97 東北 出会いと別れ(3)
かつて、田沢湖線は急行が1日2本しか通らない、ローカル線であった(もちろん、特急はない)。そのローカル線が変身を遂げるきっかけになったのが、東北新幹線の開業。田沢湖線も電化され、特急「たざわ」が走り始めた。
しかし、盛岡駅での乗り換えは不便である。そこで、田沢湖線などを改造して、東京から新幹線車両がそのまま直通できるようにした(とは言っても、ミニ新幹線専用の車両だが)。これが秋田新幹線、山形新幹線に続く2番目のミニ新幹線である。看板の特急列車の名前は、「たざわ」を引き継がず、「こまち」の名前が付けられた。
写真は秋田駅で撮影した、連結器の部分を開けた「こまち」の姿。「やまびこ」(当時)との連結が行われていた盛岡駅などではともかく、秋田で見るのは珍しいだろう。下に目をやると、普通よりレールの幅が広くなっていることに気付く。これが新幹線が東京から直通できるようになった秘訣である。
秋田からは秋田新幹線開業に合わせて新しくできた、「リゾートしらかみ」に乗る。海沿いを走る五能線を楽しむための列車だ。
「リゾートしらかみ」では、ただ単に列車に乗るだけではなく、沿線を観光することもできる。白神山地の十二湖をめぐるオプショナルツアーが用意され、十二湖を見てから再び列車に乗ることもできるようになっている(3往復に増えた現在ではなくなったが、一時は、観光客を迎えに列車がわざわざバックするサービスも行っていた)。
鯵ヶ沢を過ぎると、灰色の日本海は消え、津軽平野の中を進む。リンゴ畑も見えてくる。五所川原からは、列車に津軽三味線の奏者が乗り込んできて、ライブをしてくれる。
弘前の桜はゴールデンウィークごろが見ごろ。お城の桜はちょうど満開だ。1か月遅れでようやくやってきた春を喜ぶかのような見事な桜であった。夕暮れ時のモノトーンの岩木山も何とも言えないものだった。
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