2022年9月に開業してから1年半近くになる西九州新幹線。輸送密度については以前に記事にしましたが、新幹線開業前と比べてどれだけ利用者が増えたのでしょうか?
新型コロナウイルスの影響が全くなかった2018年度と比べると、西九州新幹線は2%増えました。2004年の九州新幹線部分開業のときは2.3倍に増えましたから、それに比べると明らかに伸びは小さいです。どちらも途中駅での乗り換えがあるとはいえ、九州新幹線の場合は時間短縮効果が大きく(最速で比較すると1時間半以上も短縮しました)、しかもその乗り換えも一時的なものになることが最初から分かっていたので、どちらが優れていたかは明らかです。ただ、2018年度との比較では、九州新幹線博多-熊本間は84%に留まっていますし、そのほかの新幹線でも2018年度比では80~90%程度ですので、西九州新幹線との差に当たる10~20%程度が(新型コロナウイルスの影響を除去した場合の)西九州新幹線開業の効果とも言えます。
ライバルの交通機関はどうでしょうか? 長距離でライバルになるのは航空機です。2022年9月から2023年6月までの大阪-長崎間の旅客数は30.7万人で、2018年9月から2019年6月の32.8万人と比較すると、6.4%減っています。しかし、航空需要も新型コロナウイルスの影響で減っています。大阪-鹿児島間の場合、2022年9月から2023年6月までは48.7万人、2018年9月から2019年6月までは56.6万人なので、14.0%減っています。そのことから考えると、西九州新幹線開業によって航空機の需要を奪ったとは考えにくく、むしろ西九州新幹線開業によって観光需要が増えたとも考えられます。また、新幹線が開業しても、割引切符の値段は下がっていません。3日前までに予約及び決済しなければいけない切符で考えると、大阪-長崎間は26180円します(2023年9月の場合)。新幹線の正規料金は20640円なので、新幹線の正規料金より高い強気の切符でも商売ができるのです。ちなみに、大阪-熊本間の同様の割引切符は、新幹線の正規料金よりも安くなっています。ここは安くしないと新幹線に勝てないのでしょう。
近距離のライバルは高速バスです。九州新幹線のときでも、福岡-熊本間の高速バスは安く利用したい人から支持され、1割以上利用が増えました。西九州新幹線のライバル、「九州号」の伸びはそれ以上です。西九州新幹線開業直前の2022年8月に新型コロナウイルスの影響による需要減少や燃料高騰を理由に値上げをしましたが、それでも3~4割増えたようです。西九州新幹線とのスピード差があまりなく(開業前の在来線特急ぐらい)、これまで特急が停まっていた浦上には新幹線が停まらず、使いにくくなったことが原因にあるようです。ただし、新型コロナウイルスの前の水準には戻っていないようです。
(参考:「鉄道ジャーナル」2023年12月号 鉄道ジャーナル社、ながさき経済web https://nagasaki-keizai.jp/contribute/_contribute/7186)
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