養老渓谷真夏のハイキング
ある夏の日曜日、「せっかく仕事の都合で東京に来たのだから、どこかに行こう」と思い、「青春18きっぷ」を片手に、小さな旅に出た。
五井で内房線の電車を降り、小湊鐵道のホームに行くと、発車30分前にもかかわらず、プラットホームにはディーゼルカーが止まっていた。古そうな車両なので、冷房がついているか不安になったが、冷房があって一安心。夏の暑い日だったので、とてもありがたい。内房線の電車が来るたびにお客が増え、ちょうど椅子が埋まるくらいの混雑具合で出発。列車は左にカーブし、田園地帯を走る。
しばらくすると、車掌がやってきた。私は車掌に「いったん養老渓谷で降りるが、最終的にはいすみ鉄道の大原まで行く」と言うと、ちょうどいい具合の切符を売ってくれた。その切符は「関東の駅百選認定記念 房総横断スタンプラリー乗車券」(1600円)である。一方向にしか進むことができないが、途中下車は何回でもできる便利な切符だ。今でも売っているだろうか?
列車は養老川を遡り、沿線の風景も田園地帯から山へと変わっていく。五井からちょうど1時間で養老渓谷駅に到着。ここからはバスで粟又<あわまた>の滝に向かう。粟又の滝は全長100メートルの大きな滝で、滝壺では子供たちが水遊びに興じている。ここから遊歩道が整備されているので、そこを歩くことにする。暑い夏の日だが、川に沿って歩くので、むしろ涼しさを覚える。
そんなのんびりしたハイキングは長くは続かなかった。遊歩道の終わりにある、「幻の滝」の茶屋でラムネを飲み、店員に駅までの距離を尋ねたところ、とんでもないことが判明した。駅まではまだ6キロもあるというのだ。炎天下の道をひたすら歩かなければならない(バスはちょうどいい時間にはなかった)のだ。「ゆっくり歩いて、どこか温泉に入って」と考えていたのが、もろくも崩れさる。というのも、次の列車はなんと3時間後だからだ。何とかして予定の列車(養老渓谷発13:24)に間に合わせないといけない。1時間半で歩くのは微妙なところだが、必死に歩いた結果、源頼朝ゆかりの「出世観音」にも寄ることができ、駅には発車10分前に着いた。やれやれ。
トラブルはこれだけでは終わらない。ディーゼルカーは時間通りに駅に着いたのだが、エンジントラブルのためか、なかなか発車することができない。応急処置をして、5分遅れで何とか動かすことができたが、ノロノロ運転だ。いすみ鉄道との接続時間は10分、時計の針が気になる。いすみ鉄道との接続駅の上総中野には8分遅れで到着し、急いでいすみ鉄道のレールバスに乗り換える。
途中、大多喜にて下車。ここで遅い昼御飯を食べ、お城(大多喜城)を見学しようと思ったが、昼食に時間がかかり、しかも疲れていたこともあって、城の見学はパス。次の列車が来るまで、おとなしく駅で待つ。
次の列車が来た。私はそれに乗り、大多喜を後にする。終点の大原からは外房線の快速電車。これに乗りながら、次の旅の構想を練っていた。(終わり)
↑昔懐かしい小湊鐵道のディーゼルカー
涼しさを覚える粟又の滝↓
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