これだけの問題が解決できているならとっくに「米原ルート」で決まっている(2)
昨日の記事の続きです。
(4)所要時間について
「米原ルート」の場合、国の試算では、米原で乗り換える必要があり、特急料金も米原で打ち切りになるため、割高になります。まず、乗り換え時間なのですが、国の試算では15分と見積もられています。武雄温泉のように3分で乗り換えができるという見解もありますが、いくら何でもこれは無理でしょう。まず、東海道新幹線と北陸新幹線は運営会社が違うので、対面での乗り換えはできず、いったんは中間改札を通すでしょう。また、現在の敦賀での乗り換えのように、「サンダーバード」等のダイヤをうまく調整することはできません。東海道新幹線が絡むので、その分難しくなります。名古屋方面からの列車と新大阪方面からの列車の2つにうまく接続させるダイヤを組むのは、難易度が高いと思われます。15分という接続時間は、その余裕を含んだものなのです。ちなみに、名古屋方面からの接続をよくすれば、北陸新幹線一本で行ってもらいたい東京-福井間が、東海道新幹線経由になってしまう危険性があります。JR東日本、JR西日本にとっては良くない話ですし、利用者が増えて儲かるはずのJR東海もありがた迷惑の話なのです。本来の東海道・山陽新幹線の利用者の枠が狭くなるということですから。JR東海にとっては、北陸新幹線の利用者は、北陸経由で行ってもらっても一向に構わないのです。
(5)料金について
先ほども書きましたが、「米原ルート」の場合、特急料金は米原で打ち切りになります。東海道新幹線と北陸新幹線の運営会社が違うので当たり前と言えば当たり前の話です。国鉄時代に開業した東海道新幹線と山陽新幹線の場合は、JR東海とJR西日本に跨がっても特急料金は通しでしたが、分割民営化後に開業した整備新幹線は、全て会社の境で打ち切ります。実際には多少特急料金を値引きしていますが、大きくは期待できないので、保守的にしていると思われます。
在来線で関西から北陸に行く場合、米原経由でも湖西線経由で運賃や料金を計算します。これを新幹線でも適用すべきと言う声がありますが、それは無理でしょう。新幹線には湖西線というのがありませんので、米原経由の営業キロで計算するのは自然な話です。また、米原で会社が変わるので、運賃の取り分をどう分けるかという話が出てきます。
料金についてもJR西日本が東海道新幹線米原-新大阪間について第二種鉄道免許を取り、ここも自社の路線として運営すべきだ、という声もあります。JR西日本が第二種鉄道免許を取れば、この区間の収益も自社に入ります。JR西日本一社で済むので、料金は安くなります。逆に現状の敦賀乗り換えよりも安くなってしまうので、何らかの名目で加算料金を取っても罰は当たりません。極論すれば、直通運転してくれるのならば、特急料金を米原で打ち切り計算したとしても、利便性向上の対価として許されます。話が長くなりましたが、このように一社にまとめることによって安くする仕組みは、すでに東京の地下鉄にあります。都営地下鉄三田線の白金高輪-目黒間で、この区間は東京メトロ南北線の線路を利用しています。東京メトロが第一種鉄道事業者、都営地下鉄が第二種鉄道事業者です。都営地下鉄は東京メトロに線路使用料を払います。こうすることによって、初乗り運賃は都営地下鉄だけで済み、運転士も都営地下鉄だけで済みます。この仕組みを応用するのです。
続きは明日にします。
(参考:msnホームページ https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/北陸新幹線-敦賀乗り換え不要-は本当か-福井県-インチキ広告-の裏側を徹底検証-米原ルート-不利-試算の落とし穴-隠されたメリットとは/ar-AA1EYkyr?ocid=msedgdhp&pc=EDGEXST&cvid=f134ec8e34374729b6748e216daeef41&ei=29)
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Comments
米原ルートが採用されなかった理由が多々記載されているけど、どれも本当の理由ではないと思われます。
リニア開業後に東海道新幹線乗入れでいいということで、関西広域連合では米原ルートが決定されたのに、リニアの完成を待っていたのでは遅すぎる、2030年頃までに新大阪まで直通させろとの声が高まってきたからだと思われます。
関西連合としては、なるべく少ない費用で済ますつもりだったのに、財政のタガが外れたことで、JR西や各自治体も、京都駅に乗り入れろ、小浜を通せ、舞鶴も通せ、関空まで繋げろ、松井山手にも駅を作れ等、色々な要求が噴出して、収拾がつかなくなったのです。
札幌延伸でさえ2030年予定だったから、新大阪まで2030年に完成させる目途など実際はまったくない、単なる希望的観測にすぎなかったのに、多くの人がそれを信じ込んでしまったようで、JR西ですら、敦賀駅の設計や、FGT中止などの発言を聞いていると、その線で動いていたような節があります。
JR東海が北陸新幹線乗り入れは不可と言ったのも、2030年開業を暗黙の前提で言っただけの話ではないのか?
それで出来上がったのは、2046年に小浜京都ルートでの開業というもので、それならリニアの開業を待っても変わらないのに、別線で作るという話だけは、一人歩きしている。
あれ以降、「のぞみ」の運転本数は毎時12本まで拡大しているから、リニアの新大阪開業を待たなくとも、名古屋開業の時点で、2本程度の乗り入れは可能です。
米原ルートの問題は、どれも解決不能の問題ではないと思われます。
FGTが安全性や経済性の問題からできないというような話とは異なり、JR西としては、面倒臭いからやりたくないレベルの話でしょう。
JRとしても、高速運転している北陸線では、新幹線ができても伸びる余地は少ないのに、そんな面倒な手間をかけてまで米原ルートにするメリットはない、小浜京都ができなければ、もう敦賀止まりでいいというのが本音なのでしょう。
まあ、ここは、JR西も関西に本拠を置く企業としての自覚があるなら、いつまでもできない小浜京都に拘らず、米原転換を検討すべきだろう。
それでも、いやだというなら、もう延伸自体断念し、いたずらにこの論議に時間を空費すべきではない。
Posted by: かにうさぎ | 2025.05.31 11:05 PM
かにうさぎさん、おはようございます。
* リニア開業後に東海道新幹線乗入れでいいということで、
そもそもリニアも名古屋以西の建設が決まっていないので、それを当てにすることはできません。ですから、今回の議論も、リニアが完成しないことを前提にしています。
* 米原ルートの問題は、どれも解決不能の問題ではない
「思う」レベルで止まっているのが「米原ルート」最大の問題で、技術的に問題がないかを検討していかなければなりません。今はその段階なのです。
* まあ、ここは、JR西も関西に本拠を置く企業としての
現状のルールでは、「米原ルート」にするとJR西日本は損するのが確実ですから、企業の行動としては合理的です。それを言うなら、「どの方法でも良いから、北陸に直通する特急を復活させよ」です。
第二種鉄道免許などの方法で「米原ルート」にしても一定の利益が出るように環境を整えないといけないでしょう。
Posted by: たべちゃん | 2025.06.01 10:14 AM