JR東日本の値上げ、山手線と廃止になりそうなローカル線が同じ運賃に
分割民営化後、消費税率の改定に伴うものを除いて値上げをしなかった、JR東日本。そのJR東日本ですが、ついに値上げをすることになりました。値上げの実施予定日は2026年3月、値上げ率は7.1%です。
今回の値上げは全エリアに及びます。初乗りは160円になり(紙の切符の場合)、長距離も値上げになります。特に値上げが激しいのが、東京。今のJR東日本の運賃は、山手線内、電車特定区間、幹線、地方交通線の4段階に分かれていますが、これを幹線と地方交通線の2段階にします。山手線内、電車特定区間は幹線に統合されるので、かなりの値上げになるのです。例えば、東京から新宿までは、210円から260円に上がります。先ほども述べたとおり、長距離も値上げになりますが、特急料金は変わらないので、東京-仙台間の場合、11410円から11630円に220円増えるだけです(「はやぶさ」、通常期に普通車指定席を使用した場合)。JR西日本のように電車特定区間を残すのではなく、完全になくすのです。なお、鉄道駅バリアフリー料金は廃止されます。
運賃が幹線と地方交通線の2種類だけになることは、次のことを意味します。幹線と地方交通線の区分は、国鉄時代、東北新幹線や上越新幹線が開業する前の数字を引き継いだものです。そのときから40年以上が経ち、交通体系も変わっています。奥羽線の新庄-大曲間も国鉄時代は「つばさ」などが走っていたので、幹線と判断されるのは当然のことでしたが、今は非電化になる区間も出てくる、単なるローカル線です。そういうところと同じ運賃になるのです。通勤定期についても運賃が上がることにより値上げになります。6か月通勤定期については割引率を見直します。通学定期については家計負担を考慮して据え置きますが、山手線内、電車特定区間については幹線に統合されるので、その分値上げになります。私鉄との競争が激しいところで設定されている特定区間については、一部を残して廃止します。また、JR東海やJR西日本の幹線、地方交通線の運賃が変わらないことから、JR東日本とほかのJRに跨がる場合には、加算運賃を適用します。JR北海道、JR四国、JR九州で行っていることをJR東日本にも適用するのです。東海道線東京-熱海間では、新幹線と在来線とで運賃が変わるため、別線扱いとします。山陽新幹線の新下関-博多間と同じ扱いになるのです。
分割民営化以来40年近く、消費税率の改定に伴うものを除いて値上げをしてこなかったことについては賞賛したいです。ただ、値上げの方法が悪いです。東京なら利用者が多く、値上げしても車や私鉄に逃げることがないと見込まれることから、東京の利用者を狙い撃ちにした値上げとなっています。東京で稼いだ利益をJR東日本全体にばらまくための値上げです。JR東日本の路線の中には、赤字でも特急や貨物列車がある程度通り、幹線鉄道網の一環を担う重要路線もありますが、鉄道が廃止になっても地元の人以外は何ら困らない路線もあります(しかも、利用するわけでなく、ただ存続すること自体に価値があるのです)。撤退するのが唯一最善の策の赤字ローカル線にもお金をつぎ込むのです。鉄道しかまともな交通機関がなかった時代ならともかく、車のほうが小回りが利きます。そういうところから潔く撤退して(もしくは地元に任せ)、それで浮いた資源を鉄道の特性を活かせるところに回したほうがいいのです。
今回の値上げの後、またすぐに値上げするわけにはいきません。そういう観点から言えば、時代に合った値上げにすることができなかった今回の値上げは、残念なことと言えます。「みどりの窓口」を減らして、ネットに誘導したいのなら、正規運賃を上げて、ネットでの割引を充実させるしかないでしょう。
(参考:JR東日本ホームページ https://www.jreast.co.jp/press/2024/20241206_ho02.pdf)
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