道東周遊記(5)
池田はビーフとワインの町。駅の裏手の丘に建つ中世ヨーロッパ風の古城は「ワイン城」、まるでヨーロッパにいるかのような雰囲気だ。後ろを振り返るとさらにその思いを強くする。この「ワイン城」でワインの製造を行っている。もちろん、試飲も可能だ。池田のワインはキリリと引き締まった辛口のワイン。これは寒暖の差が激しいという池田の気候によるところが大きい。
池田のもうひとつの名物はビーフ。今回は駅弁で味わう。ちゃんとワインで味付けがなされている。特急の停車時間が短いため、ホームでの立ち売りはしていないが、あらかじめ連絡するとホームまで持ってきてくれる。
昼は十勝地方の中心都市、帯広の名物、豚丼にする。柔らかい豚のロースが「これでもか」というぐらい、たくさん載っている。畜産業の盛んな十勝地方ならではのものである。
夕張はかつて鉱山で栄えた町。未開の地とされていた夕張で石炭が発見されたのは1888年のこと。瞬く間に町は発展し、全国から多くの人が集まってきた(集められた)。今は鉱山も閉山され、市の人口は2万人を割っているが、かつては10万人以上いたという。
博物館で一通りの知識を仕入れ、エレベーターで地下に降りる。エレベーターには特殊な仕掛けがあり、地下1000メートルに急降下した「気分」が味わえるようになっている。地下はひんやりとしており、実際に採掘された炭鉱や使用された機械を見ることができる。辺りは暗く、耳をつんざくような音がする。このような環境で仕事をしていたのだろうか?
食堂車のランプが赤く照らされる夜は、雰囲気抜群。「北斗星」の食堂車は、ディナーこそ予約が必要だが、ディナーが終了する21時ごろからは「パブタイム」として予約なしに利用することができる。せっかく「北斗星」に乗ったのだから、食堂車は利用したい。パブタイムが開始するとすぐに食堂車に入り、ビーフシチューセットを頼む。リッチな気分でビーフシチューを味わう。さらに、相席の人と仲良くなり、隣の「ロビーカー」でワインや地酒を飲みながら語らう。床に就いたとき、「北斗星」は青函トンネルに突入しようとしていた。
目が覚めると、列車は東北地方を走っていた。東北は前日まで雨が降っていたようで、路面はぬれている。木々は緑に色づき、北海道を離れたことを実感されられるひとコマであった。(おわり)
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