「WEST EXPRESS 銀河」と熊野のトロッコに乗る(2)
通路が明るくなった。アナウンスがあり、間もなく串本到着とのこと。携帯の万歩計を見ると、どうやら途中で2時間近く停まっていたようだ。時間調整のため、乗務員交代を行う紀伊田辺で停まっていたのだろうか? 串本では橋杭岩の観光を行う。観光バスに乗り、橋杭岩に行く。現地ではジオパークのガイドが橋杭岩の説明をしてくれる。杭みたいに見えるのは、マグマの固まったもので、だんだん崩れて今のようなかたちになったのである。伝説では空海が一晩でつくろうとしていた橋脚とも言われている。ちょうど日の出のころで、大島から出る朝日を眺める。再びバスで駅に戻り、車内で朝食の弁当を受け取る。漁師の朝御飯がコンセプトで、鯛めしがメインとなっている。3号車のリクライニングシートではむしろ机が遠くて食べづらいので、隣の4号車の「遊星」で食べる。食べている途中、串本から3駅目の紀伊田原で停まる。運転停車だが、ここで後から出た普通に抜かれる。「WEST EXPRESS 銀河」は料金設定上、特急扱い。いくら急がない列車とは言え、普通に抜かれるとは異例だ。最後の停車駅、紀伊勝浦を出てから、車内の散歩に出かける。2号車は女性専用車で入ることができないので(リクライニングシートと「クシェット」から成り立っている。「クシェット」の説明は後で行う。なお、1号車はグリーン車で、かつての開放式A寝台みたいな構造になっている)、6号車のほうに行く。3号車はリクライニングシートとグループ用の「ファミリーキャビン」、4号車がフリースペースの「遊星」で、5号車が先ほども触れた「クシェット」、2段式のB寝台みたいな構造で、完全に横になることができる。これも座席扱いなので、「ノビノビ座席」と言ったほうが正確か。6号車がグリーン個室で、運転席の近くに「彗星」という小さなフリースペースがある。
「WEST EXPRESS 銀河」は終点、新宮に到着した。徐福茶の振る舞いがあり、地元の物産の販売所ができている。買い物をしている人もいた。私が次に目指すのは、熊野の山奥のトロッコで行く温泉だが、それに乗るには熊野市からコミュニティバスに乗る必要がある。本来ならJRで行けばいいのだが、ちょうどいいのがない。しかし、熊野市までなら並行して走る路線バスがある。三重交通のバスで1時間に1本程度ある。これに乗ることにした。駅の向かいの観光協会と同居している建物の前から出発。基本的に国道42号線を走る。バスの乗客は5人。県境の熊野川を渡ったところで1人降りたが、それ以外はあまり動きがない。JRがない時間帯なので、長距離輸送も担っているようだ。
先ほども書いた通り、温泉に行くには、熊野市からコミュニティバスに乗ればよい。そのバスは11:25に出るので、少し時間がある。駅前の土産物屋で下調べをしておく。 駅前のバス停で待つが、時間になってもバスが来ない。よく見ると、ロータリーの反対側にバスが停まっていた。あわてて走り、何とか間に合う。バスは三重交通の小型のバスだった。バスは山間部に入っていき、路面にも雪が積もっている。とても南紀とは思えない。バスに乗って50分余り、ようやくトロッコ乗り場のある瀞流荘に着いた。先ほども書いたようにバスは三重交通のもので、交通系ICカードの読み取り機もあるが、コミュニティバスの扱いなので使えないようだ。
乗り場には駅舎があるが切符売り場がなく、切符は近くの瀞流荘で買わないといけない。トロッコとトロッコで行ったところにある湯ノ口温泉の入浴券とのセットを買う。時間に余裕があれば、瀞流荘での食事や入浴もしたかったが、バスやトロッコの時間が合わないので、それは止めた。トロッコは1日6往復で、次は13:00発。元々このあたりに鉱山があり、その輸送手段としてつくられたのがトロッコである。そのため機関車はバッテリーで動くようになっており、後ろに5両の客車をつないでいる。線路の幅は狭く(610ミリか?)、客車は腰を曲げないと入ることはできない。時間になり、発車した。線路の状態は悪く、ガタガタと揺れる。音もかなりうるさい。観光施設としての存在で、トロッコに乗るのが目的なので許されるものだろう。トロッコの軌道はほぼトンネルの中。10分で湯ノ口温泉に着いた。このトロッコが再び瀞流荘に戻るまでの1時間の間に、温泉に入る。湯ノ口温泉は歴史ある温泉で、瀞流荘にもお湯を供給しているようだ。予定通りのトロッコとバスに乗って、熊野市に戻る。
熊野市から名古屋には、三重交通の高速バスで戻る。切符は事前にインターネットで予約し、パソコンに送られてくるメールを携帯電話に転送すればよい。駅から少し離れたバス停で待つ。新宮方面からバスがやってきた。ところが、バスには誰も乗っていない。どうやら客は私ひとりのようだ。熊野市から尾鷲の間は無料の高速に乗る。尾鷲市病院前で6人乗ってきて(最終的には乗客は10人になった)、ようやくひとりだけの状態ではなくなる。この高速バスは急行なので海山からずっと高速道路を走るのだが、道路の工事を行うとのことで次のインターチェンジで下ろされ、並行して走る国道に迂回することになる。そのため定刻から若干遅れて、終点の名鉄バスセンターに着いた。
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