奈良県の県庁所在地が変わる?

 奈良県の県庁所在地は奈良。ところがその県庁所在地を変更する話があります。

 3月のことですが、奈良県の県庁所在地の橿原市周辺への移転を求める初めての決議案が、奈良県議会において賛成多数で可決されました。定員44人のうち出席した議員(議長を除きます)は40人、このうち23人が賛成し、17人が反対しました。地域別にみると、反対派が多いのは奈良市選挙区と生駒市選挙区のみ。賛否同数が2選挙区、賛成多数も2選挙区で、後はすべて全員賛成でした。

 なぜ県庁の移転に賛成する議員が多かったのでしょうか? それは、県庁所在地の奈良市が北に偏っているからなのです。奈良市などの北部は大阪のベッドタウンとして人口が増えましたが、南部は衰退するばかりです。そこで奈良盆地の中でも比較的南側の橿原市あたりに県庁を移し、奈良県内の南北格差を是正しようとしているのです。はっきり言って、ほかの県の人間には関係ない話で、奈良県内だけの事情で行われた決議です。リニアの駅と同じように。

 もっとも、このような決議がなされたからといって、すぐに県庁が移転するわけではありません。実際に移転するには様々な問題を解決しなければならず、この決議自体がパフォーマンスということもあります。荒井奈良県知事自体も、県庁の移転に積極的ではないようです。
(参考:毎日jp https://mainichi.jp/articles/20180417/k00/00e/040/294000c、https://mainichi.jp/articles/20180324/ddl/k29/010/539000c)

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電気自動車にも税金?

 世界に目を転じると、ガソリンではなく電気等を燃料とする車を普及させようとしています。ドイツは2030年に、フランスやイギリスでは2040年にガソリン車などの販売を禁止する方針です。中国でも、2019年から電気自動車や燃料電池車などを一定割合販売するようにメーカーに義務付けます。

 日本では今のところそういう規制はありませんが、トヨタや日産などの日本の自動車メーカーが世界の動向を無視して、ガソリン車をつくり続けるわけにはいきません。日本のメーカーも電気自動車等の研究をさらに進め、世界に売っていかなくてはいけません。いずれは、日本にも自然に電気自動車等が普及していくことでしょう。環境の面から言えば、化石燃料を使わなくても走ることができる電気自動車等の普及は望ましいことかもしれません(電気や水素をどうやってつくるかが問題となりますが)。ただ、電気自動車等が普及すると困った話が出てきます。

 それは、税収が減るということ。ガソリンにかかる揮発油税は1リットル当たり48.6円します(暫定税率の分を含んでいます)。地方揮発油税を含めると、53.8円もします。ところが、電気自動車や燃料電池車には燃料にかかる税金がないのです。今は電気自動車等はそれほどないので大きな問題にはなっていませんが、将来は普及することでしょう。日本エネルギー経済研究所の試算によれば、電気自動車が急速に普及した場合、2015年のOECD参加35か国の自動車用ガソリン・軽油関連の税収が、2015年の3700億ドル(約42兆円)から、2050年には790億ドルと2割程度にまで縮小するようです。これを日本に当てはめてみれば、2015年度の揮発油税の税収は国税分で約2.46兆円ですから、2050年には約2兆円が減る格好になります。消費税1%分に相当する金額です。日本では、揮発油税等は長い間道路特定財源として使われ、2009年度から一般財源化されて以降も、道路との結びつきは強いです。税収が減ると、道路への支出を減らすか、どこかから財源を調達してこないといけません。

 ガソリン車にのみ税を課せられ、電気自動車等には税金がかからない現状に対して、石油業界は不公平だとしています。しかし残念ながら、電気自動車等を普及させるのは国際的な動向で、すぐに格差が是正されることはないでしょう。ただ、将来にわたってこのままでいいとも言えません。人口が減っていく日本で、大規模な道路建設の必要性は減るでしょうが、道路の維持コストは増えていきます。短期的にはともかく長期的には、電気自動車等にも何らかの受益負担をさせないといけないでしょう。環境への負荷割合に応じて税金を負担するのです。
(参考:産経ニュース http://www.sankei.com/premium/news/171206/prm1712060001-n1.html)

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韓国でも「Suica」?

 日本の主な鉄道では、「Suica」などのICカードが使えます。これと同じように、韓国にも鉄道用のICカードがあります。「T-money」といいます。2004年7月にソウルの新交通カードシステムとして利用を開始し、2014年6月には韓国全土で使えるようになりました。この日韓の交通系ICカードを相互利用しようというアイデアがあるようです。

 技術的には、相互利用は難しいことではありません。どちらも国際規格に沿ったものですから。日韓の通貨の違いも、クレジットカードのように、利用時に為替レートを換算すれば難しいことではないでしょう。

 この話が出てきた背景は、韓国経済の不振。景気を回復させるために、日本からの観光客を呼び込みたいという考えです。このICカードの相互利用も、韓国側が言い出したことです。韓国からの訪日客は2011年の166万人から2014年の275万人に伸びていますが、日本からの訪韓客は2011年の351万人から2014年の228万人に減っています。事あるごとに日本を悪く言う韓国の姿勢が大きく影響しているとも考えられます(その割には韓国からの訪日客が増えるのは不思議なのですが)。非難してばかりの国に行く気をなくすのも当然のことです。

 日本からの観光客を呼び込むには、まずそういう姿勢を改める必要があります。過去の歴史にこだわっていては、先に進みません。
(参考:産経ニュース http://www.sankei.com/premium/news/150624/prm1506240005-n1.html)

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国会議員は私鉄やバスも乗り放題

 国会議員はJR全線に乗り放題ということはよく知られていますが、私鉄やバスも乗り放題です。私鉄77社に乗ることができる「鉄道軌道乗車証」は1946年に、路線バスに乗ることができる「バス優待乗車証」は1961年に衆議院側が交付を依頼しました。それ以降、毎年衆参両議員に交付されています。紙でできたパスを見せれば無料で乗り放題です。

 しかし、JRや航空会社については衆参事務局予算から支払われていますが(年間計約13億円)、私鉄やバスについては支払われていません。私鉄やバス会社が無償で乗せていることになるのです。そもそも、どれだけ使われているかもわかりません。そこで、パスの発行元の日本民営鉄道協会と日本バス協会は、負担公平の観点から利用者の理解を得にくいとして、衆参両院の事務局に廃止か費用負担の打診を続けています。ただ、打診は今のところ口頭によるものであるため、衆参両院事務局はこれまでのところパス見直しの正式な要請はないと認識しています。議員側にもそういう話は伝えていません。パスの発行元の日本民営鉄道協会と日本バス協会は、文書による要請を行うことも考えているようです。

 国会議員が公共交通機関を基本的に無料なのは、国会と選挙区の移動や公務出張のためです。いい仕事をするためにはそれなりのコストが必要でしょうが(もっとも、政局に明け暮れる国会議員がきちんと仕事をしているかどうかは大きな疑問符が付きます)、それなら、それに見合う旅費を支給すればいいだけであり、鉄道会社などに負担させる必要はありません。定数の問題もありますが、自らの身を削ることは非常に消極的です。公務員の待遇を削るのは大好きなようですが、それでは自らの身を削ることには全くなっていないのです。

(追記1)
 早速、見直す動きがあるようです。

 1日2300万円の赤字を計上する京都市交通局は、無料乗車を廃止する方向です。京福も、廃止を含めて検討するようです。なお、北近畿タンゴ鉄道は、2006年度にすでに廃止しています。廃止するのは全国的な傾向で、2002年度には138社で利用できましたが、10年で55%ほどに減っています。

 参考ながら、国会議員もJRはともかく、私鉄はあまり利用していないようです。近隣の移動は車が中心のため、あまり必要性がないというのが現状のようです。パスを見せれば無料になる京都市交通局でも、お金を払って乗車している議員もいます。

(追記2)
 大阪市交通局においても、9月末で適用を打ち切るようです。ちなみに、大阪市交通局が梅田や難波などの主要駅で最近1年間の利用実績を調べたところ、利用はほとんどなかったようです。

(追記3)
 参議院議員運営委員会は8月21日、理事会を開きました。そこで、私鉄やバスの無料パスを廃止することで各会派が一致しました。衆議院側も同様に私鉄やバスの無料パスを廃止する方針で、衆参ともどうやら9月末で廃止になるようです。
(参考:毎日jp http://mainichi.jp/select/news/20120517k0000m040126000c.html、http://mainichi.jp/select/news/20120822k0000m010080000c.html、京都新聞ホームページ http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20120611000138、朝日新聞ホームページ http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201207190025.html)

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中国高速鉄道事故、事故翌日に車両を埋める

 23日夜、浙江省温州市で起きた中国高速鉄道追突事故。39人が亡くなったといわれています(実際には、死者の数はもっと多いという話もあるようですが)。事故翌々日の25日に運転再開したのは想定できなくもないですが、それよりもっと信じられない事態が起こりました。何と事故を起こした車両の一部が、すでに現場近くの地中に埋められていたのです。

 車両を埋めたのは24日。事故は前日のことなので、事故車両にまだ人がいるかもしれません(事実、車両の撤去中に女児が救出されました)。生存者はともかく、遺体ぐらいは残っているはずです。遺留品も当然あります。中国鉄道省は、現場は激しい雷雨でぬかるみになっていて、救援隊などを入れるために運転席など車両の先頭部分を地中に埋めたとしています。しかし、現場作業のためならほかから土や鉄板などを持ってきて対応するはずです。運転席には列車の運行データを記録しているといわれるブラックボックスがあります。事故の原因を追究し、再発防止に努めるためには貴重な資料です。地中に埋めたりすることにより車両もさらに壊れたことでしょう。真相解明が難しくなります。

 さすがに言論統制に厳しいはずの中国国内からさえも激しい批判の声が出てきたため、26日、地中に埋められた車両の残骸を掘り起こすとともに、地上に残っていた車両を搬出することになりました。あまりにもお粗末な結末です。
(参考:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/news/110725/chn11072510520005-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/world/news/110725/chn11072512520007-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/world/news/110726/chn11072613180013-n1.htm)

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大阪市、「生活保護特区」を提案へ

 15万人もの人が生活保護を受け、その費用に2916億円(2011年度予算案)もの多額の費用を計上している大阪市。住民への適切な行政サービスがその分、できなくなってしまいます。大阪市の悩みの種です。

 これだけ多いと、不正受給が疑われる人も出てきます。そこで大阪市は、不正受給などによる生活保護受給者の増加を抑えるため、「生活保護特区」を国に対して提案することを検討するようです。早ければ秋にも申請します。

 「生活保護特区」の内容は、至極まっとうなもの。具体的には、(1)不正受給が疑われる場合の自治体の金融機関などへの調査権付与 (2)就労意欲を高めるため、保護受給者の社会奉仕制度の義務付け (3)保護打ち切りも視野に入れた短期型就労施策導入 などです。また、昨年6月に中国人46人が入国後平均9日で生活保護を申請する事態が発覚しました。その後、入国間もない外国人による保護申請が多く見つかっています。そこで、入国後1年間は原則生活保護申請を受け付けず、就労指導を行うなどの措置を盛り込むようです。

 生活に困って生活保護を申請する日本人はともかく(ただし生活保護はあくまで一時的な措置であるにもかかわらず、働く能力があるのにそれに安住してしまうという困った事例は多くありますが)、外国人の中には最初からそれを狙って日本に来ている者もいます。外国人の生活保護は本国がするものであり、日本のすることではありません。数日間の滞在費と本国への片道航空券を渡せばいいでしょう。入国審査の厳格さが求められます。
(参考:時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/zc?k=201104/2011043000206)

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「子ども手当」、9月末で廃止へ

 2009年の総選挙で民主党がマニフェストとして掲げ、2010年度から支給が開始された「子ども手当」。中学生まで1人当たり月13000円が支給されます。

 しかし、東日本大震災の復興に多額の費用が必要となるため、9月末で廃止になるようです。10月からは、自民党時代の「児童手当」(所得制限あり)が復活します。3歳未満が1人当たり月10000円、3歳以上小学生以下が1人当たり月5000円です(第3子以降は月10000円)。今年から「子ども手当」の対象となる中学生以下の扶養控除が廃止されたため(住民税は来年から)、子供を持つ家庭だけが東日本大震災の財源を負担することになります(そのほか、高速道路関連はこちらを参照)。本当なら増え続ける社会保障全体にメスを入れないといけなかったのですが、選挙を恐れて、高齢者の年金の削減は言いだせなかったのでしょう。受益の多い高齢者ではなく、将来世代にだけ負担が出るのです。

 確かに「子ども手当」には様々な問題があります。しかし、少子化が進む現在、子供を持つ家庭を経済的に優遇することは望ましい方向性であり、「ベーシックインカム」に通じるところがある「子ども手当」の考え自体は誤ってはいません。昔なら、結婚して子供を産むことを社会的に強制できたかもしれませんが、さすがにそれを強制することはできません。経済的なインセンティブをつけるしか対策はないのです。財源は、本来なら所得税を薄く広く増税することによってカバーすべきところだったのです。独身の人、高齢者、高所得者に負担してもらうことにより、財源を確保すべきだったのです。

 せめて、「児童手当」の支給額を増やすことにより、子育て世代への負担を軽減する必要があるでしょうね。
(参考:YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110412-OYT1T01200.htm、厚労省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/jidou-teate.html)

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「子ども手当」で年収8642万円

 おはようございます。

 6月から支給される予定の「子ども手当」。内容が明らかになりますと、いろいろな問題点が浮かぎあがってきました。そのひとつが、外国人の子供が外国で居住する場合にも、「子ども手当」が支払われるということ。それが、見事に実践された例が出てきました。

 尼崎市に住む50歳ぐらいの韓国人男性。妻の母国であるタイで554人の子供を養子にしているとして、子供の名前や生年月日を記載したタイの証明書を携えて申請しました。尼崎市は厚労省に照会の上、受理はしませんでした。もしこれが受理されたら、この男性は「子ども手当」で8600万円あまりを受け取ることができたのです。

 今回の事例はあまりにも極端なので、受理はされませんでした。しかし、10人ぐらいなら間違いなく受理されたことでしょう。今回はタイの証明書を持ってきましたが、国によっては怪しいものもあります。市役所の職員が偽造を見破ることは難しいです。国内に居住する場合はともかく、外国に居住する場合は国籍要件(日本国籍を有する場合に限る)をつけるなどの条件をつけないと、このような事例は続出するでしょう。国によっては「子ども手当」だけで十分生活できるのです。

 このような話は確定申告でもみられるようです。外国人(中国人が多いようです)の中には、本国にいる一族郎党をすべて扶養家族として申請し、納税額をゼロにするものもいるようです。国内ならチェックが利き、申告のやり直しを求めることもできますが、外国ではなかなかチェックが利きません。「子ども手当」で同様の事態が起こるのは十分想定できたのです。

 この欠陥は「児童手当」でも同様でした。しかし、対象となる児童の数が多く、金額も増えたので、問題が浮かび上がってきたのです。「子ども手当」の考えかた自体は「ベーシック・インカム」に通ずるところがあり、いいのですが(扶養控除では所得の多い人に恩恵が大きく、所得が少ない人には全く恩恵がない)、これではその長所を打ち消してしまいます。政府は選挙前の6月に支給することを狙っていますが、変なものをつくるぐらいなら、いったん立ち止まることも必要ではないでしょうか?
(参考:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100424/crm1004241046005-n1.htm、http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100404/trd1004040702001-n1.htm)

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生活保護を求めて大阪にやってくる人々

 日本で一番生活保護の受給者がいるのは大阪市。昨年12月現在、人口の約5%に当たる約13.7万人が生活保護を受けています。しかも、この数字は増える一方。昨年12月にも、2816人もの人が生活保護を申請しました。

 しかし、この中にはもともと大阪市には住んでいなかった人も相当数含まれていたのです。大阪市が9日に公表した内容によりますと、約1割の274人が半年以内に市外からやってきたということです。中には、ほかの自治体から大阪市で申請することを勧められたという話もあるようです。

 本来なら、生活保護は、もともと住んでいた場所などで申請するのが原則です。しかし、生活保護の人を抱えると、自治体にとってお金だけがかかって、何のメリットもありません。高齢や病気などで働くことができない人もいますし、働くことができそうな人でも、将来納税者となって自治体に貢献する期待は正直言ってあまりもてません。しかも、大阪市のように、「生活保護に甘い」というイメージがつけば、大阪市とは縁もゆかりもない人もやってきてしまいます。こういうところにお金をばらまく余裕はありません。役所の担当者レベルからすれば、何らかの理由をつけて追い出すのが最上の策なのです。ほかの町に行ってしまえば、それで解決するのです。鉄道の片道運賃を出してでも行ってくれれば安いものです。平松大阪市長の話の通り、少なくとも生活保護費を国の負担にしない限り、このような問題は続きます。

 先ほども述べたように、働くことができそうな人でも、働かずにぶらぶらして、生活保護をもらい続ける人もいます。大阪市は「働ける人には働いてもらう」ことを原則として、放置自転車の撤去などの仕事を用意します。また、ハローワークに行ったり職業訓練を受けたりなどの働く意思を見せないものについては生活保護申請の却下を認めるよう、国に働きかけます。生活保護はあくまでも一時的なものです。将来的には脱却できるようにしないといけません。そういう意思のないものには厳しい姿勢を取るのは当然のことでしょう。
(参考:asahi.com http://www.asahi.com/national/update/0209/OSK201002090064.html)

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「ベーシック・インカム」

 「ベーシック・インカム」という言葉があります。これは、すべての人に最低生活水準を保障するため、税金で以て一定の金額を支給するものです。失業していたり、障害や高齢で働くことができなかったりしても、もらえるお金です。京都府立大小沢教授によれば、日本の場合、「ベーシック・インカム」は毎月8万円程度になるようです。この金額は、日本に住んでいる人なら、どれだけ金持ちでも貰えます。

 「ベーシック・インカム」を導入することによる利点は、複雑な税金の控除が整理できることです。シンプルな税制になります。そして、もうひとつ大きな利点は、年金、生活保護など各省庁がばらばらにやっていることを、すべて税金というかたちで一本化できるのです。収入がない人の場合は、確定申告をすることによって毎月8万円が国から支給されるのです。実はそれなりの収入があるのに、生活保護を受け続けるということもなくなります。毎年申告しないとお金はもらえないのですから。もっとも、年金は基礎年金レベルなので、リッチな老後を送りたい人は、民間の年金に入っておく必要があります。経営者側からみると、国が「ベーシック・インカム」を支給してくれるので、賃下げやリストラがしやすいというメリット(?)もあります。安い給料で人を雇うことができるので、人件費の安い諸外国に対抗できる可能性もあります。こういう利点があるため、フリードマンのような新自由主義の経済学者でも「ベーシック・インカム」を支持する人はいます。

 さて、問題は財源。小沢教授の試算では、「ベーシック・インカム」に必要な財源はすべて所得税で賄うと仮定しています。政府の役割を「ベーシック・インカム」を支給することと、医療や介護のために社会保険料(収入の4%)を徴収することに限定しています。さて、気になる所得税の税率は、社会保険料を引いた残りに対して一律に45%。かなり高いように見えますが、収入の少ない人には「ベーシック・インカム」があるので、実質的な負担割合は小さいです。

 具体的に例を挙げて説明しますと、年収700万円のサラリーマンの夫・専業主婦・特定扶養控除が適用される子供の3人家族の場合、これまでの社会保険料(収入の10%と仮定しているようです。年金の分があるので、「ベーシック・インカム」導入後の率より高くなっています)・所得税控除後の金額は609.65万円。ところが「ベーシック・インカム」導入後は657.6万円となり、自由に使えるお金が50万円ほど増えます。反対に、年収400万円のシングルの場合、社会保険料・所得税控除後の自由に使えるお金は、「ベーシック・インカム」導入により、350.6万円から307.2万円に約40万円強減ります。大雑把にいって、家族を持っている人の負担が減り、独身の人の負担は増えます。特に負担の増加が大きいのは、独身貴族。年収1000万円の人の場合、「ベーシック・インカム」導入により、負担が200万円ほど増えます。

 ここの試算では収入と所得とをごちゃまぜにしているので正確な数字ではありませんが(しかもサラリーマンの収入に直接税率をかけています)、考え方自体は検討に値しますね。
(参考:朝日新聞「be on Saturday」9月12日朝刊)

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