天下の箱根を巡る旅

 4月からの東京への長期出張も今週でおしまいになるので、最後にまだ行っていない箱根に行こうと思い、朝早く小田急新宿駅に向かった。乗った列車は特急「サポート」、沿線の主な駅にこまめに停まるタイプの特急だが、いい名前とは言えない。かつて運転されていた「あしがら」や「さがみ」のほうがいい名前だ。

 箱根湯本からは登山電車に乗り換える。2両編成の小さな電車だが、険しい箱根の山を登ることのできる力持ちなのだ。80パーミルという急勾配(特殊な鉄道を除けば一番の急勾配)を登ることのできる電車なのだ。急勾配を克服するために、ジグザグに山を登るスイッチバックも3か所で採用している。終点のひとつ手前の彫刻の森駅で降りる。

 箱根にはたくさんの美術館があるが、そのうちのひとつに彫刻の森美術館がある。彫刻の森美術館は箱根の自然を生かし、1969年に開館した国内で初めての野外美術館である。世界中の作家による彫刻約200点のほかに、ピカソの作品を集めたピカソ館もある。ピカソ館の近くにある絵画館では、山下清の絵が展示されていた。

 ひと駅箱根登山鉄道に乗り、強羅からは箱根登山ケーブルカーに乗る。スイス製のケーブルカーは窓が大きく、展望が良い。ただ、ドアの閉まる速さはかなり速く、驚くほどだ。ケーブルカーの終点の早雲山からは箱根ロープウェーに乗る。10人乗りぐらいの小さなゴンドラが1分間隔で発車していく。今現在、箱根ロープウェーは観光用で日本で一番長い(4035メートル)ロープウェーであるが、需要が多い早雲山-大涌谷間は今年12月から来年5月までの間運休し、新しいロープウェーを導入する予定である。今のロープウェーは大涌谷-桃源台間を折り返し運転するので、一番長いロープウェーはどこかほかのところになるのかもしれない。

 大涌谷で途中下車する。大涌谷は今から約4000年前、箱根火山が爆発してできたところであり、今も活発に水蒸気を吹き上げている。ロープウェーの駅からは遊歩道があり、そこを歩いて噴煙地に行く。硫黄のにおいが鼻をつく。売店では名物の黒玉子が売られていたが、6個入りだったので、買うのは断念した。

 芦ノ湖も箱根火山の活動によって生じたものである。桃源台からは海賊船に乗って芦ノ湖を横断する。箱根町に着いたところでお昼ごはん。芦ノ湖のニジマスを食す。食事のあとは「出女」を厳しく取り締まったことで知られる箱根関所に行く。大名の家族を江戸に強制的に住まわせ、「人質」とすることで謀叛を防ごうとしたのだ。箱根の関所は大名の家族が国元に戻らないように厳しく取り締まっていたのだ。

 箱根町からは江戸時代気分で歩くことにする。旧東海道は石畳の道となっており、当時の雰囲気が味わえる。朝の激しい雨は完全に上がった。石畳の道を歩くこと30分、甘酒茶屋に到着。もともと何軒かの茶屋があったが、今ではここだけになってしまった。甘酒と2種類の餅を注文し、疲れをいやす。定期観光バスのコースにも組み込まれているので、店を訪れる客は多い。

 箱根の旅に温泉は欠かせない。箱根湯本行きのバスを途中で降り、露天風呂(「天山」)に入る。日帰り専用の露天風呂で、様々な種類の風呂がある。たくさんの風呂をまわっているうちに、次のバスの時間がやってきた。

 行きは小田急で行ったから、帰りはJRで帰ろう。しかも、グリーン車で。東京を離れたら、普通列車のグリーン車には乗ることができないのだから。(終わり)

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↑彫刻の森美術館

石畳の旧東海道↓

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