アルプス横断物語(3)

 翌朝、布団の中で気がついたら6:40。高岡7:00発の電車に乗ろうとしていたので、かなりあわてた。富山で高山線に乗り換え、神岡鉄道の始発駅、猪谷へ行く。

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 猪谷と奥飛騨温泉口を結ぶ神岡鉄道は、貨物輸送中心の第三セクター。山岳地帯を通るためにトンネルが多く(全線の約6割)、「飛騨の地下鉄」の異名をとる。

 神岡鉄道のディーゼルカーには、このようないろりがある。このいろりはレプリカなのだが、気分だけでも暖かくしてくれる。私の乗った列車は団体の観光客でいっぱいであった。


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 神岡鉄道の終点の奥飛騨温泉口駅から歩いて10分あまり、藤波八丁に着く。青い水をたたえた高原川に沿って、500メートルほどの遊歩道が整備されている。写真は暗いのでよくわからないが、ここは紅葉の名所としても知られている。1週間ぐらい後(11月中旬)にここを訪れたら、真っ赤な紅葉に巡り会えたのであろうか。そう思うと、少し残念。

 ここで名物の「蒸し寿司」(すし飯に錦糸卵や椎茸、タケノコなどをのせ、せいろで蒸した料理)を食べ、平湯まで1時間あまりのローカルバスの旅。ほとんど客は乗ってこなかった。


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 戦国時代の武将、武田信玄によって発見されたのが平湯温泉である。バスターミナルの近くには多くの旅館やホテルが軒を連ねているが、平湯温泉の元祖は、バスターミナルから歩いて15分ほどの「神の湯」である。小さな脱衣場があるだけの素朴な温泉で、ほかには何もない。露天風呂に入っていると木の葉がひらひらと落ちてきて、秋を感じさせる。

 帰りのバスの時間がやってきた。バスターミナルに戻り、松本行きのバスに乗る。このバスが、1997年12月に開通した安房トンネルを通るのだ。このトンネルの開通によって、信州と飛騨の間が一年中通行できるようになり(トンネルの開通前は冬季は積雪のため通行止めになっていた)、首都圏からもかなり行きやすくなった。飛騨にとっては、革命的なできごとであろう。

 新島々で松本電鉄に乗り換える。松本に着くころには、あたりはかなり暗くなっていた。そして夜の名古屋へ急ぐ特急列車。あっと言う間の短い旅を象徴するかのようであった。(おわり)