九州横断紀行
今年の夏も、九州に行くことになった。昨年は長崎・島原を中心に回ったので、今回は熊本から九州を横断するコースをとることにした。
熊本は九州の中央部にある都市で、人口は約65万人。戦国時代の武将、加藤清正が築いた天下の名城である、熊本城があることでも知られている。城門のところには、赤い鎧を着た兵士が二人立っている。江戸時代にタイムスリップしたような気がする。
その熊本からJRに乗る。途中の立野で、第三セクターの南阿蘇鉄道に乗り、終点の高森へ。高森の名物は、田楽。田楽とは、芋、豆腐などに味噌を塗って食べる料理で、熊本藩の役人は高森に出張したとき、あまりのおいしさに仕事そっちのけで食べたといわれている。酒を竹筒で温めた「かっぽ酒」とあわせて楽しみたい。駅から重たい荷物を背負って、30分ほど歩いた甲斐があった。
再び駅に戻り、バスに乗って宮崎県の高千穂に行く。もともと、高森と高千穂の間は鉄道で結ばれる予定であったが、途中で中断され、ローカル線であった立野-高森間、高千穂-延岡間はそれぞれ第三セクターになっている。もし、高森-高千穂間が開通していれば、熊本と延岡を結ぶ亜幹線ができ、特急が走っていたかもしれないが、今となってはどうしようもない。さて、高千穂へのバスに話を戻すが、車すらすれ違うことのできないようなところを走る。前からダンプがやってきた。どうするのかと思っていたら、バスは慎重にバックして、待避所に入っていった。なお、この旅行記を書いている2004年の段階では、この路線バスは廃止され、熊本と延岡を結ぶ高速バスだけが高森-高千穂間のローカル輸送も担っている。
高千穂は神話のふるさと。天照大神<あまのてらすのおおみかみ>が須佐之男命<すさのおのみこと>の行動に怒り、姿を消したという天の岩戸など、神話にまつわるものはいくつかある。高千穂の夜の楽しみは天岩戸の話を題材にした、夜神楽。もともと神楽は農閑期の冬に行われ、豊作を祈願するものであった。本当なら一晩かけて演じる神楽を、観光客向けに1時間にコンパクトにまとめたのが夜神楽である。開始時間の20時近くになると、町の旅館から次々と人が集まってくる。話自体は知っている人が多いので、わかりやすい。
翌朝、高千穂峡を訪れた。高千穂峡は、町の中心を流れる五ヶ瀬川が阿蘇の溶岩を浸食してできたものである。夏の盛りだが、ひんやりとしている。この峡谷は、神秘的な高千穂のイメージをさらに深めるものだった。(終わり)
↑高森名物の田楽
高千穂の夜神楽↓
↑高千穂峡
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