法規がどこまで可能かという問題もありますが、JRのまま路線を維持する方法の一つにはなりえるのではないでしょうか。

Posted by: MM | 2022.08.16 03:26 AM

 MM さん、こんばんは。

* 第三セクター化しないものの運賃体系を分離し、

 10月1日に復旧する只見線が似たようなケースになると思われます。上下分離になるパターンです。

* (愛環しかり、伊勢鉄道しかりです)

 伊勢鉄道のような幹線鉄道網を担う区間は、加算運賃を徴収してでもJRにすべきだったところでしょう。愛知環状鉄道も、国鉄が1時間に1本程度走らせるというまともな経営をしていれば、地方交通線ぐらいにはなったはずです。

Posted by: たべちゃん | 2022.08.16 07:52 PM

はじめまして。広島県民の哲哉と申します。
その芸備線ですが広島への便は東城、庄原はもちろん三次ですら最早高速バスに対して勝ち目はない状況です。あと輸送密度の区切り方が三次〜狩留家から三次〜下深川に変えられてるのが少し気になります。広島〜三次はおろか下深川〜狩留家も怪しいのではと疑ってしまいます。電化は無理でしょうから早くハイブリッド気動車を導入し、広島〜三次間の生き残りだけは死守してほしいものです。

Posted by: 哲哉 | 2022.08.23 02:12 AM

 哲哉さん、こんばんは。

* その芸備線ですが広島への便は東城、庄原はもちろん

 本文にも書きましたが、そういう状況だからこそ、利用者が皆無の区間の維持に拘泥するのではなく、三次から西を使える交通手段にすることが必要なのです。

 ただ、三次以西にしても広島県などがお金を出し、高速化を行う必要があるでしょう。

Posted by: たべちゃん | 2022.08.23 09:30 PM

国交省も地元自治体もJRに丸投げするのではなく、地方交通の形をきちんと考えてほしいです。何もしなければ批判は免れますが、問題が一度起こると一気に物事が停滞します。

地方には地域活性化の名のもと道路がやたらと建設されていますが、なぜか不便さは変わらず、人口も減る一方です。

国交省や地方自治体はJRだけを批判するのではなく、どうやったら公共交通を活かせるのかを真剣に考えてほしいです。地方の衰退は日本全体の衰退につながります。

見込みのある区間があるならば3セクに引き取る位の覚悟を持ってほしいです。バスにするにしてもバス会社任せのようなことはしないで経営にも参画し、住民や観光客が利用しやすいルート・本数をバス会社と一緒に考えてほしいと思います。

Posted by: ゆめ | 2022.08.27 05:53 PM

 ゆめさん、おはようございます。

* 国交省も地元自治体もJRに丸投げするのではなく、

 JRは株式会社ですから、丸投げされるのなら、廃止になっても文句は言えません。少なくとも特急や貨物の通らない支線については、JRは維持しなければならない社会的責任はありません。逆に特急や貨物の部分については、国がある程度は面倒を見る必要があるでしょう。

Posted by: たべちゃん | 2022.08.28 07:01 AM

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